〔アングル〕ドル/円が7年ぶり5カ月連続陽線、米企業買収による資金流入も下支え

2008年 08月 29日 12:10 JST
 
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 基太村 真司記者

 [東京 29日 ロイター] ドル/円JPY=が7年ぶりの5カ月連続陽線を記録することがほぼ確実となった。世界的な景気減速を背景に米国をめぐる過度の悲観論が後退する形でドルの買い戻しが続いていることが主因だが、これまでの米株安やドル安で割安感の出てきた米企業に対する買収が増加、その関連フローがドルを支えている側面もある。ただこのままドルの急ピッチな上昇が続くとの見方は少なく、逆に調整リスクの高まりを指摘する見方が増えている。

 <「8月は円高」ジンクス崩れる>

 8月1日のドル/円は107.85円(ロイターデータ)で、29日正午現在は109.12円。月末の水準が月初を上回る「陽線」となるのは、これで5カ月連続。2001年9月から02年1月にかけて5カ月連続陽線を記録して以来、およそ7年ぶりのことだ。

 為替市場では、8月は円高に振れやすい月との認識が一般的。米国債の四半期入札に伴うまとまった償還・利払いで円転フローが出やすいこと、国内投資家の休暇入りで日本から海外への投資フローが減退しやすいことなどが背景で、過去10年間に8月の値動きが陽線となったのは2006年の一度だけ。今年は2年ぶりにそのジンクスも崩れた。

 <「米企業買い」で高まるドル需要>

 今回のドル上昇の主因は、米以外の国・地域の急速な景気減速感の高まりにあるとされる。第2・四半期の国・域内総生産(GDP)はユーロ圏で95年の統計開始以来初のマイナス成長、英国でも16年ぶりのゼロ成長を記録。資源高に沸いていた豪州でも足元景気の急減速から利下げ観測が高まっているほか、アジアでも香港が予想外のマイナス成長、ベトナムでも成長率は政府目標を下回る見通しが示されるなど、各国景気はここにきて急ブレーキ。売り込まれていたドルを買い戻す一方、ユーロや豪ドルなどを柱に、これまで買われてきた通貨を売り込む「グローバルリセッションを織り込む動き」(都銀の外為関係者)が鮮明となっている。

 加えて市場では最近、ドル上昇の一面として、米企業買収に伴うドル需要の高まりを指摘する声が出ている。サブプライムモーゲージ(信用度の低い借り手向け住宅融資)問題をきっかけに、米ダウ工業株30種.DJIは昨年10月の高値から今年7月の安値まで2割超下落。今年年央にかけて主要6通貨に対するドルの値動きを示すドル指数.DXYは15年ぶりの低水準をつけるなど株価・通貨ともに下落が進んだことで、米企業の割安感が強まり、買収や出資案件が増えている。

 米国では数多くの大手金融機関に対する各国政府系ファンドの出資だけでなく、4月に米ミレニアム・ファーマシューティカルズMLNM.Oが88億ドルで武田薬品工業(4502.T: 株価, ニュース, レポート)に、7月にはビール大手のアンハイザー・ブッシュ(BUD.N: 株価, 企業情報, レポート)がベルギーのインベブINTB.BRに500億ドルで買収されるなど「これまで買う側だった米企業が買われる側に回る」(邦銀の外為ディーラー)例が目立ってきた。

 みずほコーポレート銀行・シニアマーケットエコノミストの福井真樹氏の集計によると、米企業のクロスボーダーM&A取引額は、今年8月半ばまでの差し引きでプラス1568億ドル。米国がまだ「買う側」にいた前年は、1―12月でも米国企業による他国企業の買収額が米企業に対する買収額を上回るマイナス265億ドルだった。「『米企業買い』がドルの上昇を支える一因」(福井氏)といい、日々の為替取引の中でも「案件が大きくないものも含めれば、FDI(海外直接投資)関連フローはかなり増えている」(在京外銀の為替関係者)。

 <高まるドル反落リスク>

 一方で、ドルの上昇が急ピッチとなってきたことで、市場では調整リスクを指摘する声も増え始めた。ドルは月足ベースで5カ月連続の陽線を記録した01年から02年にかけて115円から135円まで20円上昇したが、その後7月までの6カ月間で115円まで20円反落。その前に7カ月連続陽線となった00年9月から01年3月も104円から126円まで22円上昇した後、9月には115円へ11円下落した。テクニカル分析を専門とする三菱東京UFJ銀行・市場分析チームの橋本将司氏も「一般的に考えて(ドル上昇の)反動は十分あり得る」と指摘する。

 参加者のポジションが大きくドル買いに傾いていることも、反落リスクが指摘される一因だ。投機筋のポジション動向の参考データとされる米商品先物取引委員会(CFTC)が22日に発表したIMM通貨先物の取組報告(8月19日までの週)によると、米ドルの主要6通貨(円、ユーロ、ポンド、スイスフラン、カナダドル、豪ドル)に対する買い越し額は151億6000万ドルと4週連続で増加。市場筋の推計によると、過去最大を更新した。対ドルで2年ぶりの安値を更新している英ポンドGBP=D4の売り持ちも、過去最大となっている。

 *現在のレートはAFX=、時系列のレートはJPNUTKYFXをご覧下さい。

 (ロイター日本語ニュース 編集 橋本浩)

(shinji.kitamura@thomsonreuters.com;03―6441―1791;ロイターメッセージング:shinji.kitamura.reuters.com@reuters.net)

 
 

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