環境特集:排出量取引の潮流に乗り遅れた日本、首相の指導力見えず
[東京 3日 ロイター] 北海道洞爺湖サミットの開幕を1カ月後に控えた6月9日、福田康夫首相はテレビカメラのライトを浴びながら地球温暖化対策に関する「福田ビジョン」を誇らしげに発表した。
その中には産業界に反対意見の強い排出量取引に関し「今年の秋に試行的に実施」との表現が盛り込まれ、福田首相の指導力を内外にアピールすることになった。だが、その内実は晴れやかなムードとはかけ離れた「妥協策」の色彩が濃かった。
<主導権争いで遅れ、蚊帳の外の危機>
排出量取引制度とは、国や企業などに二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出枠を設定し、上限を超えた分や余った分を売買する仕組み。個々の企業や事業所ごとに義務的な排出枠を設ける「キャップ・アンド・トレード」という方式が国際社会の潮流になりつつある。先行する欧州の排出量取引制度(EU ETS)ばかりでなく、米国の諸州でも導入が進んでおり、すでに世界市場の統合をにらんだ主導権争いが始まっている。
今年5月中旬、国際的な排出量取引市場の構築を目指して発足したICAP(国際炭素行動パートナーシップ)がブリュッセルで会合を開き、具体的な基準作りで意見交換した。2007年10月に発足したICAPのメンバーが24カ国・州に拡大している中で、キャップ・アンド・トレードを導入していない日本に正式なメンバー資格はない。
環境省の担当者は「各国とも国益を反映し、自国に都合のいい方法を世界標準にしたいとの本音が見え隠れした。今回はたまたま公開討論だったが、これからはオブザーバーが参加できない会合が頻繁に行われる。それに日本は参加できず、国際的な議論から除外される状況にある」と焦りを隠さない。日本は国際議論で蚊帳の外に置かれ、主導権争いで完全に出遅れた。
<産業界に渦巻く不満、環境省は歩み寄り>
「誤解を招くような表現はやめてほしい。福田ビジョンでは、排出量取引の本格実施を前提にはしていないはずだ」――。環境省の「国内排出量取引制度検討会(座長:大塚直早稲田大学法学部教授)」の6月26日の会合で、電力会社の代表が警戒感をあらわにした。環境省が提出した原案ペーパーで、試行的実施の仕組みを説明するチャート図の先に「本格導入」との表記があったためだ。 続く...















