[東京 23日 ロイター] -
<三井住友銀行 チーフストラテジスト 宇野大介氏>
ドル/円相場は、選挙前から衆院選の結果予想を反映した値動きとはなっておらず、衆院選後も、第二次安倍政権発足後のような円安傾向に回帰するとは考えにくい。
現在の安倍政権は円安指向を明示していないうえ、金融緩和拡大も公約には無く、代わって、生産性革命や人づくり革命といった抽象論が踊る。
安倍政権が2021年9月まで存続したとしても、消費税引き上げを控え、デフレ脱却がかなわない日本経済への信認回復は見込めず、日本株に海外勢からの追加的資金流入を期待できる状況ではない。
今後の為替市場では、「日米経済対話」「為替報告書」に透けて見える米国の本音のドル安指向や、米税制改革の行方、米政権スタッフの不協和音、米経済の実態といった米国発の材料が主要テーマとなるだろう。
トランプ政権は11月の来日に向けて、来年の中間選挙勝利に向けた舵切り、種まきをしてくるとみられる。ドルは反落リスクを内包したまま、年末にかけて110―115円のレンジを見込んでいる。 米国発の材料では、米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長の20日の発言が気になる。これまでの強気のトーンは鳴りを潜め、非伝統的な政策手段を発動できる体制を維持すべきと述べている。
9月にも同趣旨の発言をしているが、今回は、ある時点で政策金利を事実上の下限に引き下げる必要に迫られる確率は「不快なほど高い」、低インフレは予想外で「重大な懸念」と、踏み込んでいる。
事前にトランプ大統領と次期FRB議長を巡る面接に2度も臨んだ後でもあり、トランプ大統領に、タカ派な言動をいさめられたり、大統領が金融引き締めを望んでいないことを反映した発言であると勘ぐってしまう。
いずれにせよ、為替相場に関しては、米政権の為替に関する振る舞いと、FRBの政策運営、低インフレや賃金の伸び率低迷が常態化した経済を織り込みつつ、ドルの上値が重くなっていくと予想する。