〔焦点〕リスク回避の姿勢強める大手銀、稼ぎ頭見出せず

2008年 05月 20日 21:02 JST
 
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 [東京 20日 ロイター] 世界的なクレジット市場混乱の影響が、邦銀グループにもじわりと影響し、収益環境に不透明感が漂っている。20日に出そろった大手銀行グループ8社の2009年3月期業績予想は、当期利益ベースで前年比大幅増益の計画となったものの、本業のもうけを示す業務純益ベースは微増にとどまる。欧米の大手銀行が証券化商品の損失で不振を極める中、海外への積極展開や投資銀行業務の拡大などメガバンクは積極路線を志向したものの、サブプライム(信用度の低い借り手向け住宅融資)問題で予想外の損失を出し、リスク回避姿勢を強めつつ、稼ぎ頭を見出せない経営が続きそうだ。

 <海外展開は慎重姿勢に、萎縮する邦銀>

 「地道な成長を目指していく」――。みずほフィナンシャルグループ(8411.T: 株価, ニュース, レポート)の前田晃伸社長は決算会見で、何度も繰り返した。09年3月期の当期益見通しは前年比79.9%増の5600億円と一見、大幅増益に見える。だが、08年3月期の当初計画7500億円と比較すると控えめな数字。08年3月期の証券化商品関連損失はグループ全体で6450億円に上り「さすがに強気の成長路線は示せない」とみずほ関係者は指摘する。

 特に打撃が大きかったのはみずほコーポレート銀行(CB)。子会社のみずほ証券が4000億円超の損失を出した結果、5年ぶりの赤字に追い込まれた。邦銀の中で唯一、米国でFHC(金融持ち株会社)の資格を取得。銀行業務だけでなく証券業務も手掛けられるようになり、金融商品のオリジネーション(組成)やディストリビューション(販売)などの投資銀行業務をグローバルに強化する方針も打ち出していた。前田社長は「リスクをどこまで取るのか見直して、取れるリスクを小さめにした」と路線変更を示した。グループのある幹部は「グローバル展開は時の流れだが、リスク管理態勢を構築し直す必要があり、今後の展開を見極めなければならない」と語り、国際業務の成長戦略は見直しが迫られるとしている。

 慎重姿勢は、みずほだけではない。欧米金融機関の貸し渋りを踏まえて、三井住友フィナンシャルグループ(8316.T: 株価, ニュース, レポート)の北山禎介社長は「海外で相対的にオペレーションがしやすくなっている」と述べ、業務粗利益に占める国際業務部門の割合を前期の9%強から09年3月期に10%超へと増やす方針を明らかにした。海外向け貸出は1.5兆円を積み増しし、100億円の増収を図る。

 しかし、08年3月期に積んだ海外向け貸出2.5兆円、増収額212億円と比較すると伸びは半分に届かない。会社側は欧米での金利低下によるスプレッドの縮小などが見込まれるとするが、邦銀の「リスク回避の姿勢が強まっている」とみる銀行担当アナリストもいる。

 金融当局のある幹部は「人も金もちょこっと出すのが邦銀流のやり方だった。しかし、それでは欧米金融機関に追いつけない」と指摘する。「リスクを回避するだけでなく、リスクをマネージする必要がある」と注文を付ける。

 <中期経営計画にも暗雲漂う>

 クレジット市場の混乱は、各銀行グループがまとめている中期経営計画にも暗雲をもたらしている。三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306.T: 株価, ニュース, レポート)は、2010年3月期に当期利益1兆1000億円を目指している中期経営計画を年内に見直す作業に入る方針を表明。畔柳信雄社長は「今年末から見直しの作業に入る」と述べた。

 三井住友FGは中計で、10年3月期の当期利益水準を08年3月期比40.8%増の6500億円と見込んでいる。北山社長は日銀の金利引き上げの前提が狂ったとしながらも、トレジャリー部門のカバーなどを期待して「計画を変える段階には至っていない」と述べたが、実現は厳しくなっている。

 みずほFGが今年春にまとめていた中期経営計画は、数値目標を盛り込む作業を中断。前田社長は「作成の過程で前提条件を3回変えた。3年先の数字を自信を持って言える環境ではない」と説明、邦銀を取り巻く経営環境の先行きに不確実性が高まっていることを示した。

 欧米銀の投資銀行業務は、サブプライム問題の直撃を受け、収益の稼ぎ頭から一転して、多大の損失を蒙る部門に転落。新たなビジネスモデルを構築できず、立ちすくんだままだ。この欧米銀の苦境を横目に、収益の拡大をもくろんでいた大手銀は「大したことはない」とたかをくくっていたサブプライムで足をすくわれ、再び、リスク過敏症に陥りつつある。

 世界のマネーマーケットは、リスクマネーが資源や農産物などコモディティに流れ、それを金融商品として取り扱って利益を出そうという参加者が増えてきている。そうした最先端の流れとは別世界に生き「欧米金融機関に対して周回遅れの収益力」(金融庁幹部)とされる邦銀グループは、独自の投資銀行ビジネスの構築に向けて手探り状態だ。

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 (ロイター日本語ニュース 布施太郎記者;編集 田巻 一彦)

 
 

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