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コラム:トランプ大統領の情報漏えい、「弾劾」に値するか
2017年5月18日 / 05:07 / 5ヶ月前

コラム:トランプ大統領の情報漏えい、「弾劾」に値するか

[16日 ロイター] - トランプ大統領によるツイートは、16日午前7時3分に投稿された。確かにそれには、ロシアと機密情報を共有したと書かれている。続いて「政権発足直後から、私はコミー長官らに、諜報コミュニティーに潜む情報漏えい者を探すよう求めてきた」とある。

 5月16日、トランプ大統領(写真)によるツイートは、午前7時3分に投稿された。確かにそれには、ロシアと機密情報を共有したと書かれている。写真は17日、ホワイトハウスで撮影(2017年 ロイター/Yuri Gripas)

それを望むなら、大統領はただ鏡を見ればよかったのだ。

大統領執務室のあるホワイトハウス西棟では、職員が萎縮し、頭を抱え、次のショックを待ち受けている。トランプ・ワールドで、また前夜よりも悲惨な夜明けが訪れたのである。

諜報分野において、大統領はある種の「王様」だ。大統領が機密だと言えば、それは米国にとっての機密になる。大統領が来週、核ミサイルの発射コードをツイッターに投稿しようと思えば、誰もそれを止めることはできない。しかしそれでも、一定の制限はある。

トランプ大統領がロシア側に教えた機密情報は、彼が自由に教えていいものではなかった。

現段階の報道で判明しているのは、トランプ大統領がロシア側に教えたとされる過激派組織「イスラム国(IS)」作戦計画の詳細な情報は、中東諸国の諜報当局者のうち、数少ない米国の協力者(イスラエルだ)の1人が、情報源を秘匿するという厳格な了解のもとで米国に与えたものだということだ。

これを他国と共有することはできない。トランプ大統領は、違反すれば危険をもたらす、きわめて明瞭な一線を越えてしまったのだ。

ISについて持っている機密情報をロシア側に自慢することによって、トランプ大統領は、戦略上の敵対国に対し、有事の際に中東の同盟国がどのように諜報活動を行うかを暴露してしまった。大統領は米国に対する信頼を裏切った。そうした信頼の獲得は難しいが、一度失った信頼を取り戻すことはさらに難しい。

そのような信頼がなければ、同盟国からこれまで提供されてきた機密情報は途絶えてしまうかもしれない。そして、機密情報がなければ、人命が失われる場合も考えられる。

あえて国家反逆罪と表現する人もいる。ジョージ・W・ブッシュ大統領のもとで国務省上級顧問を務めたエリオット・A・コーエン氏は、「最悪だ」と書いている。「偶然だとすれば他の誰かに対する重大な犯罪だし、故意であるならば、国家に対する反逆だ」

過去1週間におけるトランプ大統領の行為は、米国の諜報コミュニティーの中核を震撼させた。トランプ大統領は、情報機関がどのように機能しているのか、その活動がうまく行かなければ何が起きるのか、大統領が軽い気持ちで情報機関を侮辱すれば、情報機関がどのような惨事に直面するのかを理解していないように思われる。

自国の情報機関、それに対応する他国の機関、そして情報機関とホワイトハウスとの関係──。わずか4カ月のあいだにトランプ大統領がこれらに与えたダメージを回復するには、4年もの歳月を必要とするだろう。もし回復できるならば、の話だが。

現時点では、状況は非常に混乱している。そして、これはきわめて危険な状態なのだ。

トランプ氏は中央情報局(CIA)の職員をナチスにたとえた。2016年の選挙にロシアが与えた影響についての連邦捜査局(FBI)による調査を、彼は「でっち上げ」「茶番」と呼んだ。

コミーFBI長官を解任し、その理由について自身の側近にうそをつかせた。そのうえ、軽率にもNBCニュースに対して、長官を解任したのは、FBIがロシア政府とトランプ陣営の関係を追及しようとしたからだと話してしまった。FBIによる捜査が迅速に進めば、これはいずれ、司法妨害と解釈される可能性がある。

それからトランプ大統領は、友人である2人のセルゲイ(セルゲイ・ラブロフ露外相とセルゲイ・キスリャク駐米大使)を大統領執務室に招き、手持ちの「すごい機密情報」を自慢した。キスリャク駐米大使との会話が直接の理由となって、トランプ政権で当初の国家安全保障担当補佐官だったマイケル・フリン退役中将が解任された。

最後に、この「すごい機密情報」の一件が暴露されると、トランプ政権の現在の国家安全保障担当補佐官であるマクマスター氏が、ひどく居心地悪そうに、否定になっていない否定見解を発表した。

だが、その12時間後、トランプ大統領はその見解を台無しにしてしまった。マクマスター補佐官も今では、大統領が新たな友人たちに秘密を明かすことを即興で決断したことを認めている。

事実、マクマスター補佐官は現在、このように述べている。「大統領は、この情報がどこから得られたものかも意識していなかった」。

もしそれが本当なら、機密情報の取扱いについてヒラリー・クリントン前国務長官に与えられた手厳しい表現を借りれば、トランプ大統領は「非常に不注意」だったことになる。

この「ロシア疑惑」には、今やFBI長官解任と、場合によっては執務室での大統領自身による情報漏えいが含まれるわけだが、ここで生じていることは、一過性の政治現象ではない。

トランプ氏の言動が、1月20日に行った大統領就任宣誓に対する違反行為に限りなく近づいている、という主張にも妥当性があるかもしれない(そして一部の鋭敏な人々はすでにそれを主張している)。就任宣誓には、「違法な手段による政府の転覆を狙う者から政府を守る」という暗黙の誓いが含まれている。

ジョージ・W・ブッシュ政権下でホワイトハウス付き弁護士を務めたジャック・ゴールドスミス氏とその同僚らは、ブログ「Lawfare」のなかで、トランプ大統領の行為は弾劾対象の犯罪である権力乱用に相当する可能性があると主張している。

「もし大統領が核ミサイルの発射コードを付箋に書いてデスクに貼り、その写真を撮ってツイッターに投稿しても、厳密には何の刑法にも違反していない。今回の場合もそれと同じだ」と彼らは書いている。「しかし、このレベルの不注意が、就任宣誓に対する重大な違反に相当することは誰もが理解するだろう」

「(敵対的な外国の権力者にセンシティブな情報を漏らせば)大統領弾劾に関する規定に含まれる『反逆』という言葉にかなり接近することになる」と彼らは続ける。「従ってこの件は、法律上は犯罪に問われる可能性はないとしても、トランプ大統領にとって非常に重大なものになる可能性がある」

トランプ大統領は、非常にセンシティブな機密情報をロシアの外相と駐米ロシア大使に漏えいしたことにより、米国政府を転覆させる可能性のある敵を支援するリスクを冒している。

彼の極端な不注意の影響で、「ドナルドを刑務所へ」という怒号が起きる可能性はほとんどない。彼がやったことは厳密には犯罪ではないからだ。だが、きわめて深刻な結果をもたらす可能性はある。

*筆者はピュリツァー賞を受賞した著述家。著書に “Legacy of Ashes: The History of the CIA”(「CIA秘録─その誕生から今日まで」)など。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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