January 24, 2018 / 8:41 AM / 4 months ago

再送-〔アングル〕日銀ETF購入の「出口」、市場が描く5つのシナリオ(下)

(この記事は24日午後5時39分に配信しました)

[東京 24日 ロイター] - (上)から続く

3.GPIFなど特定投資家を受け皿に

特定の投資家に、相対でETFを売却するシナリオもある。市場を経由しないことから、直接的な売りインパクトは出ない。

「日本株の将来的な値上がりが見込めるなら、海外のファンドなどが買う可能性はゼロではないだろう」(国内投信)とされる。ただ、日銀の保有額の受け皿になれるほど多くの買い手が現れるかは不透明だ。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に買い取りを求める方法もある。9月末時点で、GPIFの日本株の構成比率は24.3%。基本ポートフォリオでの日本株式の割り当て25%に接近しているが、上下に許容乖離(かいり)幅を9%設けており、全く余裕がないわけではない。

国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合連合会、日本私立学校振興・共済事業団の「3共済」も基本ポートフォリオ上の株式の比率は概ね25%前後で、GPIFを合わせた4者の「のりしろ」部分を含めると、余力は約19.5兆円に達する。

ただ、日銀のリスクが年金に移転することに国民の理解が得られるかは不透明で「政治的な可能性を考えると、現実味は乏しい」(国内シンクタンク)との声も出ている。

4.企業が自社株買い

日銀保有のETFを個別株にばらして、各企業に自株買いを実行してもらうシナリオもある。企業は自社株買い用の資金を使うことになるので、市場から買う自社株買いが減り相場にはネガティブな影響が出るとの見方もあるが、このシナリオの支持派は、潤沢な内部留保を使って今以上に自社株買いをしてもらえばいいと指摘する。

その背景には、米国企業に比べて還元率が低い、日本企業の自社株買いの状況がある。野村証券・リサーチアナリスト、西山賢吾氏によると、米企業は総利益を上回る100%以上の総還元率を続けており、そのうち自社株買いが3分の2を占める。一方、日本企業の総還元率は利益の4割程度で自社株買いは4分の1程度だ。

いちよしアセットマネジメントの上席執行役員、秋野充成氏は「日銀が日本企業の自社株買いを代行していたと捉えることができる」と指摘。個別企業が日銀から買い入れれば、相場にも悪影響が出ないで済むと話す。

もっとも、対象企業の財務面での余裕はまちまち。ETFの対象は優良企業とみられる東証1部企業(TOPIX)とはいえ、すべての企業が日銀からの自社株買いに応じられるかは不透明だ。

売却の値段をどうするかも問題となる。時価で買ってくれればいいが、自社株買いは企業が自社の株価が低いとみたときに買うのが基本。日銀が買った時点の簿価であっても、企業が安いと判断するかはわからない。

5.買取機構を設立し棚上げ

日銀保有株を別の機関にそっくり移管する方法もある。「市場にインパクトを与えずに日銀のバランスシートからリスクを切り離す手法としては有効」と三井住友アセットマネジメント・チーフマクロストラテジスト、吉川雅幸氏はみる。

過去には、1960年代の株価暴落時に株式の買い取りを行った日本共同証券と日本証券保有組合の例がある。東証1部の時価総額に対する保有比率は共同証券が2.8%、保有組合が3.5%と、現在の日銀の2.5%より高かったが、それぞれ5年2カ月、2年10カ月と短期間で処分を完了した。

当時の保有株式の処分先は、銀行や発行体の関連企業、役職員が過半を占め、市場での売却割合は高くなかった。ただ、今では銀行が株式を保有しにくくなっているほか、合理的な理由がなければ事業会社や金融機関の間で株式を持ち合うことも難しく、受け皿は見つけにくい。

最近の事例としては、銀行等保有株式取得機構も参考になりそうだ。同機構は2000年代初頭、銀行の株式持ち合い制限に伴い短期間に大量の株式が市場で売却されて適正な株価形成が損なわれる事態を抑制するため設立された。

買い取った株式の処分は市況が安定している時期に進め、低迷している時期には抑制することを基本とし、市場へのネガティブ・インパクトを抑えるよう配慮された。簿価は2004年に1.5兆円に膨らんだが、株高基調にあった2007年ごろにかけて処分を進め、いったんは5000億円程度に減少した。

リーマン・ショック後に一時売却を凍結し、再び簿価は膨らんだが、数年前からは事業会社に対し取得機構が保有する株式を自社株買いに利用できることをアピールしており、2015年度以降、自社株買いに応じて数百億円規模の処分実績も出始めている。

保有株式の17年3月末の簿価は1.5兆円、時価2.5兆円。リーマン・ショック後に危機対応として実質的な買い取り枠となる政府保証を20兆円に拡大している。規模だけに着目すれば、現在の日銀ETFを買い受ける程度の余地はありそうだ。ただ、同機構の設立趣旨を踏まえれば、日銀からのETF買い取りはなじまない。

日銀保有のETF処分の受け皿となる新たな機構を設立するとしても、いずれは保有株を処分する点では同じだ。日銀のバランスシートをクリーンにする面では一定の効果が見込めても「単なる付け替えに過ぎず、処分する際の株価へのインパクトの観点からはあまり変わらない」と大和総研の主任研究員、太田珠美氏は指摘している。

平田紀之 編集:伊賀大記

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