January 5, 2018 / 8:49 AM / 7 days ago

視点:日本の二大課題は防衛力強化と賃上げ=ケビン・メア氏

ケビン・メア NMVコンサルティング上級顧問/元米国務省日本部長

[東京 5日] - 日本は北朝鮮だけでなく、中国とロシアの脅威に対応するためにも、防衛力を強化する必要があり、次期中期防衛力整備計画(2019―23年度)では実質的な防衛支出を少なくとも年3%増やすべきだと、元米国務省日本部長で現在NMVコンサルティング上級顧問のケビン・メア氏は説く。

経済面では、企業の内部留保の有効活用、特に大幅な賃上げの実施を2018年の最優先課題に掲げる。人口減少・高齢化に伴う予算上の必要性だけでなく、防衛力の強化を賄うためにも、経済活性化によって政府収入増を図ることが急務だと指摘する。

同氏の見解は以下の通り。

<防衛能力の急速な改善>

ケビン・メア氏

北朝鮮の脅威が、いよいよ切迫してきている。在日米軍・米民間人を含め、日本は何年も前から北朝鮮のミサイルの射程内に入っているが、そのミサイルに核兵器が搭載されるのはもうすぐのことかもしれない。

幸いなことに、安倍政権は適切に対応している。(地上配備型の迎撃ミサイル・システム)「イージス・アショア」の導入を決めたことは良いことだ。加えて日本は、異なるレイヤー(層)でのミサイル迎撃能力を提供する「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の導入も、防衛予算が許すならば、検討すべきである。

ミサイル防衛は必須だ。しかし、北朝鮮の脅威に対抗するにはそれだけでは十分ではない。

戦闘機用の長距離巡航ミサイルを導入するという最近の発表は、歴史的な転換点である。これらのシステムは、金正恩・朝鮮労働党委員長に対し、もし北朝鮮が日本を攻撃したならば、日本は反撃することで自国を守る能力を持っていると示すことになろう。日本は、この地域の安全保障上の問題に対して、しっかりと対応できるよう装備を充実させるため、これからも第2次世界大戦後の抑制的なストラクチャーを乗り越えて行動すべきだ。

ビデオ:北朝鮮の核保有は「目前」、米国のレッドラインはどこにあるのか(22日)

日本が、より多くの安全保障上の責任と能力を引き受けることは、日米同盟を一層強固なものにする。日本の長距離巡航ミサイル導入に対する米国の支持は、米国が日本を信頼のおけるパートナー・同盟国とみなし、より成熟した同盟に向かうとみていることを再確認させた。

日本の防衛政策は正しい方向に向かっている。しかし、ミサイル防衛、制空権、海洋支配、防衛目的の長距離攻撃、サイバー、宇宙空間などの分野で必要とされる能力に対し、防衛予算は十分とは言えない。北朝鮮だけでなく、中国やロシアからの安全保障上の脅威に対応するために、日本政府は可能な限り迅速に防衛力の強化に動く必要がある。そのためには、2019年度に始まる5カ年の次期中期防衛力整備計画で、実質的な防衛支出を少なくとも年3.0%増やすべきだ。

<賃金・給与の引き上げ>

2年前の本特集で私は、日本の民間企業は巨大な内部留保をより積極的に活用すべきだと述べた。一説には、日本の大中小企業が抱える内部留保は合計すると、国内総生産(GDP)の約65%に達するという。これらの内部留保の有効活用は、設備投資や配当金支払いの増加、賃金・給与の引き上げにつながるはずだ。

過去2年間で状況は改善している。しかし、賃上げは消費者の需要を喚起する水準には至っていない。婚姻率や出生率が上昇し始めるほど、賃金・給与所得者が自身の経済的な将来に対して十分な自信を持てる水準にも達していない。

政府は、賃上げを喚起する新たな税制上の優遇措置を議論している。多くの日本企業が、それらの優遇措置を活用して、賃上げを実施してほしい。しかし、民間企業がどのように内部留保を使うかを、政府が最終的に決められるわけではない。産業界・ビジネス界のリーダーたちは、この点において自らリーダーシップを示すべきだ。2018年春闘は、大幅な賃上げを実現する必要がある。

これは引き続き、日本にとって戦略的な問題だ。大幅な賃上げは経済成長に対し、ひいては政府収入に対してポジティブなインパクトをもたらす。人口減少・高齢化に伴う予算上の必要性、そして必要な防衛力強化に取り組んでいくためにも、政府収入増は欠かせないはずだ。

*ケビン・メア氏は、駐日大使館安全保障部長、沖縄総領事、国務省日本部長などを歴任した米国の外交官。現在は、リチャード・ローレス元米国防副次官らが設立したNMVコンサルティングの上級顧問。

*本稿は、特集「2018年の視点」に掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。

(編集:麻生祐司)

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