新日石と新日鉱の経営統合、実需型M&Aに関心集まる契機に

2008年 12月 4日 16:46 JST
 

 水野 文也記者

 [東京 4日 ロイター] 新日本石油(5001.T: 株価, ニュース, レポート)と新日鉱ホールディングス(5016.T: 株価, ニュース, レポート)の経営統合が発表され、株式市場でM&A関連に注目が集まるきっかけになりそうだとの思惑が急浮上している。

 世界的な景気悪化を背景に収益の悪化に直面しているのは石油業界ばかりでなく、幅広い分野で再編が活発化するのではないかとの見方が広がっているためだ。これまでマーケット参加者は、ファンド筋による投機的な買収を想定しM&Aに注目していたケースが多く、「仮需」の側面に重点が置かれていたが、今後は業界再編をにらみつつ「実需」部分に関心が高まる可能性が出てきている。

 新日石と新日鉱の統合は、足元の収益環境が厳しくなっているほか、将来的なエネルギー需要の縮小懸念を考慮して踏み出したとの見方が支配的となっている。原油価格は半年足らずでピーク時の3分の1の水準まで下落したものの、なお底打ち感はみえていない。市場では「下げ止まりの期待材料としてOPEC(石油輸出国機構)の大幅減産があるが、先の金融サミットではサウジアラビアがメンバーになったことで、その期待は小さいと言わざるを得ない。世界的に石油の需要が落ち込み、代替エネルギーが広がりそうなことを踏まえれば、本格的な市況回復は見込みにくい状況だ」(SBIフューチャーズ・アナリストの鈴木孝二氏)との声も出ている。さらに在庫評価損など石油業界は、厳しい収益環境が直面する可能性が高い。

 みずほインベスターズ証券・エネルギー担当アナリストの河内宏文氏は「これまでのいきさつから(新日石と新日鉱の)組み合わせに意外感はあるが、原油価格が下げ止まらない現状や将来の需要動向を考えると、統合自体はサプライズではない」と指摘。「業界では国内の需要先細りを以前から想定し、新日石をはじめ海外での販売拡大を積極化させたが、それも世界的な需要減で難しくなっている状況。こうした厳しい環境の中で起きた統合劇とみることもできる。今後も業界再編が進みそうだ」と指摘する。

 厳しい業界は石油だけに限らない。日米欧などの先進地域だけではなく、新興国なども巻き込んで世界的に景気が低迷する中、輸出型産業が大きなダメージを受けている上、日本国内で内需刺激策を打ち出しても、人口減少時代を迎えるため需要創出にも限りがある。「将来を見越せば、業界再編は今までに起きていても不思議ではなかった。足元が厳しくなって再編の動きが出てきたのだろう。株価が安くなったこともそうした動きを後押しする。今後は、国内企業の再編がテーマとして注目されそうだ」(大和証券SMBCグローバル・プロダクト企画部次長、西村由美氏)という。

 西村氏が指摘するように、過去にも業界再編は景気の谷間で加速した経緯がある。80年代後半に起きたバブルの崩壊後、「失われた10年」の局面で、多くの業界で再編が起きた。とりわけ目立ったのが装置産業で、紙パルプ業界では、山陽国策パルプ、本州製紙、十条製紙など名門企業の名が消滅、鉄鋼業界では川崎製鉄と日本鋼管が統合しJFEホールディングス(5411.T: 株価, ニュース, レポート)が誕生した。今回の新日石にしても、三菱石油を吸収した経緯がある。装置産業ではないが、金融危機を背景にバブル期には13行あった都銀が3メガに集約されたことも記憶に新しいところだ。

 これらを踏まえて、株式市場では相場のテーマとしてM&A関連が再び浮上するとの見方が増えてきた。ただ、M&A関連と言っても、金融問題が生じる以前にファンド筋のマネーが席巻した時期とはイメージが異なる。市場では「ファイナンスが困難となる現状では、ファンドが運用を目的にするようなM&Aは衰退する一方、事業再編などを目的とした本来あるべき姿のM&Aが本流になる」(SMBCフレンド証券・投資情報室次長、松野利彦氏)という分析のように、M&Aの姿は「仮需」から「実需」に色彩が変化する方向だ。  続く...

 
 
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