Reuters logo
コラム:嘘か真か、トランプ流「ツイート砲」がメディアを圧倒
2016年12月7日 / 03:25 / 1年前

コラム:嘘か真か、トランプ流「ツイート砲」がメディアを圧倒

[2日 ロイター] - ドナルド・トランプ次期米大統領はメディアに対抗する最終兵器を発見した。140字のツイートを活用し、「第4の権力」であるジャーナリズムを無視すればいいのだ。この強烈な政治的パワーによって、少なくとも、メディアの発行部数や視聴率はさらに減少し、無力な存在へと近づくだろう。

 12月2日、ドナルド・トランプ次期米大統領(写真)はメディアに対抗する最終兵器を発見した。140字のツイートを活用し、「第4の権力」であるジャーナリズムを無視すればいいのだ。写真はニューヨークで9月、討論会でのトランプ氏の映像を録画する記者(2016年 ロイター/Carlos Barria)

その直近の事例が、「自分が一般投票で敗北したのは広範囲の不正のせいだ」とするトランプ氏によるツイッター上のツイート(つぶやき)を報じたジャーナリストに対する攻撃だ。

CNNのジェフ・ゼレニー記者はトランプ氏を「態度の悪い勝者」と評し、次期大統領による不正選挙の主張を裏付ける「証拠は皆無」と報じた。トランプ氏は一連のツイートとリツイートでこれに反撃し、どちらも数日にわたりネットで反響を呼んだ。(ホワイトハウスや州当局者らは、広範囲で不正が行われたという主張が虚偽であることを証明したが、トランプ氏は自身の主張の証拠を提供していない)

ジャーナリストたちは、トランプ氏の愚かさを示す例として彼のツイートを嘲笑的に扱っている。またいつもの、めちゃくちゃなトランプ節だ、と。

だが、トランプ氏のポピュリストとしての魅力に選挙当日の夜まで気づいていなかったように、メディアは今、ソーシャルメディアを介して駆使する同氏の大衆的なパワーを見逃している。これは冗談ではない。すでに信頼性がお笑いぐさになっているジャーナリストは例外かもしれないが。

オバマ大統領は、オンラインでの資金集め、卓越したデータマイニング、24時間の切れ目ないニュース提供という点が評価されて、史上初の「インターネットから生まれた大統領」の称号を得た。しかし彼の取り組みの大半は実質的に、テクノロジーを使って、政治家がこれまで常にやってきたことをより迅速かつ巧妙にこなしただけである。

トランプ氏は、もっと大きな果実をネット上に見出した。

彼は実際のところ、ジャーナリストをそれほど必要としていない。トランプ氏にとってソーシャルメディアは、他の政治家たちがやっているような、単に政策表明を貼り付けておくための掲示板ではない。

ソーシャルメディアを使えば、トランプ氏は「すべて」を迂回して、直接1人1人の市民に語りかけることができる。そうなれば、いわゆるコンテンツ探しに忙しい従来のメディアは彼の発言を増幅せざるをえない。トランプ氏がツイッター上で独自スクープとしてニュースを発信する昨今、実はもはやニュースなどというものは存在しないのだ。こうしてメディアは守勢に立たされている。

放っておけば自滅すると考え、メディアがトランプ氏のツイートを無視すればどうなるか──。広告主にとって何よりも大事なオーディエンスは、独自にツイートを読みに行き、自ら発信することができる。

多くのジャーナリストが今回の選挙を正確に報じるという点で歴史的な失敗を犯し、メディアの信頼性がすでに疑問視されている現在、多くのオーディエンスが、何らかの形で情報源に直接当たることを好むとしても不思議はない。

いったいメディアは、彼らの殻の外側に対して、自分たちがどれほどの影響力を持っていると考えているのだろうか。なるほど、報道すべきものとして、まだ天気予報とスポーツは残ってはいるが。

記録に残る大統領は皆、その任期中に、何らかのレベルでメディアに対する軽蔑を表明している。だが、本当の意味でメディアを無視し、怒らせることのできた大統領は過去に存在しない。もちろん、メディアに影響を与えることはできる。大統領がある記者には美味しいネタをリークし、別の記者は無視することもあるだろう。だが結局のところ、メディアと大統領はそれぞれの仕事を遂行するためにお互いの存在を必要としていた。

かつて、次期大統領たる人物は、ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストを叱責する際には慎重にならざるを得なかった。さもなければ、社説で何を書かれるか分かったものではない。

