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コラム:イランと北朝鮮、トランプ氏が学ぶべき「教訓」
2017年8月4日 / 02:56 / 2ヶ月後

コラム:イランと北朝鮮、トランプ氏が学ぶべき「教訓」

 8月1日、イランと米国のあいだの緊張が急速に高まっている。先週末、ペルシャ湾では、イラン米国両国の海軍艦艇のあいだで一触即発の事態がまたもや発生した。写真はトランプ米大統領。ニューヨーク州で7月28日撮影(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)

[1日 ロイター] - イランと米国のあいだの緊張が急速に高まっている。先週末、ペルシャ湾では、イラン米国両国の海軍艦艇のあいだで一触即発の事態がまたもや発生した。

米連邦議会は先週、イランの弾道ミサイル開発計画やテロ支援に関連している個人・企業に対する追加制裁措置を承認した。イランはこれに対抗し、宇宙空間に向けたロケット発射試験を行った。米国政府・イラン政府に支援された勢力は、シリアからイエメンに至る中東全域で代理戦争を遂行している。

だが、イランと西側諸国の緊張が緩んでいる分野が1つある。イラン政府による核開発プログラムだ。これまでのところ、国際原子力機関(IAEA)は7回にわたり、イランが合意に基づく公約を果たしてきたと報告している。対イラン交渉において米国のパートナーであった欧州連合(EU)、ロシア、中国も、イランによる合意遵守を確認している。トランプ政権も、わずかに2回ではあるが、同様に合意遵守を確認している。

ところがトランプ米大統領は、イランが引き続き「包括的共同作業計画」(JCPOA)合意事項を遵守しているにもかかわらず、これを廃棄したいと考えている。トランプ氏はイランの合意遵守を承認することに消極的であり、先週のニューヨーク・タイムズの報道によれば、大統領は顧問らに対し、この多国間合意に終止符を打つ理由を探したいと語ったという。

トランプ氏がそのような針路をとるならば、イラン政府との対立が深まることは確実である。イラン指導部は、生き残りのためには核兵器の保有が不可欠であると考えざるを得なくなるかもしれない。これはまさに、米国が直面している北朝鮮情勢と同じである。北朝鮮は核武装することによって、実質的に東アジアを人質に取っている。

オバマ前大統領が主導した対イラン合意に対する2017年のトランプ氏の反応と、クリントン元大統領が署名した北朝鮮との枠組み合意に対する2001年のジョージ・W・ブッシュ元大統領の反応には、驚くほど類似点がある。

当時も今と同様に、就任したばかりの大統領が、前任者と自分との違いを際立たせるために、外交政策面での新たな針路を描こうと決意していた。当時もやはり、ブッシュ氏は対北朝鮮関連で包括的な政策再検討を開始したのである。

ブッシュ政権は当時、枠組み合意違反となる秘密のウラン濃縮計画について証拠をつかんだと主張していた。だが、国際的な連携を築くことによって枠組み合意の厳格な遵守を北朝鮮政府に強いる代わりに、ブッシュ政権は外交交渉の放棄を選んでしまった。

2005年になると、北朝鮮政府が核兵器の製造にさらに近づいたことを理解して、ブッシュ氏はより包括的な核放棄合意に向けた交渉を模索した。だが、手遅れだった。恐らくサダム・フセイン政権下のイラクが迎えた運命を見て、北朝鮮指導部は生存のための「保険」として核兵器保有を決意したのだろう。1年後、北朝鮮は最初の核実験を実施した。

2001年当時の北朝鮮と異なり、現在のイランが、核開発関連の制裁解除と引き換えに、核開発プログラムを平和目的に限定するという合意条件を遵守していることはほぼ確実である。JCPOAは、イランが核爆発装置の設計・開発に資するような活動を行わないよう、IAEAによる厳しい査察体制を義務付けており、またイランが核兵器保有を追求することを永久に禁じている。欠陥のない軍備管理協定など存在しないとはいえ、トランプ氏は「では他にどのような選択肢があるのか」と問うべきである。

JCPOAがなければ、米国政府もその同盟国も、イラン政府による核開発プログラムにアクセスしにくくなり、ブレーキをかけることも難しくなる。JCPOAにおける約束をイランが遵守している限りにおいて、米国が同協定に基づく米国自身の義務を怠るようなことがあれば、国際社会から「ならずもの国家」と見なされることになろう。そうなれば、友好国とであれ敵対国とであれ、将来の米政権が外交交渉を行うときに信頼性を失いかねない。ホワイトハウスの主が替われば交渉時の約束が放棄されかねないという懸念を抱かせるからだ。

トランプ氏の路線は、2国間・多国間の関係にイランを巻き込み、制裁や交渉に関して、欧州・アジアの同盟国の賛同を得ていこうとするオバマ前大統領のアプローチとは際立った違いを示している。欧州は対イラン合意の維持にはるかに熱心であり、トランプ氏の強硬姿勢は米国と欧州の関係に取り返しのつかない害を及ぼしかねない。

イランが北朝鮮と同じように推測するならば、つまり、米国政府が目指しているのがイランの核開発プログラムを制約することではなく、体制変更の前提として核合意から離脱することだと考えれば、イラン政府は、10年前の北朝鮮政府とほぼまったく同じように、核兵器を抑止力として考える可能性がある。そうなればトランプ政権は、米国を新たな中東戦争に引きずり込む可能性のある軍事攻撃の実施という避けるべき状況に直面しかねない。

トランプ氏は、イラク攻撃には反対だったとたびたび表明しているが、米大統領選挙前のいくつかの発言からは、逆の姿勢がうかがわれる。とはいえ、彼はそのような戦争は「中東を不安定化させる」選択であると称し、米国は「自分たちがろくに知りもしない外国の体制を転覆させようと焦ることはやめるべきだ」と述べている。トランプ氏はこうした自分自身の提言に従うべきであろう。

皮肉なことに、トランプ政権は、彼が頻繁に嘲笑してきた人物、つまりジョージ・W・ブッシュ元大統領の政権と同じ道を歩むことになりかねない。危機をつくり出し、終わりなき紛争に火をつけ、世界中で米国の地位を低下させてしまった政権と同じ道を歩むことになりかねないのだ。

大統領が深夜まで起きているべき緊急性の高い問題には事欠かない。過激派組織「イスラム国」、シリア、北朝鮮の核兵器による威嚇、南シナ海における中国の勢力拡大、東欧・バルト海沿岸諸国に対するロシアの干渉。すぐに思いつくものだけでもこれだけある。

トランプ政権は、JCPOAに関しては現状を維持しておくべきだ。歴史から正しい教訓を学び、この合意を台無しにするのではなく、維持するよう努力すべきである。

(翻訳:エァクレーレン)

*筆者は米シンクタンク、アトランティック・カウンシルのシニアフェロー並びに、トルーマン・ナショナル・セキュリティー・プロジェクトのフェローを務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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