〔提言:財政再建〕早期に健全化目標を決める必要、「参院選至上主義」に警鐘=片山前鳥取県知事
[東京 10日 ロイター] 政府の「中期的な財政運営に関する検討会」のメンバーで、前鳥取県知事の片山善博・慶応大学教授はロイターのインタビューに応じ、「日本の財政状況は回復不能な状態に近い」と危機感を示し、早期に財政健全化目標を設定し財政構造改革に取り組むべきだと語った。しかし、政府・与党内に目標設定のコンセンサスはまだないとも語り、根底にある「参院選至上主義」に警鐘を鳴らした。
<日本の財政状況、回復不能な状態に近い>
リーマン・ショック後の経済対策で急速に財政が悪化した米国や英国は、新たな財政再建目標を打ち出し軌道修正を模索し始めた。しかし、財政状況が主要国で最悪の日本は未だ財政再建目標もなく、1月には米格付け機関のスタンダード&プアーズ(S&P)から日本国債の格下げ見通しを突きつけられる事態に陥っている。
日本の財政状況について片山氏は「もはや回復不能な状態に近い」と述べ、健全な状況を1としデフォルトを10とすれば「いまは8程度」と危機的状況にあることを強調した。国内でファイナンスできるのが1つの安心材料ではあるが、このまま放置すれば「最悪、国債発行が出来なくなる状態になる。そうならないようにするのが政府の最大の課題だ」と指摘し、フロー・ストック面で何らかの財政健全化目標を「早期に決めたほうが良い」と提言した。「今のままでは、破たんへの道をひたひた走っている。どこかで食い止めなければならない」とも語り、「その目標は政治家が決めるべきだ」と強調した。
<目標設定のコンセンサス「まだない」>
しかし、政府・与党内に数値目標設定が必要との共通認識は「まだない」。これは数値目標を決めることで達成できなかった場合の批判を政治家が恐れているためだと指摘。「目先のリスクを気にし、最終的にマーケットからノーと言われるまでなかなか気がつかない」と現状を憂慮した。
一方でS&Pが日本国債格付け見通しを格下げの方向としたことや、民主党への政権交代は財政健全化に踏み込むチャンスだとも語り、「自民党政権で出来なかったことを思い切ってやるべきだ」と財政構造改革への転換を促した。
しかし、仙谷由人国家戦略・行政刷新担当相は5日のロイターとのインタビューでも、財政規律至上主義を警戒し、具体的な財政健全化目標設定については年度末の経済情勢を見極めなければ判断がつかないと述べている。具体的な数値目標設定は財政再建に向けた政府の取組み姿勢の表れともみられるが、不透明感が強いのも事実だ。
<官僚の意見を封殺し、財政政策が空洞化>
片山氏は政治主導を標ぼうする民主党政権が「官僚の意見を封殺し、財政政策が空洞化している」ことや、官僚に代わり、財政再建の見識を持ち合わせているプロや経済財政政策のプロが政権内にいないことが民主党政権の致命的弱点でもあると語った。
そのうえで「官僚の意見を丸呑みした自民党も良くないが、官僚を封殺して、さりとて専門家がいない民主党もいけない。官僚をうまく使いこなせるだけの人を内閣の要所要所に配属するべきだ」と提言した。「政治主導がいつのまにか政治家主導になっている」として、国会議員だけで大臣・副大臣・政務3役を固めた弊害を指摘し、専門家の力を借りる柔軟性を求めた。
<参院選至上主義>
こうした問題の根底には、現政権が「参院選至上主義」に陥っていることがあるとし、「参院選に勝つことが大目標で、何をすべきかということが二の次になっている」と強調。「小沢幹事長が事実上のトップにいる限り、民主党はそう変らないだろう」と見通した。
財政再建の議論では不可欠とみられる消費税増税の議論も夏の参院選後とみられ、その結果、「政策の重要な選択肢が閉ざされてしまう。選挙至上主義だと大事なことは全部先送りになる。自民党もそうしてきたが、『選挙には勝ったが国家は破たんした』では元も子もない。選挙に負けるかもしれないが、国家の緊急事態にわが政党はこういう政策を提示しますという見識がなければならない」と警鐘を鳴らした。
選挙至上主義は民主党が10年度予算の審議中に公共事業の具体的な配分方針(個所付け)を地元組織に事前に伝えた問題にも投影されているという。「インサイダー・談合政治を変えようという国民の意思が政権交代を促した。ところが政権交代した民主党が自民党の時よりもっとレベルの低いことを行っている。何のために政権交代したのかと」と苦言を呈し、「小沢さんと決別しなければ民主党は再生しない」と語った。
政府は2011年度から13年度までの3年間の歳出・歳入の大枠を設定する「中期財政フレーム」と中長期の財政規律のあり方を含む「財政運営戦略」を6月までに策定し、財政健全化の道筋を示す方針だ。関係閣僚・副大臣や有識者からなる「検討会」では、海外の事例を参考に検討を進めている。
(ロイターニュース 吉川裕子記者 リンダ・シーグ記者)
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