だがトランプ氏は記者たちを軽蔑的に扱う。彼らに何か価値のあることができるとすれば、自分の発言をリツイートすることくらいだと思っているからである。CNNのゼレニー記者が何を考えているかなど、誰が気にするだろう。そもそも、ツイッターで何人が彼をフォローしているというのか。(ゼレニー記者のフォロワーは現在13万6000人、トランプ氏は1640万人)

またトランプ氏は、ネットの論理というダークな技術をマスターしている。彼のツイートは、何かのブログのコメント欄のように見えることがよくある。真実かどうか根拠のない大胆な発言をして、自分が間違っていることを立証する義務を反対者に押しつけてしまう。事実ではなく、出典を問題にする。たとえば、クリントン氏寄りのメディアが報じているのだから、それは真実であるはずがない。個人攻撃をする。敵はCNNではなく、ゼレニー記者個人だ、など。

その後は一歩退いて、場合によっては殺人の脅迫に至るまで、何が起きようと自分の責任を否定する。有識者とやらが、プライドを傷つけられて、人民の守護者気取りの何かを書いてきたらどうするか。メディアの傲慢さとエリート主義の新たな例だとレッテル貼りしてやればいい。

さらに次期大統領は、話題を変えていくことの価値を知っている。どんな政策文書も口コミで急速に広まったことはない。

ソーシャルメディアにおける「トランプ流」は、思いのままに議論のテーマをコントロールする、前例のないパワーを見せている。

これなら、好意的な編集者に提灯記事を書いてもらう必要もない。面倒な記事が出たら、いくつか爆弾発言をして、トランプ氏のスケジュールに関する会話を変えてしまえばいい。ミュージカル「ハミルトン」に対する乱暴な発言を誰も気にしてくれないようだったら、もっとひどい暴言をツイートすればいい。たとえば、国旗を焼く者から市民権を取り上げるべきだ、など。

トランプ氏がやっているのはコミュニケーションではない。決闘である。それも、まさに、リアルタイムの決闘だ。トランプ氏が午前3時に耳障りなツイートを発信することも珍しくない。

「友達」「フォロワー」「シェア」といった仕組みに依拠するソーシャルメディアが、トランプ氏と個々の米国民のあいだに個人的な絆を生み出しているという面もある。ルーズベルト元大統領が大恐慌期に試みた「炉辺談話」以来、現実には見られなかった関係だ。

かつて、このラジオ番組によってルーズベルト元大統領が家庭に直接語りかけたように、トランプ氏のツイートによって、彼の政策や意見、暴言が、格好の話題のネタとしてフィードに流れてくる。これによって親しみやすさが生まれ、それに伴って、信頼感も増していく。

そして、誤解してはならないのは、大半の政治家が機械的にソーシャルメディアに発信するのに対し、トランプ氏のツイートは本人が発信しているということだ。あなたに語りかけているのはトランプ氏自身なのである。人々はウェブ特有のくだけた語調で一人称を使って返信し、トランプ氏はフォロワーからのメッセージをリツイートする。そこではメッセージがメディアであり、トランプ氏が両方を兼ねているのだ。今日、これほどうまくソーシャルメディアを活用している政治家はいない。リアルで、有機的で、効果的でなければならない。

今後トランプ氏に対し、もっと「大統領らしく」なるようソーシャルメディアでの発言を和らげるべきだと助言する人は多いだろうが、彼がそれに同意するとは考えにくい。ソーシャルメディアは強力なツールだ。選挙でも大きな役割を果たした。トランプ氏はソーシャルメディアによって、伝統的なメディアと関わりたいと思えば、その方法と時期を選べるようになった。

大統領がいつどのような方法で公衆とコミュニケーションを取るべきかを決める法律や規則は存在しないし、実際にオバマ大統領のツイッターアカウントやホワイトハウスのツイッターアカウントはすでにある。トランプ氏がコミュニケーションを取りたければ、機密情報を伴う通信とは切り離された、独立の専用デバイスを使ってツイートすればいいだけの話だ。

これだけの有利な点があり、トランプ氏が大統領であると同時に、そう、トランプ氏自身でもあるとすれば、もっと発言を慎む方が彼の利益になるなどと、いったい誰が主張できるだろうか。

*筆者は米国務省に24年間勤務。近著に「Ghosts of Tom Joad: A Story of the #99 Percent」など。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」
0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below