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コラム:米国民は「怒れる男」を大統領に選ぶか
2016年9月29日 / 05:51 / 1年前

コラム:米国民は「怒れる男」を大統領に選ぶか

 9月27日、米国民は、「怒れる男」を大統領に選ぶつもりなのだろうか。写真は26日、米大統領選に向けた第1回テレビ討論会で、民主党のヒラリー・クリントン候補と初の直接対決に臨む共和党のドナルド・トランプ候補(2016年 ロイター/Carlos Barria)

[27日 ロイター] - 米国民は、「怒れる男」を大統領に選ぶつもりなのだろうか。共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏は怒っている。彼は国内の状況について「災害だ」と怒り、オバマ大統領に対しても怒っている。

同氏はまた、メディアに加え、民主党のヒラリー・クリントン候補にも「彼女の陣営で一番有能なのは主流メディアだ」と怒っている。貿易に怒り、米国を食い物にする他国にも怒っている。イランとの合意にも怒っている。とにかく、何もかもが彼の怒りの対象なのだ。

トランプ氏は、すべての女性にとって悪夢のような存在、つまり「怒れる夫」である。これに対するクリントン氏の反応は、うんざりするような諦めの言葉だ。「今夜は結局、これまで起きたことは全部、私の責任という話で終わるような気がする」

CNNが「今回のテレビ討論で誰が一番良かったか」を調査したところ、女性は40ポイント差(65対25)でクリントン氏の勝利と回答。男性もこの意見に賛同しており、30ポイント差(59対29)でクリントン氏の勝ちである。

怒っている米国民は多い。だからこそトランプ氏が共和党の候補指名を獲得したのだ。

保守派は、米国史上最もリベラルな大統領であるオバマ氏が2期連続で選ばれたことに苛立っている。労働者の多くは、グローバル経済のなかで雇用が失われつつあることに憤慨している。白人男性の多くは、ポリティカルコレクトネスが重視されるようになって自分たちの力が失われたと感じている。

「新しい米国」が台頭しつつある。働く女性、シングルマザー、アフリカ系、ラテンアメリカ系、アジア系、ユダヤ教徒やイスラム教徒の有権者、若者、同性愛者、高学歴の専門職などの連合だ。これに対して「古い米国」が怒れる抵抗運動となった。そのリーダーがトランプ氏だ。

選挙は常に「変化」か「継続性」かの二者択一である。もしあなたが現状に満足しているなら、政権与党に投票すればいい。野党の候補者は変化を売り物にするという想定だ。

今年の大統領選挙で「変化」を売り込むことは、トランプ氏にとっては悪い取引ではない。経済やテロリズム、そして人種対立といった問題をめぐり、不満は渦巻いている。だからこそ、トランプ氏は大統領にふさわしい人物ではないと大半の米国民が認めているにもかかわらず、ここまで勝ち残れたのだ。

だが米国民は通常、たとえ不遇の時代にあっても、「怒れる候補者」を選ばないものだ。米国民は通常、希望と楽観主義を提示する候補者に投票している。

1932年、ルーズベルト大統領が選出されたとき、時代ははるかに暗かった。彼はこれからもっと明るい日々が来ると言い、米国民に「ニューディール(新政策)」を約束した。

1968年の米国は、評判の悪い戦争が長引くなか、人種間の暴力と学生たちの抗議に揺れていた。このとき「国民を団結させる」と選挙戦で約束したのがニクソン大統領である。1980年には、エネルギー危機とハイパーインフレ、そしてイランでの米大使館人質事件があった。レーガン大統領は「丘の上の輝く町」について語った。

9月27日、米国民は、「怒れる男」を大統領に選ぶつもりなのだろうか。写真は26日、米大統領選に向けた第1回テレビ討論会で、民主党のヒラリー・クリントン候補と初の直接対決に臨む共和党のドナルド・トランプ候補。代表撮影(2016年 ロイター)

1992年、米国民がリセッションに苦しんでいたとき、クリントン大統領は「希望から来た男」として大統領選挙を戦った。2008年、この国が新たな大恐慌の瀬戸際へと追い詰められたとき、オバマ大統領は「希望」と「変化」を提示した。いずれの場合も「怒り」ではない。

今回の第1回討論会で、クリントン候補は有権者に2008年の金融危機以来、米国がどれだけ回復してきたかを思い起こさせようとした。「私たちは深淵から復活した。そしてそれは、たやすい道のりではなかった」

トランプ氏の怒れる反論はこうだ。「私たちの国は苦しんでいる。クリントン(元国務)長官のような人間があれほど間違った判断をしてきたからだ。私たちは、ぶくぶくと膨れ上がった醜いバブルのなかにいる」。そして、バブルは弾けるものだ、と。

また、同氏はこうも主張した。「アフリカ系、ヒスパニック系米国民は地獄のような生活を送っている、危険に溢れているからだ。通りを歩けば撃たれてしまう」

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都市部における暴力犯罪は確かに問題だが、このように決めつけられては、アフリカ系・ラテンアメリカ系の人々の多くは、自分たちの生活を侮辱されたように感じてしまう可能性が高い。

クリントン氏のパフォーマンスは、正確に言えば、陽気でも快活でもなかった。慎重で抑制されたものだった。彼女が発散していたものは希望ではなく有能さだ。彼女はこの夜、こんな決めゼリフを放った。

「ドナルドは単に、私がこの討論会に向けて準備してきたことを批判している。確かに、私は準備してきた。私は他に何を準備してきたか分かるだろうか。大統領になるための準備だ」

トランプ氏は次のように豪語した。「私の持つ、恐らく圧倒的に最強な資産はこの気性だ。私には、勝つ気性が備わっている」

しかし彼が実際に持っているのは、「怒りっぽい」気性である。

大統領を選ぶ段になって、有権者は、候補者が怒りを抑えることができるかを心配したくはないだろう。

*筆者は米カリフォルニア大学ロサンゼルス校でコミュニケーション研究分野の客員教授を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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