株安・ドル安のミニ連鎖、原油価格次第では弱気論の広がりも
[東京 21日 ロイター] 東京市場は株安/債券高。ドル相場も軟調地合い。原油高が世界景気に与える悪影響があらためて意識されている。商品投資顧問業者など海外勢が株先売り/債先買いを持ち込み、為替市場でも短期のファンド勢がドル売りを仕掛け、株安/ドル安のミニ連鎖となった。
米投資銀行がヘッジで多額損失を計上する可能性があると一部で伝えられたことも材料視された。原油価格次第では、短期的にはポジションの解消を巻き込みドル売り/株売りが続く可能性がある、との見方も出てきた。
<ドル安で株売り地合い強まる>
株式市場では日経平均が続落、取引時間中としては5営業日ぶりに1万4000円を割り込んだ。前日の米国株式市場でダウ平均が200ドル近い大幅安となったことに加え、ドル/円が103円台前半の円高に振れたことが嫌気された。
海外勢から大型株中心に利益確定売りが出たほか、先物へのまとまった売りも下げを加速させる要因になった。「4月以降の海外勢の買い戻しに一巡感があり、もともと調整が入りやすい局面だった。年初から米ダウとドルベースの日経平均は連動性を強め、東京株式市場は独自性のないマーケットになりつつある。政治の閉塞感もあり、国内の材料不足は否めない」(三菱UFJ証券の吉越昭二シニア投資ストラテジスト)という。
新光証券エクイティストラテジスト、瀬川剛氏は「米市場の動きは20日の段階でCTAによる株先売り/債先買いである程度先取りしていたが、きょうの取引時間中に円高/ドル安が進行したことで、輸出関連株を中心にさらに売りが強まった」という。
このほか市場では、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙電子版がリーマン・ブラザーズLEH.Nなど米投資銀行がヘッジで多額損失を計上する可能性があると伝えたことがドル売り/株売り材料になったとの指摘が出ていた。日経平均は午後には300円超の下げとなった。
<原油高の影響で様々なシナリオ>
米国では原油先物が急伸して130ドル台に迫ったことや、米卸売物価指数(PPI)のコア指数が予想を上回る伸びとなったことからインフレ懸念が高まっている。「インフレが今後進行するかは、ひとつの経済指標では判断できない。現時点の指標が示すのはまだら模様であり、インフレがこのまま進むと決め付けることはできない」(野村証券の佐藤雅彦エクイティ・マーケットアナリスト)との指摘はあるが、企業業績や賃金が伸びない中でのインフレは消費の抑制要因となるだけに警戒感も強い。
株式市場では国債を大量に抱える国内機関投資家がインフレに備えてポートフォリオの見直しに動き出しているとの期待感が強く、「下げれば国内勢の買いが入る。大きく崩れる状況ではない」(準大手証券)と依然楽観的な見方が多い。新光証の瀬川氏も「このところの相場のけん引役である三菱商事(8058.T: 株価, ニュース, レポート)や新日本製鉄(5401.T: 株価, ニュース, レポート)への売りは利食い売りの範囲内の動きだ。下げトレンドに転換したとみておらず、ここからの下げには限度がある」とみている。
ただ「割安修正が一巡し、機関投資家のリバランスが始まった感触だ。今回の調整をきかっけに、物色面では全体的に買う動きから、内容の良いものに絞る動きに変わるのではないか」(東洋証券・シニアマーケットアナリストの児玉克彦氏)との指摘も出ている。ある邦銀筋は「インフレに強いといわれる株式だが、原油高の景気抑制要因が意識されて米株式の地合いが弱まるようだと、ドル安を通じて日本株にも悪影響が及んでくる」と話している。
<行き過ぎた金利上昇の反動>
国債先物中心限月6月限は大幅続伸。原油高などを背景にした景気先行き懸念で米株安/米債高となった海外市場の流れを引き継いで買いが先行。日経平均株価が大幅安となったことも買い圧力を強めた。ショート筋の買い戻しに加えて、CTAなど海外勢からの株先売り/債先買いの裁定取引を巻き込んで、一時62銭高の136円09銭と5月13日以来の水準に上昇した。「4月以降は金融問題や景気に対する悲観的な見方に修正が入り、金利が急上昇した。しかし、国内景気はむしろ悪化方向にあり、行き過ぎた金利上昇の反動が出ている」(国内証券)という。
現物市場も堅調。10年最長期国債利回り(長期金利)は一時4ベーシスポイント(bp)低い1.600%に低下する場面もあった。積極的な買いは見られていないが、「前日午後から中期ゾーンは需給が締まっており、銀行勢など国内勢の買いが入っているのではないか」(国内証券)との声が出ている。
もっとも、上値では潜在的な戻り売り圧力が強い。日本証券業協会が20日に発表した4月公社債投資家別売買高(短期証券除く)によると、地方銀行は2.5兆円の買い越し。「4月以降の金利上昇で損を抱えた投資家が多いと見られ、水準的に10年債の利回りが1.6%を下回ってくると、戻り売りが強まるのではないか」(国内証券)という。
<米実質金利低下続けば、一段のドル下落>
為替市場では、原油高が株安を招いていることから、ドル売り/円買いにつながっている。仲値公示ではドルが不足し小幅に上昇したものの、その後は、アジア系ファンドや米系証券のドル売りが見られ、ストップロスを巻き込み、さらにファンド筋の売りが膨らんだという。ドル/円は103.15円まで下げた。ヘッジファンドはユーロ/円でも売りを出したとみられている。
JPモルガン・チェース銀行では原油高とドルの関係について、「米長期金利が低下する一方で原油価格上昇などもあってインフレ懸念が高まっているため、米実質金利が大幅に低下。米実質金利とドル/円との間には比較的高い相関関係があるため、米実質金利の低下基調が続くようなら、一段のドル下落につながる可能性が高い」とみている。
クレディ・スイス証券、経済調査部バイスプレジデントの小笠原悟氏も原油高はドル安要因との見方をしている。小笠原氏は、1)原油高は産油国への所得移転となり、産油国が増加した資産の一部をドルからユーロに転換する可能性、2)原油高は米国内のエネルギー価格上昇を招き家計の購買力を圧迫、米国の成長力鈍化として現れ金利低下の余地が新たに生じ日米金利差が縮小する──ことを要因として挙げている。
(ロイター日本語ニュース 橋本 浩記者 編集:内田 慎一)
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