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特別リポート:口論や別れ、米大統領選の「癒えない傷痕」
2017年2月10日 / 01:55 / 7ヶ月前

特別リポート:口論や別れ、米大統領選の「癒えない傷痕」

 2月7日、米国を二分した激しい選挙戦を経て誕生したドナルド・トランプ政権。渦巻く熱気の中で行われた今回の選挙は、国の分断を招いただけでなく、対立する双方の人々の心にいまだ癒えない深い傷痕を残した。写真は2016年11月、民主党ヒラリー・クリントン候補の選挙集会に参加した少女(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)

[ワシントン 7日 ロイター] - 米国を二分した激しい選挙戦を経て誕生したドナルド・トランプ政権。渦巻く熱気の中で行われた今回の選挙は、国の分断を招いただけでなく、対立する双方の人々の心にいまだ癒えない深い傷痕を残した。

カリフォルニア州の刑務所を退職した元警備員のゲイル・マコーミックさんにとって、その痛みは特につらいものだった。22年連れ添った夫と別れたのだ。

マコーミックさんは「社会主義者に近い民主党員」を自称するが、昨年友人とのランチの席で、夫がトランプ候補に投票するつもりだと気軽に口にしたことに仰天した。彼女の言葉を借りれば、それは「関係決裂」にも等しいショックだった。

「夫がトランプ候補に投票するかもしれないと思うと、本当に打ちのめされた」と73歳のマコーミックさんは語る。それまで、保守的な共和党員の夫と別れようと考えたこともなかったが、彼がトランプ候補を支持することは「裏切り」だとさえ感じたという。

「これまで自分自身をごまかしてきたような気がした」と彼女は言う。「私たちのあいだに、これまで見たことのない距離ができた。若い頃には決して許せなかったことを受け入れるほど、ひどく年老いてしまったのだと感じた」

現代の米国政治史上、最も激しい対立を引き起こした今回の大統領選によって、人々は家族との絆を失ったり、人間関係を傷つけたりした。あれから3カ月を経た今でも、多くの米国民が受けた精神的な傷はヒリヒリと痛んでおり、それが癒える兆候も見えないという。

近年の選挙時とは異なり、今回生まれた感情的な対立は解消しておらず、ロイター/イプソス調査によれば、さらに悪化している。共和党支持者と民主党支持者の亀裂が広がり、政治的信念や思想が硬直化しているのだ。これにより政府への不信感が高まり、政治的妥協がさらに困難になるだろうと社会学者や政治学者らは指摘する。

米大統領選が人々に残した傷痕

米大統領選が人々に残した傷痕

12月27日から1月18日にかけて、6426人を対象に実施されたロイター/イプソス調査では、「家族や友人と政治に関して論議した」との回答が、選挙戦が最高潮を迎えた10月調査の33%から6ポイント増えて39%に達した。

「選挙が原因で家族や友人との会話がなくなった」との回答は、前回の15%から16%へと増えている。民主党ヒラリー・クリントン候補に投票した回答者のあいだでは、その割合が22%とさらに高くなっている。全体では、選挙によって家族あるいは親友との関係が終わったと13%が回答しており、こちらも10月調査の12%から上昇した。

「とても苦しかった」。オハイオ州メイフィールドハイツのトラック運転手、ロブ・ブルネロさん(25)はそう振り返る。トランプ氏を応援したことで、友人や家族の反感を買ってしまったのだ。

「みんな誰もトランプ候補がヒラリー候補に勝てるとは信じていなかった。その現実に対応しようと苦しんでいる」

今回の調査結果についてホワイトハウスにコメントを求めたが、回答は得られなかった。

<対立のなか、新たな友情も>

他方、大統領選は人間関係に影響しなかったと回答する人も多い。同調査では、約40%は選挙について、家族や友人と論議しなかったと回答している。

また今回の選挙をきっかけに、相当数の人々が新たな関係を築いている。選挙を機に、21%が今まで知らなかった人と友達になれたと答えている。ただしこの調査では、それが他党支持者との交流かどうか等の詳細はカバーしていない。

イリノイ州イーストゲールズバーグの年金生活者サンディ・コービンさんは、クリントン支持という共通点がきっかけで親しくなった新たな友人数人を訪問したと語った。

「今ではしょっちゅう、おしゃべりしている」と彼女は言う。「あの選挙のおかげだと言える」

トランプ大統領が先月20日に就任して以来、選挙期間中の熱気は街路にもあふれだした。就任式の翌日には数十万人が抗議デモに繰り出した。イスラム圏7カ国からの渡航者に対する入国制限措置を大統領が発令したことで、新たな抗議デモも活発化した。

