[東京 10日 ロイター] - 自民党の山本幸三金融調査会長(元地方創生相)は10日、ロイターのインタビューに応じ、早期に「デジタル円」の発行を求める提言を金融調査会としてまとめ、年央の政府の「骨太の方針」に盛り込むよう求める考えを示した。法律などの整備を考慮に入れても2―3年以内の発行が望ましいと述べた。デジタルプラットフォーマーの独自通貨が広範に流通すれば、通貨主権が失われ、金融政策も機能しなくなると危機感を示した。
デジタル通貨を巡っては、甘利明・元経済再生相が会長を務める「ルール形成戦略議員連盟」が7日に提言を公表したばかり。
自民党では山本氏が会長を務める金融調査会も研究を進めている。
山本会長は、米フェイスブックの仮想通貨「リブラ」などデジタルプラットフォーマーが独自通貨を発行することで「デジタル通貨圏」が構築され、国家の通貨主権が失われることに警戒感を示した。「デジタル円を発行しないと将来、情報がすべてを握るという、巨大なプラットフォーマーに対抗できなくなる。(各社のデジタル通貨の)広がりによって(既存の法定)通貨単位まで失うと、通貨主権自体が消えてしまう」と述べ、取引の中で各社の独自通貨が広範に使われるようになり、日本円が使われなくなる事態に懸念を示した。
一方、デジタルプラットフォーマーが顧客の囲い込みを狙って自社のデジタル通貨に他社の通貨との互換性を持たせないと利用者の利便性は低下すると予想。「法定通貨が電子通貨で出ていくと橋渡しが簡単にできる」と話した。
山本会長は、デジタル通貨の具体的なイメージとして、カンボジア中央銀行が発行を計画するデジタル通貨「バコン」を例にとり、中銀が民間銀行にデジタル通貨を発行し、民間銀行と消費者がデジタル通貨をやり取りする「間接型・トークン式」を採用すべきだと述べた。
デジタル通貨の制度設計に当たっては、日銀が主導権を握るべきだと山本会長は指摘。デジタルプラットフォーマーのデジタル通貨の台頭で「通貨主権がなくなると金融政策はコントロールできなくなる」と警鐘を鳴らすとともに、デジタル通貨ならマイナス金利の深掘りも容易になるとの議論については「デフレ対策としてはいいかもしれない」と話した。 (編集:高木匠)
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