〔金利ウォッチャー〕物価上ブレでもインフレ期待高まらず、BEI拡大は一時的か
物価指標が軒並み上ブレしたことを受け、東京円債市場で27日、名目金利と実質金利の差である「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」が一時広がった。金利低下局面でのBEI拡大はこれまでと異なり、景気悪化とインフレが混在するスタグフレーションのシナリオすら浮上する。しかし、短期売買を狙った参加者の「キャリー取り」が実態とみられ、日銀が気にする期待インフレ率の高まりには至っていないようだ。
10年利付国債293回債と10年物価連動国債16回債のBEIが27日、一時前日より3ベーシスポイント広がり、43bpに達した。ニューヨーク・マーカンタイル取引所でWTIが1バレル=140ドルの大台を突破するなか、5月全国消費者物価指数が前年比1.5%の上昇となり、参加者の物価観を押し上げるには格好のタイミング。とりわけ先行指数となる6月東京都区部のCPIが予想対比で上ブレしたため、「夏場の2%超え」すら意識された。
自動車を利用する頻度が都市部と地方で異なるため、都区部は比較的、ガソリン価格の影響を受けにくい。市場には「一時的な気配ベースとはいえ、10年債利回りよりも物価連動債利回りが余計に下がるきっかけになった」(外資系証券)との見方があった。
BEIは10年債利回りが上昇する一方、物価連動債利回りの上昇が小幅にとどまった場面における拡大が一般的。今回、明らかに異なるのは金利低下局面での広がりだった点だ。
日銀が1日公表する企業短期経済観測調査(短観)の大幅悪化が予想されるなか、参加者の目線は景気悪化観測に向かいやすい。前日の海外市場でダウ平均株価が1年9カ月ぶりの安値となり、株価の底割れに伴う心理的な影響は小さくない。
10年債利回りは5月13日以来約1カ月半ぶりに1.6%を割り込み、一時1.590%に低下。参加者からは「BEI拡大と景気悪化観測を巻き込んだ金利低下の同時進行は、スタグフレーションへの懸念を表すのに整合的な動き」(邦銀)との声も出た。
しかし、こうした動きは物価連動債の需給要因が影響した公算が大きいようだ。CPI発表と同時に物価連動債の想定元本が確定するため、買いが入りやすい。日興シティグループ証券・債券ストラテジストの山田聡氏は「想定元本が0.8%上昇することが、今回のCPIで確定した」と指摘する。これは、1カ月間の保有でキャリー収入が80銭前後増えることを意味する。「実際、取引一巡後は利益確定売りにも押され、期待インフレ率は高まらなかった」(外資系金融機関)との声が少なくない。
(東京 27日 ロイター)
(ロイター・ニュース 山口 貴也記者;編集 橋本 浩)
(takaya.yamaguchi@thomsonreuters.com; 03-6441-1792; ロイターメッセージング:takaya.yamaguchi.reuters.com@reuters.net)
© Thomson Reuters 2009 All rights reserved.



日本
米国