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焦点:東芝のWH切り離し、損失上限は不透明 半導体売却にも影響か
2017年3月29日 / 14:40 / 6ヶ月前

焦点:東芝のWH切り離し、損失上限は不透明 半導体売却にも影響か

 3月29日、東芝が経営危機脱却への切り札として、米原発子会社ウエスチングハウス(WH)の連邦破産法11条の適用申請に踏み切った(2017年 ロイター/Issei Kato)

[東京 29日 ロイター] - 東芝(6502.T)が経営危機脱却への切り札として、米原発子会社ウエスチングハウス(WH)の連邦破産法11条の適用申請に踏み切った。1兆円の巨額最終赤字と引き換えに、WHを自社の連結決算の対象から外し、米原発建設プロジェクトからの追加損失を被る危険性を最小限に抑え込む狙いがある。

とはいえ、原発の発注元である電力会社から東芝に賠償を求める訴訟リスクもくすぶっているとの指摘も関係者から聞かれる。巨額の追加損失リスクが意識されることで、経営危機からの脱却へのもう一つの関門となる半導体メモリー事業の売却交渉にも影響が及んでいる。

<海外原発から撤退、リスク消滅を強調>

「原子力の海外事業はほぼ撤退。そのリスクはなくなった」─。29日夕、WHの同11条の適用申請を受け、本社での会見に臨んだ東芝の綱川智社長は淡々とした口調で語り、結果的に東芝を存亡の危機に追い込んだ10年前のWHの買収については、「非常に問題な(経営)判断だった」と総括した。

再建型破たん処理の手法で、日本の民事再生法に相当する破産法11条を申請したWHは、東芝グループを離れ裁判所の管理下のもとで再建を進める。米国2カ所で建設中の原発4基のコストが想定を大幅に超過したことが経営難の引き金となった。

<追加損失、今回が「上限」と強調>

東芝はWHの債務に対して今年2月末時点で6500億円の債務保証をしているが、WHの経営破たんにより、その全額を引き当て計上する。それを含め、従来3900億円とみていた東芝自体の最終赤字額は1兆0100億円に拡大する見通しだ。年度末の債務超過の予想額も2月時点の1500億円から6200億円に拡大する可能性があるという。

それでも、今回のWHの11条申請で、米原発事業をめぐる損失の「上限」が見えたと東芝経営陣は強調する。

この日の記者会見で、原子力部門担当の畠沢守・執行役常務は、親会社保証の全額引き当てとWH破たんに伴う貸倒引当金などによる追加損失の見通し(約6200億円)について、それが上限かとの質問に「そのように考えている」と述べた。

しかし、WHが破たん処理過程に入り、有力なスポンサーが現れなかった場合、原発建設が滞り、原発を発注した電力会社2社から、親会社だった東芝が損害賠償を請求されるリスクも否定できない。

電力会社などからの訴訟リスクの有無について畠沢氏は「当社の観点からはないと考える」と述べる一方で、相手の出方に左右される訴訟リスクについて、その可能性を断定することはできるのか、との質問には、「相手のことの回答は難しい」と明言を避けた。

<予断許さない米電力による訴訟リスク>

ある東芝幹部は「親会社保証はあるとしても、電力会社から訴えられる危険性も排除できない」との見方を示す。さらに、電機産業の内情に詳しい業界関係者は、東芝にとって一段と厳しいシナリオを示す。

「WHが11条の適用を申請することで完工は不透明だ。従業員が流出すれば、工事も遅れる。シェールガスが安い中で、コスト高の原発は競争力がないから、建設が中止になるかもしれず、電力会社側が原状回復を要求してくるかもしれない」。

訴訟によるそうしたリスクは「約8000億円かかる可能性もある」(同関係者)との見立てだ。

<半導体売却、台湾勢排除の論理とは>

追加の損失のリスクは、債務超過解消に残された唯一のカードである半導体メモリー事業の売却交渉にも影響を与えている。

「経済産業省は、外為法の規制を通じて東芝の半導体売却の対象国を相当厳しく規制する」─。29日に東芝が入札を締め切ったメモリー事業の売却交渉をめぐり、今月上旬、同省関係者は指摘した。この入札では、昨年シャープ(6753.T)を買収した鴻海精密工業(2317.TW)、台湾積体電路製造(TSMC)(2330.TW)の台湾勢2社も関心を示している。

その後、台湾や中国勢に東芝のメモリー事業が渡ることを阻止しようと動く日本政府の意向を伝える報道が相次いだ。国の安全保障に係る重要技術の海外流出を阻止すべく、外為法に基づく規制に経産省が乗り出すというものだ。

鴻海の事情に詳しいある専門家は「鴻海はいくらでもカネがある」と指摘、今回の入札でも競合他社に比べても相当に高い金額を提示しているとみられている。背後に中国政府の存在を指摘する見方も根強い。

鴻海は、中国本土に多数の工場を抱えて、同社に東芝のメモリー事業が渡れば、対中国で優位に立つ日本の技術分野の流出が現実になりかねない。

とはいえ、東芝が米国での原発の追加損失リスクを払しょくできない以上、メモリー事業に最も高い値段を提示した相手に売却することは、現実味を伴ったシナリオだ。

「事情を察知した経産省は、東芝のメモリー事業の売却で、台湾・中国勢を排除すべく、外為法による規制に乗り出した」と、前出の業界関係者は指摘している。

浜田健太郎 編集:北松克朗

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