April 23, 2018 / 7:58 AM / 3 months ago

〔焦点〕今春闘も15年下回る公算、流通業界で値下げも 遠いデフレ脱却 

[東京 23日 ロイター] - 3%の賃上げ期待が当初あった今年の春闘だが、中小企業の妥結結果が判明するにつれ、15年の0.67%にも達しない情勢であることがわかってきた。所得環境の大幅な好転が見込めないとみた一部の流通企業などは「値下げ」カードを切り、客足確保に懸命で、所得増─価格上昇―売り上げ増のメカニズムが本格的に動き出した気配はない。

こうした情勢の下で、今後も消費者物価(CPI)上昇率は1%前後で推移すると多くの民間調査機関は予想。CPIが2%上昇して「デフレ脱却」を果たすという政府・日銀のもくろみは、スルリとその手から逃げていきそうだ。

<期待の春闘、ベア伸び悩み>

連合が19日に発表した今春闘の4回目の途中集計結果によると、ベアが0.53%で、第1回の0.77%から低下した。近年で最も高かった15年の同時期の0.67%に届いていない。

SMBC日興証券・チーフマーケットエコノミストの丸山義正氏は「今年の春闘もさらなる失望を呼ぶ結果だ。家計の期待インフレ率も、企業の期待インフレ率も上昇がみられない」と指摘。デフレ心理から脱却できていない従来と変わらない状況だとみている。

企業収益が過去最高益を更新し、賃上げ税制による法人減税措置も講じた今年は、政府内でベアで1%程度、ボーナスや定期昇給を入れれば、3%に近い数字が期待できるとみていた。

長時間労働の是正による残業代の減少をカバーすべきとの意識や、人手不足への対応という環境変化も後押しの材料となるはずとの読みが、政府内にはあった。

その期待通りに展開すれば「これまで物価の上昇が先行し賃上げが追い付いていなかったが、今年は昇給が先にきて消費マインドが改善して、デフレ脱却につながる」というシナリオを政府は描いていた。

しかし、今年の春闘が始まってみると、政府の期待通りに賃上げを実施できたのは、大企業にとどまっていたことがわかってきた。

第1回集計では、自動車や電機など大手企業がボーナスも含めた年収ベースで3%を超える賃上げを発表。連合の集計でも、ベアが0.77%と比較的高めだった。

「出だしの好調さが、最後まで持続してくれればいいのだが」という政府高官の期待は、中小企業の回答が集まりだすにつれ、下振れを余儀なくされた。

<コスト転嫁もデフレ心理で打消しか>

他方、物価の動きをみても、値上げの浸透力は弱そうだ。人件費や国際商品市況を反映した原材料価格の上昇を価格転嫁したいメーカーと、消費者に接する末端の小売業者とでは、価格設定行動の違いが鮮明となっている。

生産者サイドでは、アイスやヨーグルトといった乳製品価格の値上りや、愛媛県の生産者が生産を始めた歴史を持つポンジュースが、11年ぶりに値上げに断行。納豆やせんべい、パンのほか、今後はティッシュペーパーなどのメーカー小売り希望価格が引き上げられる。

だが、消費者のデフレマインドを嗅覚鋭くとらえている小売りの現場では、デフレ傾向が根強い。

プレナスが運営する持ち帰り弁当の「ほっともっと」は、現在330―350円の「のり弁」を、5月1日から一律300円に値下げする。

同社は、食材を自社工場で加工しており、コスト圧縮が可能だという。広報担当者は「のり弁は、店舗に足を運んでもらう戦略的な値下げ。消費者は、かつてのデフレのように価格だけで選ぶことはないが、商品内容と価格にシビアだ」と話す。

2014年の牛丼値上げによって客数減に苦しんだ吉野家ホールディングスは、河村泰貴社長が「19年2月期の値上げはない」と明言。人件費や原材料費高の影響を大きく受けるものの、手ごろな価格を売りにしている企業にとって、10円、20円の価格は生命線だ。商品内容と比較して価格が高いと判断すれば、消費者の足は遠のく。

昨年10月に28年ぶりの値上げを実施した鳥貴族は、昨年12月から3月まで客数は減少が続いている。

小売りの店頭でも、購入頻度が高く、差別化が難しい商品は、集客のための値下げの対象となる。ウォルマート傘下の西友も3月、定番商品を中心に100品目の値下げを実施。水や調味料、炭酸飲料などを平均7%下げた。

イオンリテールの岡崎双一社長は「足元の景気は、誰が見ても決して良いわけではない」としたうえで、地域一番の低価格を目指すPB「ベストプライス」シリーズの品揃えを強化する方針を示した。   消費者に近い大手小売業のこうした販売戦略をみると、今年も価格転嫁が十分浸透するのかどうか不透明だ。

第一生命経済研究所の新家義貴・主席エコノミストは、今年度の1人当たり賃金は1%を上回る程度と見ている。

一方、値上げ・値下げを織り込んだ物価上昇率は1%程度と想定。実質賃金はギリギリのプラスになるだろうと予測している。

昨年は実質マイナスとなり、それよりは改善するが、物価2%達成やデフレ脱却が近づいたとは言えないと状況が続くとみている。 (清水律子 中川泉 編集:田巻一彦  )

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