[東京 5日 ロイター] 参院は5日午後の本会議で、日銀審議委員にBNPパリバ証券の経済調査本部長・チーフエコノミストの河野龍太郎氏を起用する国会同意人事案を野党の反対多数で否決した。投票総数は238票、賛成111票、反対127票だった。
日銀審議委員ポストは4日に中村清次、亀崎英敏の両審議委員が任期満了を迎えており、当面2人の空席が続くことになる。政府は新たな人事案の提出を急ぐが、調整は難航も予想される。
河野氏は、中村氏の後任として政府が提示していた。自民党や公明党など野党は、河野氏に不同意とした理由について、追加金融緩和に慎重でデフレ脱却に消極的などと説明。消費増税に前向きなことを一因に挙げる向きもある。野田政権が社会保障と税の一体改革実現に向けて消費増税を目指す中、早期のデフレ脱却に向けて日銀に一段の金融緩和を求める声は根強く、提示直後から与野党内で河野氏の起用を疑問視する声が挙がっていた。
審議委員の空席のうち、亀崎氏の後任については、事前に一部で候補者名が報道されたことを受けて提示が見送られており、政府は2人の人選を急ぐ。自民党は4日の財務金融部会で、物価目標を政府が定めることなどを盛り込んだ日銀法の一部改正案を協議するなど、デフレ脱却に向けて日銀は一段の金融緩和に取り組むべきとの立場。公明党も今年2月に、日銀が国債やリスク性資産を購入する資産買入基金の規模を85兆円(現行65兆円)程度に拡大すべきなどとする緊急提言を行っている。
一方、日銀も今年2月に消費者物価(CPI)の前年比上昇率で1%を目指す事実上のインフレ目標を導入し、資産買入基金の10兆円増額を決定。円高・株安是正の後押しに効果を発揮した。今後も物価動向などを見極めながら追加緩和に動く姿勢を崩していないが、極端な政策はむしろ経済・市場の混乱を招く可能性があることを懸念している。もっとも、国会で同意を得るには野党の声に配慮した人選が不可欠で、政府内の調整は難航が予想される。
日銀の最高意思決定機関である政策委員会は、総裁1人、副総裁2人、審議委員6人の計9人で構成。月に1─2回、定例開催している金融政策決定会合では、政策金利である無担保コールレート翌日物の誘導目標など通貨および金融の調節に関する方針などを決定している。次回の会合は4月9、10日に開かれるが、2人の欠員により、7人で議論が行われることが確実な情勢となった。同27日には、日銀が年2回公表している先行きの経済・物価見通しや景気のリスク要因を分析し、金融政策運営の考え方を整理する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」が議論される。
国会同意人事は衆参両院それぞれの同意が必要。衆院の採決は今夕の本会議で行われる予定だが、参院の否決によって河野氏の不同意が確定した。
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