G8はインフレ対応で具体策示せず、ドル安是正は「雰囲気」のみ共有
[大阪 14日 ロイター] 大阪市で13、14日に開かれていた主要8カ国(G8)財務相会合は、インフレへの懸念で一致したものの具体的な協調政策の提示はできなかった。
米国は会合前にドル安是正へと政策スタンスのかじを切る姿勢を鮮明にし、他のG8諸国の動向が注目されていたが、会合後に米の方針を強く支持する声は出なかった。ただ、欧州の出席者の一部からドル高に一定の理解を示す発言が出てくるなどドル安是正に向けた「雰囲気」は共有されたとみることもできる。G8の結果を注視していた外為市場では、中身が薄いとの指摘が多いものの、当面はドル高基調に変わりはないとの見方が多い。
<不確実な経済で高まるインフレ圧力、政策対応が複雑化>
声明は、世界経済の不確実性と下方リスクの存在を指摘する一方、原油・食料など1次産品価格の上昇が「世界的にインフレ圧力を高めるおそれがある」とし、「こうした状況は、われわれの政策選択をより複雑にする」と各国が難しい政策対応を迫られている実情を打ち明けた。
インフレ進行の要素の1つとして早急な対策が求められる原油高についても「マクロ経済の安定性、人々の厚生、今後の開発に与える影響を強く懸念」と強調したが、対応策は需給両面で進められているこれまでの取り組みを追認するにとどまった。
原油価格の高騰・変動要因として「悪玉論」も浮上していた金融取引では、会合終了後にポールソン米財務長官がドル安が世界のエネルギー価格上昇を促しているとの見方を否定する一方で、クドリン露財務相は「ドルの下落は原油価格上昇の一因になっている」と指摘。「原油高に投機が大きな影響を与えているかについては、だれも、国際機関でさえ分からない」(ミロウ独財務次官)との声も聞かれ、ドル安と原油高、投機資金と実需の関係に大きな議論の進展は見られなかった。現実には、石油市場に流入する資金フローを把握するため、国際通貨基金(IMF)と国際エネルギー機関(IEA)に分析を求めるという入り口の段階にとどまっている。
声明には、4月の7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)を踏まえ、G8および世界の経済安定と成長を確保するため「個別あるいは共同して適切な行動を取っていく」との表現を盛り込んだものの、有効な政策手段が限られる現状で、具体的な協調策を提示することはできなかった。
<為替議論は踏み込まず、欧州からドル高に理解示す声も>
米国がドル安是正に動く中、G8では、為替に関する議論も注目を集めた。特にドル安是正を目指す米国に対し、欧州は利上げを模索し始めるなどG8内でもインフレ抑制策の足並みの乱れが指摘され、どこまで各国がドル安是正に歩み寄るかがポイントに浮上した。
会合では、ポールソン米財務長官が米国経済の先行きに自信を示し、強いドルの正当性を訴えたが、これに対する各国の反応は限定的。もともと中央銀行総裁が出席しないG8で、為替や金融政策は「議論の直接の対象にはらない」(額賀福志郎財務相)こともあり「為替の問題について特に議論があったわけではない」という。
ただ、会合終了後にフランスのラガルド経済財務雇用相が「ポールソン米財務長官が、強いドルはインフレへの対応に不可欠との認識を明確にしたことは、非常に喜ばしい」と米国のドル高政策に理解を示した。声明への言及こそなかったものの、欧州内にはドル相場安定で米国に歩み寄る動きがあることをうかがわせた。
<ドルは110円へ上昇の可能性も>
G8声明について外為市場では「現在の市場のセンチメント、ドル買い戻しの流れに沿ったもの」(バークレイズ銀行・チーフFXストラテジストの梅本徹氏)として、米当局のドル安けん制をきっかけとする最近のドルじり高地合いに、影響を与えるものではないとの指摘が多く上がっている。
事前の市場では、利上げを模索する欧州中央銀行(ECB)など「ユーロ圏がどこまで米国の主張を受け入れるかによって、ドル上昇の勢いは変わる」(外銀の外為チーフディーラー)と、欧州各国の出方に関心が集まっていた。
だが、会見で為替に直接言及したのは仏財務相らごく一部。G8がドル安と密接な関係を持つ原油高騰の背景を「わからなかったと言っているに等しい」(JPモルガンチェース銀行・チーフFXストラテジストの佐々木融氏)と有効策を打ち出せなかったと、市場関係者の多くは判断している。世界的なインフレ懸念が継続する見通しの下では「ドル安阻止の雰囲気だけが共有された。(ドル高の結果として)自国通貨安を望むかどうかまでは、各国とも踏み込んで受け止めることができない」(みずほコーポレート銀行・国際為替部シニアマーケットエコノミストの福井真樹氏)という各国の苦しい姿が浮かび上がったといえる。
ただ、そうした各国の思惑のずれが、直ちにドル高基調のマーケットに大きな変動をもたらすという構図にはなっていないようだ。JPモルガン銀の佐々木氏は「ドル安是正で合意するなどといった可能性を見込み、事前にドルを買い込んだ向きにとっては失望の内容」としながらも、「失望売りが一巡した後は再び、市場の注目は米金利に集まる。米金利が上昇を続ける中、しばらくドルはじり高展開が続くと見る」と予想。
バークレイズ銀行の梅本氏も、ドル/円は110円以上にドル高が進む可能性が高まってきたと話している。
(ロイター日本語ニュース 伊藤 純夫記者、取材協力:基太村 真司記者;編集 田
巻 一彦)
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