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コラム:ドル115円回復は秋口にずれ込みか=池田雄之輔氏
2017年6月15日 / 03:45 / 4ヶ月前

コラム:ドル115円回復は秋口にずれ込みか=池田雄之輔氏

[東京 15日] - 6月14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、2015年12月以降で通算4度目となる政策金利引き上げが発表された。これは事前予想通りである。一方、最大の驚きは、9月会合で連邦準備理事会(FRB)のバランスシート(B/S)縮小政策を打ち出す可能性が強く示されたことだろう。

今回、B/Sを徐々に縮小させるペースについて具体的な数値が提示されたことに加え、イエレンFRB議長は着手するタイミングについて会見で「比較的早く」と述べた。

12月のアナウンスと見ていた市場予想に反し、FRBが早期にB/S縮小に動こうとしている背景には、早ければ8月にもトランプ大統領が指名する可能性がある次期FRB議長に介入されたくないという意向が働いたのではなかろうか。

いずれにせよ、9月会合でB/S政策が発表されることになると、追加利上げは12月会合にずれ込む可能性が高い。イエレン議長はB/S縮小発表と利上げを同時に行う可能性を否定しなかったものの、ダドリーNY連銀総裁は同時アナウンスを避けるべきと明言している。

もちろん、FOMCは7月、11月にも開催されるが、政策変更は議長会見付きの3の倍数月の会合に行われることはこれまで一貫しており、もはや暗黙のルールだろう。

<米インフレ率低下に歯止めがかかる可能性>

FOMCメンバーの政策金利想定の分布(ドットチャート)は、年内残り1回プラス来年3回の追加利上げがコンセンサスであることを示した。従来通りの強気の利上げシナリオであり、この点は市場には「タカ派」と受け止められただろう。

もう一方の注目点だったイエレン議長のマクロ情勢判断については、最近のインフレ率低下傾向に対し、「数カ月のデータに過剰反応すべきではない」「ノイズがある」「強い労働市場が続けばインフレ率は上昇するはず」と、楽観姿勢を崩さなかった。一方、5月の消費者物価指数(CPI)に関しては「多くのカテゴリーで弱さが見られた」とも認めている。

FOMC発表に先駆けて公表されたその5月CPIは、変動の大きい食品、エネルギーを除くコアの前年比がプラス1.7%と4月実績(同1.9%)を下回り、4カ月連続の低下となるサプライズだった。衣類、自動車を中心に財価格の弱さが目立った。

筆者は、1)昨年11―12月の急激なドル高の影響で輸入物価が押し下げられた影響の波及、2)税還付の遅れで1―3月の個人消費が大きく落ち込んだことによる値崩れ、が表れている可能性を疑っている。この説が正しければ間もなくインフレ率低下には歯止めがかかるはずである。14日に発表された小売売上(5月)は、前月値の上方修正を加味すれば堅調な結果だった。

<111―112円の回復は比較的容易>

14日のドル円は、米CPIの下振れに激しく反応して急落、FOMC発表直前には一瞬109円を割り込む場面もあった。その後はFOMCのタカ派姿勢によって持ち直したものの、上値は重い。

今回、FOMCが9月のB/S縮小発表を強く示唆したことにより、追加利上げの焦点となる会合は12月会合まで後ずれしてしまった。先物市場が織り込む年内利上げの残り回数は現在0.4回だが、これが明確に1に近づく時期は9月会合以降と想定せざるを得ない。利上げ期待の上昇に伴う115円回復のシナリオも秋口にずれ込んだだろう。

もちろん、現在のドル円は、先物市場での米利上げ期待(2018年末までに追加利上げ1.4回)との過去の相関に見合った水準(112円前後)から下方に乖(かい)離しており、ヘッジファンドなど短期筋の「下攻め」の影響を示唆している。小さなきっかけで投機ポジションの巻き戻しを誘発すれば、111―112円の回復は比較的容易だろう。上値を抑えるチャートポイントも重要なものは見当たらない。

ここからの注目点は、6月と7月の米インフレ指標が持ち直しを示すか、およびFRBのB/S縮小を前に米国株式市場が崩れないか、だろう。後者については金融政策に敏感なナスダック指数が、FOMC発表後に一時1%程度下落したものの、その後下げ幅を縮小したのは、まずは良いシグナルと言える。より基調的なグローバルマクロ環境の下支え要因としては、中国景気が持ち直しを示すことも必須条件となるだろう。

*池田雄之輔氏は、野村証券チーフ為替ストラテジスト。1995年東京大学卒、同年野村総合研究所入社。一貫して日本経済・通貨分析を担当し、2011年より現職。「野村円需給インデックス」を用いた、円相場の新しい予測手法を切り拓いている。5年間のロンドン駐在で築いた海外ヘッジファンドとの豊富なネットワークも武器。著書に「円安シナリオの落とし穴」(日本経済新聞出版社)。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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