7年ぶりの社債デフォルト、金融関連株売り/国債同時売却に波及も
[東京 25日 ロイター] 25日の東京市場は株安/債券高。日本時間で26日未明に公表される米連邦公開市場委員会(FOMC)声明を受けた市場の反応を見極めたいとのムードが広がる中、海外の短期筋が債券先物買い/株式先物売りに動いた。
市場で注目されたのがスルガコーポレーション1880.Tの再生法申請の影響だ。株式市場では一部の米系ファンドが金融関連株に売りを出したとの観測が流れ、円債市場では含み損が出た
事業債と利益の出ている国債との合わせ切り(同時売却)の思惑が広がった。日本では7年ぶりの社債のデフォルトだけに金融・株式市場のかく乱要因にならないか、気にする参加者が増えている。
<株価下落に備えたヘッジポジション構築>
株式市場では日経平均が続落。FOMCの声明文を見極めたいとして、売買を手控える投資家が多いなか、債券先物買い/株式先物売りの動きが出たほか、為替が円高方向に振れていることを嫌気した小口売りが現物、先物に出た。200円を超える下げとなったときには米系ファンドが新規の売りを出した、との観測も広がった。
市場関係者によると、一部の海外勢はスルガコーポレーションの社債デフォルトを材料にして金融関連株に売りを出した、という。業種別では、その他金融が値下がり率トップになっている。
ファンダメンタルズをみても、米国では6月の米消費者信頼感指数が16年ぶり低水準となったことや貨物輸送大手UPS(UPS.N: 株価, 企業情報, レポート)の業績予想引き下げを受け、景気懸念が強まっている。日本株についてもインフレに強く相対的に優位という見方はややトーンダウンした。「これまでは国内景気を軽視してきたが、7月1日の日銀短観を控えて警戒感が出ている。オプション市場では1万2500円プットの建玉が増加するなど株価下落に備えたヘッジのポジション構築が活発化してきた」(準大手証券トレーダー)との指摘もある。
<FOMC声明は株売り材料か>
DIAMアセットマネジメントシニアポートフォリオマネジャーの宮田康弘氏は、FOMCの声明文がインフレ警戒感を緩めない内容になるとみている。「株式市場では利上げが当面、少なくとも数カ月ないというのはすでに織り込み済み。仮にインフレ警戒感を示す文言となった場合、株式にとっては悪材料となりやすい一方、債券は長期中心に買われるのではないか。為替については、米株下落を通じてドルが弱含みとなるかもしれない」という。
宮田氏は「FRBが実際に金融引き締めに転じるかというと、かなり難しい。米国の金融不安問題は、投資銀行の損失拡大などによる金融セクター部門の悪化から商業銀行を通じて一般企業や個人に影響が出るクレジット・クランチ、さらに実体経済が減速する第2ステージにきている。利上げとなれば一般企業や個人に与えるダメージは大きい」と指摘している。
大手国内投信のグローバルストラテジストは「市場のテーマはクレジットクランチからスタグフレーションに移ったが、リセッションまでにはいたらずダラダラした景気が続きそうだというのがコンセンサスになっている」とし「3月末からのベアマーケットラリーは一巡しており、ファンダメンタルズで新たな見方が出てこない限りは、しばらくボックス圏での動きになりそうだ」と話す。
一方、三菱UFJ証券、エクイティ部部長代理の谷村仁氏は「FOMCを契機に株価のトレンドが決まる可能性があるため、東京市場は実需筋を中心に様子見になっている。ただ、欧州勢など海外資金の継続的な流入がみえていることが下値を支えており、米ダウ工業株30種がザラ場で3月安値を割ったことを考えれば日本株は底堅い」とみる。そのうえで「FOMC声明は利上げ方向のバイアスがかかるとみており、洞爺湖サミットに向けて原油価格安定を狙ったヘッジファンド規制なども議論される可能性がある。原油安定とドル高/円安がみえてくれば、日本株はアジア新興国市場からの回帰資金を吸収して上昇する」と予想している。
<債券の投資環境が大幅改善>
円債市場は続伸。米消費者信頼感指数やスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)/ケース・シラーの4月住宅価格動向指数がさえず、米景気後退懸念が強まり米債が中短期債を中心に大きく買われた流れを引き継いで買いが先行した。
国債先物中心限月9月限はCTAなど海外勢による株先売り/債先買いを巻き込んで、一時134円63銭と6月9日以来の水準に上昇。10年最長期国債利回り(長期金利)は一時3ベーシスポイント(bp)低い1.665%と5月22日以来の水準に低下した。
市場では欧米金融機関の信用不安が根強いことに加えて、日本でも7月1日の日銀短観で景況感が悪化するとの観測が浮上するなど、内外の景気悪化懸念が広がりを見せており「金利先高観が後退して、世界的に債券を取り巻く環境はこの1週間で大幅に改善した」(国内証券)という。24日の取引で国債先物は何度となく跳ね返されてきた一目均衡表の基準線を上回って取引を終えるなど、テクニカル的にも強気なシグナルを示唆。6月期末を控えて、欧米金融機関の資金繰り不安がくすぶる中で、「海外勢の仕掛け的な買いが入れば一気に水準が切り上がる可能性さえある」(国内証券)との声も聞かれている。
<事業債/国債の合わせ切り観測>
ただ、10年・1.7%割れ、5年・1.3%割れといずれも心理的な抵抗線を下回って低下したため、戻り売りへの警戒感は根強くある、という。また、スルガコーポレーションが24日、東京地裁に民事再生手続き開始を申請したと発表したことを受けて、クレジット市場では不動産や消費者金融などのセクターを中心にスプレッドが拡大。「投資家がクレジット市場でのスプレッド拡大で含み損が出た事業債を、利益が出た国債と合わせて売却するとの思惑があり、10年債1.7%割れの水準を積極的に買い進みにくい」(国内証券)との声もあった。
注目のFOMC声明文については「ドル安をけん制してインフレ注視姿勢をやや強めるだろう。しかし、米国経済の下振れリスクにも触れ、市場が過剰反応しないよう配慮すると思われる」(外資系証券)と見方が出ている。ただ、景気悪化と信用問題へのリスクが顕在化している直面なだけに「バランスを取ろうとすればするほど、株売り/債券買いを強める要因になりかねない」との声もあった。
朝方に発表された5月貿易統計速報の反応は限定的。新光証券・債券ストラテジストの三浦哲也氏は「輸出を数量ベースでみると、米国の持ち直しが鮮明で、アジアが堅調だが欧州が落ちてきていることで基調は横ばい。交易条件が悪化しているため、外需の減速は否定できないが、数量を保っている分、債券にはポジティブではない」との見方を示した。
(ロイター日本語ニュース 橋本 浩記者 編集:宮崎 大)
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