〔ECBフォーカス〕ユーロ圏政府の財政健全化、ECBの出口戦略に影響か
*財政緊縮化、2011年のECBによる利上げに影響か
*財政・金融政策の同時出口戦略、実施されれば景気の二番底も
*ECB、懲罰的な利上げの可能性はほとんどなし
[フランクフルト 3日 ロイター] ユーロ圏政府が公約通り2011年から財政健全化に乗り出せば、欧州中央銀行(ECB)は、景気支援措置からの脱却ペースを緩める必要があるかも知れない。
ECBの政策担当者はこの1カ月、不安定な財政状況に対する語調を強め、政府に対し財政健全化をはからなければ、相応の金利上昇リスクに直面し、公的債務の返済も増えることになると指摘している。
政府の対応の遅れに対し、ECBが懲罰的に金利を引き上げる可能性はほとんどないものの、ECBの関係者は、金利を設定する上で政府の積極財政政策からの脱却による影響は無視できないとの見解を示している。
欧州連合(EU)加盟国は遅くとも2011年までに大幅な歳出削減を開始すると公約しており、財政赤字の対国内総生産(GDP)比を3%以内に抑制するとの規定順守という厳しい仕事にとりかかる必要がある。
欧州委員会は、ユーロ圏政府の財政赤字の対GDP比が今年6.4%に達すると予想している。アイルランドやスペインなどの国は2ケタになる見通し。公的債務残高の対GDP比は今年78%となり、EUの規定60%を大幅に上回る見込み。
ロイターのアナリスト調査によると、ECBは2010年第4・四半期に過去最低の1%の政策金利の引き上げを開始し、政策金利は11年半ばまでには2.25%に達すると予想されている。
しかし、この財政政策の出口戦略が景気の足かせとなれば、ECBは他の状況であれば可能であったようなペースでの金利正常化が難しくなる可能性がある。このため、05年12月から1年半に及んだ2%ポイントのような利上げが遅れることになる。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのエコノミスト、ホルガー・シュミーディング氏は「大幅な財政健全化が成長の過程にマイナスの影響を与えれば、ECBはそうではない場合に比べ、利上げを控えるか、それほど早急な利上げは行わないことを意味する」と指摘。「しかし、最初に財政の緊縮化が実施されることになる」と述べた。
欧州有力シンクタンクのブリューゲルは、先月開かれたEU財務相・中銀総裁の非公式会合向けに準備した文書で、中央銀行は財政改革までは流動性供給と金融支援の解除を待つべきだと提言した。
同シンクタンクは「すべての出口戦略を同時に積極的に進めれば、二番底のリセッションと銀行セクターの危機再来という深刻なリスクに直面する可能性がある」と指摘した。
ECBは景気回復が始まり次第、支援策を解除するとしており、トリシェ総裁は、各国政府と「事前に協調」して出口戦略を実施する可能性を明確に排除している。
しかし、ECBは真空状態で金利政策を策定している訳ではなく、財政政策も含めあらゆることを勘案するとしている。
<空洞化の脅威>
エコノミストによると、ユーロ圏政府が今年発表した危機対策支出の対GDP比は約1%で来年はそれをやや下回る見通し。
積極財政からの脱却は、これらの景気対策の縮小のほか、広範囲の財政改革も含まれる。BNPパリバによると、債務残高の対GDP比を容認できる60%まで低下させるには、対GDP比で2.7%の財政黒字を10年間達成することが必要になる。
前出メリルのエコノミスト、シュミーディング氏は、財政刺激策により今年の経済成長が約0.5%ポイント押し上げられるが、「財政刺激策がなければ来年0.5%ポイントの押し上げ効果がなくなることになる。財政政策が反転すれば、全般的な影響はより大きくなる」と述べている。
しかし、財政改革の結果として信頼感が改善すれば、経済成長に対するマイナスの影響は鈍ることになる。
シュミーディング氏は「政府が財政刺激策に支出したすべてのユーロが実際に経済成長に有効だったとは限らないように、積極財政からの転換がすべて経済成長に悪いことにもならない」と述べた。
(Krista Hughes記者;翻訳 宮本辰男;編集:宮崎 大)
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