[東京 30日 ロイター] -
<三井住友銀行 チーフストラテジスト 宇野大介氏>
米連邦公開市場委員会(FOMC)は4月27―28日の会合で、資産購入ペースを月額1200億ドルに据え置くことを決定した。パウエル議長は記者会見で、まだ資産購入の縮小について話す時期ではなく、「一段と顕著な進展を目にするまでしばらく時間がかかる」と述べた。
米連邦準備理事会(FRB)には、2013年5月に当時のバーナンキ議長が量的緩和の縮小を示唆し、金融市場に波紋が広がった「テーパータントラム」の苦い経験がある。
このため、テーパリング(量的緩和の段階的縮小)についてはあくまでも慎重に対処する方針で、今回も予告的なニュアンスは出さなかったと考えられる。
一方で、パウエル議長や他のFRB高官は、テーパリング開始から実際の利上げまではかなりの時間を要すると最近重ねて強調していることに鑑みて、FRBがテーパリングと利上げを切り離しつつも、「コロナ対策としての緊急避難的な超金融緩和」からの脱却を目論んでいることは確かだ。
6月半ばに開催される次回FOMCまで、FRBはこの点に関する市場とのコミュニケーションを深めていくだろう。
テーパリングの議論については、6月のFOMCから始め、早ければ9月から債券購入額の縮小を開始する可能性があるとみている。利上げは、来年11月の米中間選挙を意識して、年前半に開始される公算が大きいとみている。
ドル/円については、3月末につけた直近のピーク(110.97円)から、1カ月弱の期間はドル買いのアンワインド(ドル売り)が続いたが、FOMC前には早期テーパリングの思惑もあり再びドルが買い戻されていた。
しかし、FOMCがテーパリングの素振りを一切見せず、市場の思惑は肩すかしとなったため、また元のドル売りトレンドに回帰するとみている。
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