December 25, 2017 / 2:51 AM / 10 months ago

視点:科学技術立国再建は経済再生と安保強化への確かな道=若田部昌澄氏

若田部昌澄 早稲田大学教授

 12月25日、早稲田大学の若田部昌澄教授は、日本の科学技術生産力の低下は目を覆うばかりであり、リソースを削り現場を鍛えれば生産性が上がるという、経済論議にも通じる誤った科学技術・文教政策の転換が急務だと指摘。写真はバイナリーコードとラップトップを持った人のイメージ画(2017年 ロイター/Kacper Pempel)

[東京 25日] - 日本の科学技術生産力の低下は目を覆うばかりであり、リソースを削り現場を鍛えれば生産性が上がるという、経済論議にも通じる誤った科学技術・文教政策の転換が急務だと、早稲田大学の若田部昌澄教授は指摘する。科学技術立国の再建は、少子高齢化で必要性が増す人的資本の底上げと、深刻化するサイバー攻撃などに対する安全保障上の備えになるとみる。

金融・財政政策については、物価目標の2%に達していない状況下、金融緩和の修正を目指すのは危険だと指摘。むしろ金融緩和の強化と積極財政への転換が必要だと主張する。

同氏の見解は以下の通り。

<科学技術立国再建に必要な3つのアクション>

前回の視点特集でも指摘したが、ノーベル賞受賞者が日本の科学技術の将来を憂えている。日本の科学技術生産力の低下は目を覆うばかりだ。

その理由はかなり明確であり、経済論議と共通する。要するに、リソースを削り現場を鍛えれば生産性が上がる、という誤った科学技術・文教政策のもとで行われた結果である。

政策をきちんと転換して、1)リソースを十分に増やし研究者の数と研究に専念する時間数を増やすこと、2)トップダウンで決める「選択と集中」政策をやめること、3)規制を緩和して現場の裁量を増やすこと、が望ましい。

少子高齢化が進む日本で最も貴重な資源は人間である。その人間の力を高めるビジョンとしての科学技術立国を再び掲げるべきだ。

<サイバー空間に広がる安保リスク、科学技術は備えに>

今や東北アジアは世界でも最も安全保障のリスクが大きな地域となった。そのリスクは通常戦争、核戦争だけでなく、サイバー攻撃など広範囲に及ぶ。

米国は、北朝鮮が2017年5月のランサムウェア(身代金要求型ウイルス)による大規模サイバー攻撃に関与していると非難している。北朝鮮はフェイスブック、マイクロソフトに対するサイバー攻撃への関与も疑われている。

サイバー攻撃は、いわゆる安全保障だけでなく、経済にも甚大な影響を及ぼしかねない。特に米国のアナリストの中には、次の金融危機は金融決済システムへのサイバー攻撃から始まるという論者もいる。そのサイバー攻撃に対応するためにも科学技術の充実が必要だ。現代の戦争はますます科学技術戦争の様相を強めている。安全保障への備えが急務となっている。

<デフレ完全脱却へ金融財政政策のシナジー強化を>

いよいよ6年目に突入しようとするアベノミクス。雇用をはじめとして成果は出したのは間違いない。しかし、物価目標である2%に到達していないのも事実である。

アベノミクスに効果がなかったという無効論は実証に基づいていないから論外であるが、こうした状況を見て物価目標引き下げ論、イールドカーブ・コントロールの長期金利目標引き上げ、あるいはリバーサルレートなど、金融緩和政策の修正を目指す意見もないわけではない。危険な動きである。むしろ現在必要なのは金融緩和政策の強化であり、ほとんど緊縮状態が続いている財政政策の積極財政への転換である。

*本稿は、特集「2018年の視点」に掲載されたものです。若田部昌澄氏の個人的見解に基づいています。

(編集:麻生祐司)

若田部昌澄氏

*若田部昌澄氏は、早稲田大学政治経済学術院教授。1987年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院経済学研究科、トロント大学経済学大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学、ジョージ・メイソン大学、コロンビア大学客員研究員を歴任。専攻は経済学、経済学史。「経済学者たちの闘い」「改革の経済学」「危機の経済政策」「ネオアベノミクスの論点」など著書多数。

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