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コラム:フリン氏辞任劇、トランプ政権の「脆さ」露呈
2017年2月20日 / 09:06 / 8ヶ月前

コラム:フリン氏辞任劇、トランプ政権の「脆さ」露呈

 2月14日、今週辞任したフリン米大統領補佐官(写真)が、大統領選で苦戦していた頃のドナルド・トランプ氏に「正統性」を与えてくれる存在だと思われていたのは、そう遠い昔ではない。1日、ホワイトハウスで撮影(2017年 ロイター/Carlos Barria)

13日夜に辞任したフリン大統領補佐官(国家安全保障担当)が、大統領選で苦戦していた頃のドナルド・トランプ氏に必要とされた「正統性」を与えてくれる存在だと思われていたのは、そう遠い昔ではない。

就任からわずか24日、フリン氏の辞任は自業自得だ。なんといっても、トランプ大統領の就任直前にロシア大使と協議した内容について、ペンス副大統領などの政権上級幹部に、正直とは言いがたい説明をしたのだから。

トランプ氏が第45代大統領に就任してからまだ日も浅い。だが、これまでの、どのエピソードにもまして、フリン氏をめぐる事件は私たちに大切なことを告げている。米国政界のみに留まらず、特にロシア政府関係者は、心して聞くべきだ。

トランプ氏にとって、ロシアは今や毒物なのだ。

ロシアのプーチン大統領とトランプ大統領(あるいは単にその側近たち)のあいだで、米国政府の方針について何か秘密の合意があったとすれば、すでにその謀略は脱線してしまっている。

ロシアが何かをやっていたとしても、たとえそれが民主党幹部メールのハッキングであっても、それだけで大統領選の形勢がトランプ氏有利に傾いたなどと考える人はほとんどいない。とはいえ、不適切な関係を窺わせる兆候は今や至るところに見られ、消えようとしない。

事実がどうかよりも、どう見られているかの方が重要なのかもしれない。トランプ氏の就任前にフリン氏がロシア大使と会談したことは異例である。ビジネス面でモスクワとの関係があることも、大統領自身以上にフリン氏が「弱みを握られている」という噂をあおっている。

だが、トランプ氏とプーチン氏との関係をめぐる疑惑が消えないことを思えば、トランプ政権には、対ロ関係において「弱腰」という印象を与えることも、もちろんロシア側に操られていると見られることも許されないのだ。

トランプ政権下のホワイトハウスにおいて、(恐らく大統領本人を除けば)誰も無敵の存在ではあり得ない。

フリン氏はこれまでも常に物議を醸してきたし、トランプ氏の選挙運動を支持したことで、それが少しでもマシになったわけでもない。国防情報局に在籍していたときでさえ、彼を批判する人は多かった。

なかには、フリン氏が自分の主張を裏付けるために必要に応じて「フリン流の事実」をでっち上げるという批判もあった。フリン氏がヒラリー・クリントン候補を攻撃する「彼女を監獄へ(Lock her up)」というスローガンの音頭を取る様子を見て、国内で最も敬意を集める元米軍将校たちでさえ、「将軍経験者が政治に関わるべきではない」と公言したほどである。

これだけ敵が多いにもかかわらず、またイスラムの「危険」に対する極端な思想にもかかわらず、情報・安全保障関係者のなかにも、またそれ以外にも、フリン氏を支持するファンはいた。

しかしホワイトハウスでは、入閣後まもなく、「マッド・ドッグ(狂犬)」の異名を取る海兵隊出身のマティス国防長官の陰に隠れてしまった。選挙期間中は「資産」だったフリン氏は、あっというまに「負債」と化してしまったのだ。

スパイサー大統領報道官から、もっと居心地のいい立場にいるバノン首席戦略官・上級顧問、プリーバス首席補佐官に至るまで、政権に加わった他の人々も、このフリン氏の教訓を考慮すべきだ。

トランプ政権は、米人気ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のような、政治的な大量殺りくの舞台になる可能性がある。少なくとも、至るところから情報がリークされている。

この流れは止まりそうにない。次にクビになるのはプリーバス首席補佐官かもしれない。トランプ一家と親しいクリストファー・ルディ氏が先週末、ジャーナリストに対し、首席補佐官が「きわめて難しい状況」に置かれており、解任されるはずだと述べている。

これは公表を前提としたインタビューのなかでの発言だったが、もっと広い範囲では、政治任用官もキャリア官僚も、膨大な数の憶測やゴシップの断片を、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、ポリティコといったメディアに流し続けているようだ。

結果として、ホワイトハウスは混乱に陥っているように描かれている。日常的な手続きを誰も理解しておらず、言動を予想しにくい大統領は孤立しており、誰もがお互いを批判し合っている。さすがにこれは誇張かもしれないが、特にトランプ氏はこのような描写に腹を立てているに違いないし、これが自己実現的な予言になってしまう可能性がある。

これではあまり「ポスト真実」の世界とは言えない。証明可能な嘘は命取りになる可能性がある。

フリン氏の運命を左右したのは、彼が実際にロシア大使に言った内容ではない。同氏が、(はっきり言えば、ペンス副大統領に対して)うそをついたという認識が問題なのだ。フリン氏を辞任に追い込んだのは、米国の情報機関がいつものようにロシア大使館の電話を発信・着信とも監視しており、通話の書き起こし記録を政権に提出することができた、という事実なのかもしれない。

フリン氏は辞任表明のなかで、ロシア大使との電話に関して、ペンス副大統領に、「ついうっかり」不完全な情報を伝えてしまったと述べている。その結果、副大統領は、フリン氏はロシア大使との協議のなかで対ロ制裁については言及していないと公式に発表してしまった。しかしこれはまったく真実ではなかった。

これはホワイトハウスにとっては困った事態である。何しろ、大統領自身が、同様に信頼性の低い証人だということを暴露してしまっているからだ。就任式の参加者数を水増ししようと試みたことで、トランプ大統領の評価はすでに低下してしまった。他の人に真実を語るよう迫るには、説得力に乏しい。

だが、フリン氏が実証したのは「許される嘘には限度がある」ということだ。副大統領や上級幹部に誤った情報を与えることは致命傷になり得る。大統領の場合は、他の誰よりも許してもらえるだろう。何しろ、彼を解任することは非常に難しいからだ。だがその大統領でさえ、連邦議会や米国民に対して、何か重要なことについて嘘をついたことが分かったら、ただでは済まないかもしれない。

ペンス副大統領は、強力な、そして恐らく非常に重要な地位にある。ワシントンでは今回の騒動の真の勝者は副大統領だと思われている。

歴代の米国大統領と副大統領の関係はきわめて多様である。ジョージ・ワシントン大統領の下で副大統領を務めたジョン・アダムズは、その役割を「人間がこれまで作りだしたなかで最も取るに足りない役職」と表現した。だが、政務のプレッシャーは、正副大統領を非常に親密にすることもある。オバマ前大統領は、バイデン前副大統領が「兄弟」のようになったと語っている。

トランプ大統領と、福音主義キリスト教徒のペンス副大統領は、そのような関係としては奇妙な組み合わせに思われる。だがトランプ氏は今回の騒動において、これまで親密だったアドバイザーではなく、副大統領に味方した。

フリン氏など他の人々とは違って、ペンス副大統領がその職を追われるとしたら、トランプ大統領と同様、弾劾手続による場合だけである。そして、もし大統領が任期途中で挫折するようなことがあれば、ペンス副大統領がすべてを継承する可能性がある。

(14日 ロイター)

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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