[東京 26日 ロイター] - 自民党の山本幸三・元地方創生担当相は26日、ロイターとのインタビューに応じ、デフレ脱却に向けて物価2%目標と完全雇用を実現するためには、積極的な財政出動とそれに応じた日銀の国債買い入れ増が必要だと強調した。今年10月に予定されている10%への消費税率の引き上げについて、本来は延期すべきとしながらも、安倍晋三首相は増税を実施する可能性が高いとの見方を示した。
山本氏は、安倍政権の経済政策である「アベノミクス」の仕掛け人の1人。日銀による大規模な金融緩和を中心としたアベノミクスの推進によって「雇用が大きく改善し、株価も為替も妥当な水準に回復した。アベノミクスは大成功」と成果を強調した。
一方、「唯一で最大の失敗は2014年4月の消費税率の引き上げが早過ぎたことだ」とし、「デフレから完全に脱却してからやるべきだったが、(増税で)レジームチェンジが頓挫してしまった。それを再構築するのは難しく、今は実体経済を確実に良くしていくしか手がない」と語った。
具体策として、積極的な財政政策の発動と金融政策の協調が不可欠との見解を示した。物価2%目標が実現できていないのは、日本の失業率が本当の完全雇用状態になっていないためだとし、「もっと財政も金融も拡大する余地があるということだ。完全雇用に達すれば、物価も賃金も上がる」と主張。
日銀がイールドカーブ・コントロール(YCC)政策によって長期金利を「ゼロ%程度」の低水準に誘導している下で「もっと財政を拡大して、必要なことをやるべき。それで発行された国債は日銀が買えばいい」とした。
YCC政策の下で日銀の国債買い入れ額が減少していることに関しては、マネタリーベース拡大の鈍化につながり、「(密かに量的緩和を縮小する)ステルステーパリングになっており、中期的な円高要因だ。(今後は)もう少し円高・株安になる可能性がある」と懸念を表明した。
また、YCC導入で金融政策が「量」から「金利」に転換したことが、「よくなかった」と語った。
10月には消費増税が控えているが、実質賃金の動きが鈍い中で、昨年5月に安倍首相に対して増税延期を求めたところ、「『理論的にはあなたが正しいが、政治的にちょっと難しい。やるという前提で考えてくれ』という返事だった」とし、現在も安倍首相の考えは変わらないだろうとの見方を示した。
世界経済の減速懸念が広がっているが、2018年度補正予算と19年度予算が「かなり思い切った内容」となっており、その効果を見極める必要があると指摘。
そのうえで、これらの予算措置が「足りないということになれば、秋ごろに追加の財政出動を考えるべきだ」と語った。 (伊藤純夫 木原麗花 金子かおり 編集:田巻一彦)
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