アルゼンチンペソ安回避も「悪夢」消えず、金融市場は厳しい評価

2008年 07月 11日 14:20 JST
 

 [東京 11日 ロイター] アルゼンチンペソ売りの混乱がひとまず回避された。政権抗争のあおりでペソ安圧力がかかっていたが、アルゼンチン中銀が積極的にドル売り/ペソ買い介入を進めたからだ。ただ、通貨危機から6年半、2002年の「悪夢」はいまだ払拭されておらず、国際金融市場では厳しい目が向けられている。

 37歳のマルティン・ロウスタウ経済生産相が、就任後5カ月足らずで辞任したのは4月24日。ロウスタウ氏の起用は昨年12月に発足したクリスティナ・フェルナンデス・デ・キルチネル政権の目玉人事だったが、フェルナンデス前大統領(クリスティナ大統領の夫)時代から留任している他の閣僚との対立が表面化。大豆輸出税引き上げをきっかけとした大規模な農業関係者による抗議行動や物価上昇を招いたとして責任を取った。アルゼンチンは世界の農産物輸出の3%を占める農業大国。農業団体は大豆輸出税に反対して抗議活動を実施、反政府デモに発展している。

 政府の市場介入の制限や財政支出削減の面で期待されていたロウスタウ氏の辞任劇に、国際金融市場は敏感に反応した。ロウスタウ氏が正式に辞任した翌日、債券市場は寄り付き直後に1.2%下落。辞任は事前に予想されていたが、それが現実になると一段の不安を引き起こした。一方、国民は政情不安が金融不安に発展すると読み取り、リスク回避のためにペソ預金を取り崩してドルに交換する動きが広がった。4月22日には、2003年以来の安値圏に下落、一時1ドル=3.18950ペソを付けた。

 ところが、ペソはややもみあった後、2005年12月以来の高値圏に急上昇する。政情不安をきっかけとしたペソ暴落を回避し、また世界的に広がるインフレが国内に波及するのを抑制するため、アルゼンチン中銀が大規模なドル売り/ペソ買い介入に踏み切ったからだ。日本貿易振興機構(JETRO)の資料によると、外貨準備高は5月中旬の約500億ドルから6月初旬には約480億ドルに減少した。この間、ペソは3.185ペソ付近から3.1ペソ付近に上昇した。2002年の通貨危機では1ドル=1ペソから切り下げられ、混乱から回復した後は3ペソ挟みの展開だ。邦銀関係者は当面は「3.0―3.1ペソのレンジで推移する」との見方を示す。

 HSBCが各国中銀のデータをもとにまとめた資料によると、2007年のアルゼンチンの実質国内総生産(GDP)成長率は8.7%と、パナマ、ペルーに次いで中南米では3位。2001年、2002年当時と比べれば外貨準備高が増え、2003年から経常収支も黒字化した。通貨危機などの懸念は「現時点で考えられない」(邦銀)とみられている。しかし、外貨建て長期ソブリン格付けは中南米17カ国中13位と低い。

 HSBCによると、中南米経済は2001年から2002年に米国経済の後退の影響を受けたが、2003年には急回復しはじめ、2004年―2007年のGDP成長率は5.3%に達したという。ベネズエラのチャベス大統領をはじめ、個性豊かな各国指導者の強力なリーダーシップで経済成長を遂げた。JETRO中南米課課長代理の二宮康史氏は、「南米諸国は政治が市場をダイナミックに動かす」と指摘する。

 クレディ・アグリコール・アセット・マネジメントで、ラテンアメリカ・ファンドの運営にかかわっているプロダクト・スペシャリスト、ステファン・モーピン・ヒガシノ氏は6月23日、ロイターとのインタビューで、中南米諸国への投資に関して、ブラジルの投資比率でオーバーウェートを推奨している。チリについては、ブラジルのような「経済的活力」に欠けるとし、メキシコについては景気減速に見舞われている米国に引きずられる可能性があると指摘した。アルゼンチンに対しては「市場シェア、上場企業数の観点からすると、落ち目の市場だ」と特に悲観的だ。

 また、モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)バーラは6月18日、MSCI新興市場指数構成国の分類替えを行うと発表した。ヨルダンの分類を新興市場からフロンティア市場(株式市場が未発達な経済新興国の市場)に格下げし、アルゼンチン、コロンビアの2国については同様な格下げを行うか検討するとしている。  続く...

 
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