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アングル:再編促す政府・日銀「3本の矢」、地銀からは消極的な声

[東京 17日 ロイター] - 新型コロナウイルスの感染拡大で地域経済が厳しさを増す中、政府と日銀が地方銀行の再編を促す施策を相次ぎ打ち出した。地銀の経営体力を確保するのが狙いで、「3本の矢」が出揃ったとの指摘も聞かれるが、実際に客と向き合う地銀の間に、一連の政策が統合を後押しするとの見方は多くない。

11月17日、新型コロナウイルスの感染拡大で地域経済が厳しさを増す中、政府と日銀が地方銀行の再編を促す施策を相次ぎ打ち出した。日銀本店前で5月撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

<地銀の統合促進へ「3本の矢」>

「本制度を理由に再編することはありえない」。コンコルディア・フィナンシャルグループ7186.Tの大矢恭好社長は11日の決算会見で、日銀が前日に打ち出した施策に言及した。同社は横浜銀行と東日本銀行を傘下に持ち、大矢社長は地銀協の会長も務める。大矢社長は、他の地銀との経営統合には多様なステークホルダーの納得を得る必要があると指摘。「再編に価値がないとやる意味がない」と述べた。

日銀が10日に発表した施策は、経営効率化を図ることを条件に地域金融機関の当座預金にプラス0.1%の特別付利を実施する制度。他行との経営統合に踏み切る、あるいは一定の経費削減基準をクリアすることが求められる。

それから数日後、今度は政府が地銀統合の場合にシステム統合などの費用を支援する事実上の補助金制度を検討していることが明らかになった。27日には地銀の合併を独占禁止法の適用除外とする特例法が施行される。地銀に経営統合を促すための「3本の矢」(市場関係者)がそろった格好だ。

しかし、地銀には日本各地の地域経済をずっと支えてきた自負がある。取引先や預金者に利点がない限り、公的な制度ができたからといって他行と統合することはないとの声が聞かれる。

ある地銀幹部は「地域の顧客にどう向き合うかを第一に考え、われわれは自主独立路線を貫いてきた。統合を検討しているところなら検討を加速させる一因になるだろうが、政府・日銀の施策をきっかけに独立路線を採ってきた地銀が統合を決めることは想定しづらい」と話す。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの廉了主席研究員は一連の施策について、地銀の統合を後押しするには「材料不足」と指摘する。地銀が営業基盤とする地域経済は新型コロナの打撃を受けており「統合してもその先が描けない」と語る。

廉氏は、長崎県が地盤の十八銀行(現・十八親和銀行)がふくおかフィナンシャルグループ8354.Tの傘下に入る形で実現した地銀統合をモデルケースに挙げる。近隣の中核都市に店舗を展開するだけでは金利競争に陥ってしまうなど収益を上げていくのは難しく「中核都市に基盤のあるところとの連携を目指さないと生き残りは厳しい」と話す。

<高い経費削減のハードル>

それでも、特別付利プラス0.1%は魅力的だ。そのため地銀の多くは、経営統合ではなく経営効率化で日銀の条件を満たそうと考えている。コンコルディアFGの大矢社長は11日、「制度の経済的メリットは大きく、チャレンジしたい」と述べ、経費削減で適用申請する方針を示した。ある地銀幹部も、日銀の制度の詳細が判明したらシミュレーションに入ると話す。

日銀の高口博英金融機構局長は施策を発表した10日、記者団に対し「(経営基盤の強化のあり方は)各金融機関の経営判断だ」と説明。「経営統合や合併は地域金融機関の経営基盤強化のための有力な選択肢だと思うが、単独あるいは他業態とアライアンスを組むことなどにより、収益力の強化や経費の圧縮を進めることも十分あり得る」と述べた。

問題は、そのハードルが高すぎると地銀がみていることだ。2019年度比で経費率(OHR)を20年度1%以上、21年度3%以上、22年度4%以上引き下げる必要がある。減価償却費を除いた経費なら、それぞれ2%以上、4%以上、6%以上削減しなくてはならない。

金融庁や日銀にコスト削減を求められる中、多くの地銀が中期経営計画に「コアOHR」(コア業務粗利益を分母にとって算出)の目標を掲げ、経費削減に取り組んできた。しかし、コロナ禍以前から継続的にコスト削減に努めているにもかかわらず、コアOHRが上昇を続けている地銀もある。OHRの分母に当たる業務粗利益が減れば、コスト削減に励んでもOHRには上昇圧力が掛かるからだ。

「日銀の基準を満たすには店舗を大幅に減らし、人員を削る必要が出てくるが、顧客の利便性を考えれば店舗は削らず、サービスは維持したいというのがわれわれの考えだ」(地銀幹部)と、性急な経費削減に慎重な声も聞かれる。

日銀の特別付利を巡り、地銀の経営幹部から経営効率化の「ハードルが高すぎる」などの指摘が出ていることについて、日銀はコメントを差し控えるとした。

和田崇彦 編集:久保信博

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