 2月7日、米国を二分した激しい選挙戦を経て誕生したドナルド・トランプ政権。渦巻く熱気の中で行われた今回の選挙は、国の分断を招いただけでなく、対立する双方の人々の心にいまだ癒えない深い傷痕を残した。写真は2日、選挙をめぐって22年連れ添った夫と別れたゲイル・マコーミックさん。ワシントン州ベリンガムの自宅で2日撮影(2017年 ロイター/Tim Exton/ReutersTV)

トランプ大統領について論じることが、多くの米国民にとっては「苦い現実」となっているようだ。

「私がトランプ氏に投票したことが分かると、色々なものが飛んでくる」と語るのは、フィラデルフィアの元警官ウィリアム・ロメーさん(64)。幼馴染の友人とは、選挙をめぐりフェイスブック上で衝突して以来、話をしていないという。

「いくつか質問したら、それが気にくわなかったようで怒り出し、ひどいメッセージを送りつけてきた。それ以来、話をしていない」

ロメーさんによれば、彼の友人はゲイで、トランプ氏が選挙戦中に時折、ムスリムやヒスパニック、移民、障害者などのマイノリティ・グループに対して侮辱的な物言いをすることを懸念していたという。

「皆、興奮しすぎだと思う」とロメーさんは言う。

オハイオ州デントンのスー・コレンさん(57)はクリントン候補を支持していたが、トランプ候補を支持していた2人の息子とは、ほとんど話もできなくなったと言う。フェイスブック上でも、彼女はトランプ氏を支持する「多分50人くらい」を友達登録から外してしまった。

「選挙前とは違う生活になってしまった」と彼女は語る。「それは私の怒りであり、いらだちであり、不信感だ。彼らは今の大統領をヒーローだと思っているが、私は狂人だと思っている」

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ニューオーリンズでラジオのドキュメンタリー番組を制作しているジョージ・イングマイアさん(48)は、父親が自殺したときに支えてくれた叔父との親密な関係が壊れてしまったと語る。叔父がトランプ氏を熱心に支持していたためだ。

「何度か堂々めぐりの議論をしたが、深く入り込んでしまい、実に見苦しいやり取りになってしまった」とイグマイアさん。「いつか仲直りできるとは、とうてい思えない」

<フェイスブック上でケンカ>

個人的な論争の多くはソーシャルメディア上で起きている。ロイター/イプソス調査では、選挙が原因となって、家族や親友をソーシャルメディア上でブロックしたとの回答が17%に達した。10月の調査から3ポイント増加している。

デラウェア州出身の不動産仲介業者で、黒人の共和党支持者でもあるレシャンダ・ロートマンさん(35)は、ソーシャルメディア上で、かつての同僚や旧友との縁を切った。

彼らがトランプ候補を支持しており、黒人に対する暴力や人種差別に反対する「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)」運動を批判していたからだ。

「選挙やブラック・ライブズ・マター運動について、人前で公然とケンカを売ってくる人には出会ったことがない。フェイスブック上でだけだ」とロートマンさんは言う。ロートマンさんは、緑の党のジル・スタイン候補に投票した。

冒頭で紹介したマコーミックさんの夫は、結局、トランプ候補に対する考えを改め、11月の本選ではギングリッチ元下院議長の名を書いた。だがその頃すでにマコーミックさんは夫からの独立を決めていた。

夫婦はバカンスを一緒に過ごす予定であり、離婚する予定はない。「離婚するには年を取りすぎた」からだという。しかし彼女は先日、ワシントン州ベリンガムで独り暮らしを始めた。

「結局のところ、四六時中、自分の意見を主張しなければならないような状況から逃れる必要があった。そんなことのために残りの人生を費やしたくはない」と語る彼女は結局、サンダース上院議員(バーモント州選出)に一票を投じた。

旅行会社のオペレーターを引退したミズーリ州セントチャールズのデニス・コナーさんは、トランプ候補を支持していたが、クリントン候補を支持する兄弟姉妹たちとは対立を避けるようにしたという。

彼はこうアドバイスする。「政治の話をする必要などない」

(翻訳:エァクレーレン)

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