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焦点:6月利上げ直前でも米債は「低体温症」、日本勢の買いも要因に
2017年5月30日 / 07:21 / 4ヶ月前

焦点:6月利上げ直前でも米債は「低体温症」、日本勢の買いも要因に

 5月30日、6月米利上げが「秒読み」段階に入ったが、米長期金利は上昇の兆しを見せず、「低体温症」とも言える状況が続いている。米国と欧州、日本との金利差を意識したマネーが米債券市場に流入しており、中でも日本勢の「買い」が目立っている。写真は昨年11月撮影(2017年 ロイター/Dado Ruvic)

[東京 30日 ロイター] - 6月米利上げが「秒読み」段階に入ったが、米長期金利は上昇の兆しを見せず、「低体温症」とも言える状況が続いている。米国と欧州、日本との金利差を意識したマネーが米債券市場に流入しており、中でも日本勢の「買い」が目立っている。また、長期化している米景気拡大の終えんを先取りしているのではないかとの観測も市場の一部で広がり出している。

<目立つ日本からの資金流入>

米債券市場では、指標となる10年国債利回りUS10YT=RRが、昨年12月に2.64%、3月に2.63%とダブルトップを付けた後、2.16%台まで押し戻され、現在も低迷している。

こうした中で、米長期金利との連動性が高いドル/円JPY=EBS相場の上値は重く、こちらも再上昇の機運が乏しい。

米長期金利が上昇基調に入らない直接的な要因として、日米欧の金融政策の方向性の違いを背景に続く対米資本フローがある。

「日本と欧州が非伝統的金融緩和により、短期金利を究極的な低水準に抑える中で、相対的に金利の高い米国債券に投資家マネーが流入しやすく、米長期金利が抑えられる構造ができあがっている」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券・シニア投資ストラテジスト、服部隆夫氏は言う。

ただ、欧州中央銀行(ECB)が国債買入を段階的に減らすテーパリングの検討に入る可能性が指摘されている中で、欧州マネーの対米流入は抑制される可能性がある。

他方、深刻な国内運用難に直面する日本の投資家の米債需要は依然強く、米長期金利の抑制要因の1つになっているというのが、市場関係者の声だ。

「相対的に金利が高い米債をタイミングを見て買っていきたいという思いは、変わらない」と三菱UFJリサーチ&コンサルティング・調査部主席研究員の廉了氏は言う。

米財務省の国際資本統計(1―3月期)によると、ユーロ圏の投資家は米債(米財務省証券、米政府機関債、米社債)をネットで月平均52.59億ドル売り越した。

対照的に日本勢は、米債を月平均80.31億ドル買い越している。

国際収支統計によると、日本勢の米債保有残高は、2016年末に約134兆円に達し、2015年末の118兆円、2014年末の105兆円から一段と伸びている。

<景気後退を先取り>

低下傾向がみられる米長期金利は、市場がこの先の景気後退を「先取り」している可能性も示唆している。

6月米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に「問題は利上げの有無ではなく、今回のFOMC後に追加利上げの機運が盛り上がるかどうかだ」と三井住友銀行・チーフストラテジスト、宇野大介氏は述べる。

しかし、米景気指標や本気度が疑われるトランプ大統領の予算案、ロシアゲート問題など不透明要因が並び、「景気減速が一時的ではないかもしれないと、FRBがさらに疑心暗鬼に陥っている可能性がある」と同氏はみている。

債券市場による米景気後退への警戒感がくすぶる中で、米セントルイス地区連銀のブラード総裁は26日、FRBの利上げに向けた計画は「過剰に積極的」かもしれないと指摘した。

同総裁は、これまでにも必要な利上げはあと1回で、その後は景気加速が明確になるまで様子を見るべきとの見解を示している。

一方、堅調な米労働市場が明るい先行きを示しているとは限らない。

米国では失業率が4.4%と10年ぶりの低水準となり、完全雇用に達したか、完全雇用に限りなく近い状況となっている。

「しかし、人口の伸びを超える雇用増がいずれ限界に達する蓋然性は高く、市場参加者は一気に限界に到達するリスクを警戒しているのかもしれない」と服部氏は言う。

<日本の資金余剰、グローバルフローに影響も> 

1―3月の米成長率を押し下げた主因として、弱い個人消費に注目が集まったが、その裏では米家計の債務残高が膨らんでいる。

ニューヨーク連銀によると、第1・四半期末の米家計債務残高は、過去最高の12兆7300億ドルとなり、金融危機時の2008年第3・四半期末に記録したピークである12兆6800億ドルを上回った。

最近の特徴は自動車ローンと学生ローンの割合が拡大していることで、足元の消費だけでなく、先々の米経済の重荷になりかねないとの懸念が、市場関係者から出ている。

景気循環への懸念も加わり、日本勢の米債買いが米長期金利の抑制に「一役」買っている構図は「日本からの資金流出が、米長期金利の抑制─ドル安/円高方向への圧力─日本株の天井感を生み出す流れになっている」(大手銀関係者)と見る声も出ている。

日本国内の貯蓄超過(投資不足)が、グローバルなマネーフローに大きなインパクトを与える存在になりつつある。

森佳子 編集:田巻一彦

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