浜田寛子 [東京 15日 ロイター] - D2C(Direct to Consumer)」関連株が好調だ。 Amazonや楽天といったインターネット上の販売モールに依存せず、自社サイトから 商品を顧客に直接販売するため、利益率が高くなると期待されている。知名度を上げにく いのがデメリットだったが、SNSの活用などで利用者を拡大。ネットショッピングの活 発化もあり、今年の市場規模はコロナ禍でも前年比8%増の2兆2000億円に達すると の試算も出ている。 <SNSを活用> ベガコーポレーションでは2014年頃から自社サイトの開発に力を入れ始 め、現在は販売の約50%を占める。インテリア販売のLOWYA事業の売上高は、緊急 事態宣言が発出された4月は前年比162%となった。その後も、新型コロナウイルス感 染拡大による「巣ごもり需要」の高まりを背景に、前年比プラスで推移している。 同社の浮城智和社長は「Amazonや楽天で仲介手数料を取られるとコスト的にも 厳しく、5年ほど前から自社サイトの販売比率を伸ばす戦略に切り替えた」と話す。 D2Cのデメリットは、モールに比べて顧客の認知度を上げにくい点だが、同社では 、広告やマーケティングだけでなくSNSを活用。LOWYAのインスタグラムアカウン トのフォロワーは55万人を超える。 同社の株価は、日経平均が安値を付けた3月19日から10月9日まで6.9倍に上 昇。日経平均の42%を大きく上回った。 消費者のニーズがダイレクトに把握できるのもメリットだ。大手アパレル会社のオン ワードホールディングスは、今年2月末に女性向けのD2Cブラン「uncra ve」を立ち上げた。同社の常務執行役員、樋口剛宏氏は「インスタグラムなどSNSを 通じて顧客のリアルな声を聞くことができる」と話す。 <支援企業が充実> D2Cが広がる背景には、それを支えるインフラが整備されてきたこともある。sh opifyやBigCommerceなど直接販売サイトを支援するE Cプラットフォーム企業の充実だ。 野村総研・コンサルティング事業本部パートナーの倉林貴之氏は、これまでは物流や 決済の機能をAmazonや楽天が担ってきたが、D2Cをサポートする周辺企業が増え たことで、メーカーが独自にサプライチェーンやデマンドチェーンをコントロールするこ とができるようになったと分析する。 首都圏を中心に飲食店のチェーン展開を手掛ける俺の株式会社(非上場、東京都中央 区)は、今年4月に公式ECサイト「俺のEC」を開設し、パンの販売を始めた。「俺の フレンチ」など知名度があるため、手数料のかかるモールには出店せず、D2Cを選択し たという。 ECプラットフォームにはshopifyを採用。同社の常務執行役員、社長室長兼 経営企画本部新規事業開発部長の岩﨑菜乙美氏は「立ち上げから販売サイトのリリースま では1カ月程度しかかからなかった。顧客と接点を持てる点も自社サイトの魅力だ」と話 す。 <米国が先行> D2Cで先行する米国では、周辺企業の物価も上昇。shopifyの時価総額は1 189億ドル(約12兆円)に達する。BigCommerceの時価総額は66億ドル (約7000億円)に上る。 日本でもECマーケティングや広告事業を手掛けるピアラや、ECコンサル ティングを手掛けるMacbee Planetの株価が好調だ。「売れるネッ ト広告社」の調査によると2020年のD2C市場規模は、周辺企業を含め2兆2200 億円に上る。 立花証券・国際法人部課長の栗原一郎氏は「D2Cを支える周辺企業は、スタートア ップで最近上場した会社も多く、歴史が長い楽天などに比べて成長率も期待しやすい」と 指摘する。 D2C市場が拡大するという認識が投資家の間に広まり、ECプラットフォーム企業 にマネーが波及──。「米国では先んじてそうした動きみられるが、似たような動きは今 後日本でも起こるだろう」と、野村総研の倉林氏は話している。 企業名 分類 株価上昇 率 ベガコーポレーション <35 D2C企業ーインテリア販売、越境ECプ 6.9倍 42.T> ラットフォーム事業 北の達人コーポレーション D2C企業ー健康食品、化粧品、雑貨の企 1.1倍 画・開発・製造販売、通販事業 オイシックス・ラ・大地<3 D2C企業ーウェブサイト・カタログによ 2.4倍 182.T> る有機野菜、特別栽培農産物、無添加加工 食品等の販売 オンワードホールディング D2C企業ーアパレルの販売 0.6倍 ス BASE D2C支援企業ーウェブサービス企画・開 16.6倍 発・運営 ピアラ D2C支援企業ーECマーケティング事業 2.7倍 Macbee Plane D2C支援企業ーECコンサルティング事 2.2倍 t 業、マーケティング事業 楽天 ECモール運営企業ーECモール運営、メ 1.7倍 ディア事業、フィンテック事業等 ヤフー ECモール運営企業ーECモール運営、メ 2.6倍 ディア事業、検索エンジン事業等 .N225 1.4倍 *株価上昇率は3月19日と10月9日の終値ベース対比。 *Macbee Planetは上場日の3月31日からの比較。 (編集:伊賀大記、石田仁志)
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