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コラム:注目度上がる米長期金利、低下基調が意味する情報は何か
2017年4月7日 / 11:28 / 5ヶ月前

コラム:注目度上がる米長期金利、低下基調が意味する情報は何か

 4月7日、10年米国債利回り(長期金利)が低下している。写真はイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長、ワシントンで3月撮影(2017年 ロイター/Yuri Gripas)

[東京 7日 ロイター] - 10年米国債利回り(長期金利)が低下している。年内にも米連邦準備理事会(FRB)による保有資産圧縮の議論が始まることが明らかになり、その基調が一段と鮮明になった。資産圧縮は債券需給上は金利上昇要因だが、下がっているのは、米景気の先行きを楽観している参加者が少ないことを意味している。

景気の体温計機能が明確に働いており、ドル/円や日本株の行方を推定する際にも大きな威力を発揮しそうだ。

<米のミサイル攻撃、リスクオフ意識を刺激>

7日は米国が巡航ミサイルでシリアを攻撃し、米長期金利はアジア取引時間帯に2.2%台へと低下した。これはリスクオフを意識して、安全資産である米国債が選好されたため。  

ただ、昨年11月のトランプ米大統領の当選後、上昇を続けてきた米長期金利は今年3月中旬、2.6%台を付けてから低下基調に入った。

特に今月5日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、大方のメンバーが年内の保有資産圧縮の議論開始を求めていたことが判明すると、低下基調が鮮明になった。

<FRBの資産圧縮と金利の関係>

この現象は、教科書的な「理解」では、なかなか理由がわかりにくい。

FRBが保有する米国債をネットで売り越すことになれば、米国債市場では有力な「買い手」が「売り手」に転じ、需給環境が悪化する。そうなれば、米長期金利は上がるはず。

だが、実際はいったん利回りが上昇した直後から、低下圧力が増した。

そのカラクリを複数の市場関係者は、以下のように解説する。米景気が失速しなければ、FRBは今年3回の利上げを試みる。6月と9月に利上げし、12月から資産圧縮を開始する。

しかし、利上げと資産圧縮を同時に実行すれば、相当な引き締め効果が発揮され、米株価が急落しかねない。

そこで資産圧縮が始まれば、市場動向を見極めつつ、FRBは当分の間、利上げをしないだろう。そうだとすれば、米長期金利に上昇圧力がかかることはなく、逆に資産圧縮時の株価下落リスクを勘案し、さらに低下する可能性もある──。

こうした見方が市場で根強く、長期金利に低下圧力がかかり続けているとの見立てだ。

<景気拡大局面、いつまで続くのか>

また、米国の潜在成長率は2%を割り込んでいる可能性がかなりあり、年内3回の利上げを実行した後の米経済は「ヘトヘトになっているリスクもかなりある」(外資系金融機関の関係者)という見方が少なくない。

さらに2008年9月のリーマンショック後のマクロ対応をきっかけに拡大を始めた今回の米景気拡大局面も今年で9年目を迎え、そろそろ拡大サイクルの終了が近いのではないかと懸念する声もある。

トランプ大統領の展開する経済政策の効果は、依然として読み切れないため、その部分を切り離して考えると、米経済が失速する懸念は小さいものの、長期金利が3%台に乗せ、拡大サイクルが続くと見ている市場参加者は、東京市場が予想する以上に少ないということを示しているのではないか。

同時に米長期金利と米景気の先行きの連関性がかなりあり、景気の先行きを推し量る「体温計機能」がかなり働いていると言えないだろうか。

<ドル高/円安・株高シナリオの可能性>

この体温計から類推できることは、日米金利差が拡大する方向では動かず、反対に縮小する可能性を秘めているというシナリオだ。

少なくとも昨年末にがい然性が高いとみられていた日米金利差の拡大からドル高/円安となり、日本株高へと波及する「ゴールデンルート」の道が当面、望めなくなっていることは明らかだ。

米長期金利が2%台前半で推移し、ドル/円が105円─110円のレンジ取引になるなら、日経平均も上値が大幅に伸びる時期は、かなり先になるのではないか。

ここにきて、米国のシリアへのミサイル攻撃とロシアの反発、北朝鮮情勢の緊迫化など「地政学リスク」の高まりが目立ってきた。

米中首脳会談の動向も含め、しばらくは「政治」の材料が市場動向を左右するウエートを高めそうだ。複雑な変数を消化した上での米長期金利の体温計機能は、一段と有用性を高めると予想する。

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