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コラム:トランプ政権で働く「大義」はあるか
2016年11月17日 / 01:02 / 1年前

コラム:トランプ政権で働く「大義」はあるか

 11月14日、トランプ新政権に参加する候補者として実績ある有能な人物の名前が少しずつ漏れ聞こえており、2015年6月に大統領選に出馬して以来、元リアリティ番組スターであるトランプ氏に欠けていた真剣さが、うわべだけでも伝わってくる。写真はドナルド・トランプ次期米大統領。8月ニューヨークで撮影(2016年 ロイター/Carlo Allegri)

[ニューヨーク 14日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 私は独身時代、ナオミ・キャンベルとの結婚について考えたことがある。このスーパーモデルとの結婚願望が、もし信憑性のある話として広まっていたら、私の独身男性としての資質は相当なものとなっていただろう。

ドナルド・トランプ氏の政権移行チームについても同じことが言える。

トランプ新政権に参加する候補者として実績ある有能な人物の名前が少しずつ漏れ聞こえており、2015年6月にメキシコ人を強姦魔呼ばわりして大統領選に出馬して以来、元リアリティ番組スターであるトランプ氏に欠けていた真剣さが、うわべだけでも伝わってくる。

政権入りが取り沙汰される人物のうち、企業経営者として最も著名なのは、財務長官候補と目されるJPモルガン(JPM.N)のジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)である。

ダイモン氏や同様の立場にある人物の就任には、銀行業界のライバルたちから異論が出るだろうし、トランプ氏に投票することで既得権層に反乱を起こしていると考えた彼の支持者たちも賛同しないだろう。

しかし、こうした官民で豊富な経験を持つ実力者がいれば、政権移行チームが切実に必要としているプロフェッショナリズムを得るだろう。もっとも、偏見と暴力的な言動に彩られた選挙運動を進めてきた政治家のために、自身の個人的ブランドを貸し与えようとする人がいるかどうかは分からないが。

──関連記事:トランプ次期政権、主要ポストの候補者たち

だが、ダイモン氏をはじめ、官民部門、国防や情報コミュニティに所属する適格な人物にとって、その発想がいかにおぞましいものに思えようと、自分たちの国、いや世界全体を支えていくには、彼らが自尊心を抑え、鼻をつまみながらトランプ政権に参加するしかないのだ。

トランプ氏は、その規模は未公表であるものの個人的な資産を築き上げ、熟練の政治屋であるヒラリー・クリントン氏を打ち負かした。だが、これまで大統領執務室を占領し、世界の基軸通貨であるドルと米核兵器の解除コードを手にした歴代の大統領のなかでも、このニューヨークの不動産デベロッパーは圧倒的に経験が乏しい人物である。

こうなると、世界屈指の才能を集めて、トランプ氏が米国官僚機構を運営し、政策の細部を詰める手伝いをすることが歴史的な急務となる。好奇心が欠落したトランプ氏は、そういう意欲も能力も示しておらず、実績も伴わないからだ。

この情けない現実を前提とすると、米国経済の没落を防ぐ最大のチャンスは、ビジネス界での成功が実証されている民間企業式のアプローチをトランプ氏が採用することにあるのかもしれない。つまり、トランプ氏は取締役会長のように振る舞い、トランプ・オーガ二ゼーションにおいてホテル経営のプロや建設事業者に対してやっていたのと同じように、過去に例がないほど政権幹部に権限を委譲するのである。

別の可能性は先が読めない。つまり、二流の雇われ屋、白人至上主義の右翼過激主義者や選挙期間中からの取り巻きを集めた中央集権色の強いトランプ政権では、計り知れないほどの地政学リスク、そして金融リスクを生むことになるだろう。

こうした不幸な顔ぶれでは、下院と上院の主導権を同じ共和党が握っているとはいえ、選挙期間中にトランプ氏が示したアイデアのうち、いくつかの比較的まともなものでさえ、議会と協力して立法化することが困難になるだろう。

クリントン候補に投票した米国民の過半数は賛成しないだろうが、トランプ氏は13日、大統領首席補佐官として共和党全国委員会のプリーバス委員長を指名したことにより、優れた人材を集めるには妥協する必要があるという理解を示している。

ゴールドマンサックス(GS.N)のパートナーを経て、ニュースメディアに見せかけたプロパガンダ・サイト「ブライトバート・ニュース」を立ち上げたスティーブン・バノン氏よりもプリバス氏を優先させたことになる。

これは中道派にとってちょっとした勝利だ。首席戦略官・上級顧問となるバノン氏は、全米ライフル協会のウェイン・ラピエール氏などのロビイストたちを「リンカーン・ベッドルーム」に宿泊させることはできるだろうが、大統領執務室へのアクセスを管理し、数百名ものスタッフを監督するのはプリーバス氏だ。

またプリーバス氏は、統治に関してトランプ「会長」のもとで共同CEOの役割を担うと思われる2人の政治家、すなわち同じくウィスコンシン州出身のポール・ライアン下院議長、マイク・ペンス副大統領、さらには民間企業でいえば副会長に当たるミッチ・マコネル上院院内総務とも強い人脈がある。

大統領への意志決定の集約と閣僚の権限縮小という点で、オバマ大統領やジョージ・W・ブッシュ前大統領の先例にならうかどうか、トランプ氏はまだ決めていないようだ。だが、プリーバス氏をバノン氏より優先したところを見ると、次期大統領は、税制、移民、インフラ整備といったさまざまな公約を現実の政策として結実させるには、議会との強い絆が必要になることを分かっているようだ。

だが、次の一手はもっと難しい。財務長官、国務長官、国防長官などについては、現在さらに印象的な名前が取り沙汰されているが、プリ―バス氏が入閣したことは、こうした面々を集めるうえで助けになるだろう。しかしそうした優秀な人々が、最高司令官たる大統領の気まぐれに振り回されないという保証はない。また彼らは、すでに二流の人材がひしめき合っている船に乗り込みたいとは思わないだろう。

実際、主要閣僚の指名作業は、印象的で驚きを伴うものでなければならなないだろう。すると、冷笑的なリアリティ番組の出演者となるためにアラスカ州知事を辞任したサラ・ペイリン氏の内務長官、「9.11」同時多発攻撃に対処したニューヨーク市長としての名声を捨てて選挙運動用の毒舌家に成り下がったルディ・ジュリアーニ氏の司法長官、エジプトのピラミッドは王墓ではなく穀物倉として建設されたと主張する神経外科医ベン・カーソン氏の保健社会福祉長官といった人事は差し控えることになる。

トランプ氏の当選に対する彼らの献身に報いるには、それぞれロシア、バチカン、エジプトの大使に任命する方が良さそうだ。

信頼に足る経歴を持ちつつ、それにもかかわらず選挙期間中にトランプ氏が示してきた破壊的で異例の発想を支持してくれるような閣僚候補を集めれば、トランプ氏は、米国史上最も幼稚で自制心のない大統領であるという評価を乗り越える力を示すことになる。

そして、強く求められている倫理的・経験的なチェック・アンド・バランス機能を政権に多少なりとも盛り込むことができれば、「米国を偉大に」する道を、ある程度前進することにもなるだろう。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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