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焦点:西アフリカが恐れる第二のアルジェリア事件、マリ情勢波及も

[ダカール 18日 ロイター] アルジェリアのガス関連施設で、国際武装組織アルカイダと関連があるイスラム武装勢力が起こした人質拘束事件。フランスによるマリ軍事介入に反発する武装勢力は、この襲撃で一つの明確なメッセージを送った。それは「サハラ砂漠のどこでも攻撃を仕掛けられる」というものだ。

1月18日、アルジェリアのガス関連施設で、アルカイダと関連がある武装勢力が起こした人質拘束事件。この事件で武装勢力が送った明確なメッセージは、「サハラ砂漠のどこでも攻撃を仕掛けられる」というものだ。写真はマリに到着したナイジェリア軍。19日、バマコ近郊で撮影(2013年 ロイター/Eric Gaillard)

旧宗主国フランスはマリでのイスラム反政府勢力との戦闘に、態勢が整っていない西アフリカ諸国の軍部隊を協力させたい考えだが、それによって南部の小規模で脆弱(ぜいじゃく)な国々で同様の攻撃が発生する可能性があると、多くの専門家は見ている。

仏軍による攻撃から逃れたイスラム武装勢力は各地に拡散するとみられる。一部はマリにとどまりゲリラ的な戦闘を続ける一方、穴だらけの国境を抜けて既に急進主義的な組織が存在する国々へ渡る者もいるだろう。

「今回のことで、イスラム教徒の間でフランスへの不満が高まる可能性がある」。こう話すのは、セネガルの首都ダカールにあるモスクで午後の祈りを終えた青年アダマ・サール氏。「軍事介入には巻き添え被害が付き物で、無実の人たちが亡くなる可能性がある。それが人々を急進的にさせる」とも指摘する。

治安専門家はこれまで、西アフリカ一帯のイスラム過激派の脅威について、「ボコ・ハラム」が活動するナイジェリア以外は重視してこなかった。

その理由には、穏健なイスラム教スーフィー派が優勢であることや原理主義組織による攻撃があまりなかったことがある。

しかし、鉱業、石油、輸送、建設など多業種にわたる国際企業が活動を広げる同地域では、マリでの戦闘によって情勢が大きく変わりつつある。

マリ北部を制圧したアルカイダ関連の武装勢力は昨年、地方政府が主要組織の「アンサール・ディーン」に協議を持ち掛け、反政府勢力を分断しようと時間を浪費する間に、組織や人員の強化と再武装を行う時間を得た。

アフリカ諸国は今や、自国のイスラム急進派による脅迫を気にしながら、実質的に形骸化した国境線を行き来する武装勢力を追跡するという問題に直面している。

フランス政府はこれまで、アフリカ諸国によるマリへの軍派遣を支援すると明言する一方、イスラム教と対決する十字軍とみなされることを恐れて、自らの地上軍派遣は避けてきた。しかし、マリに入った仏部隊や装甲車の映像は世界に広がり、一部のイスラム教徒の感情を刺激している。

ワシントン近東政策研究所の研究員で、インターネット上のイスラム系フォーラムを監視するアーロン・ゼリン氏は、ネット上で議論される話題でマリがシリアを上回ったと指摘。

「こうした人たちの多くが、オンラインのチアリーダーのようだ」とした上で、「しかし、今回の件で個人がキーボードから離れ、代わりにAK47ライフルを取る可能性もある」と語った。

<マリの隣国に募る不安>

イスラム武装勢力は、攻撃を仕掛けるなら、地域の主要国や欧米の利害がある場所を狙うと繰り返し主張してきた。アルジェリアの人質事件の犯行グループは事件がなお動く中、外国企業に新たな攻撃を行うとも表明した。

専門家が警戒するのは、1990年代にイスラム過激派と激しい戦闘を繰り広げた治安部隊が守るアルジェリアで攻撃を起こせるなら、部隊の装備と経験が不十分な西アフリカ諸国は、国際化を進めている武装勢力の前に無防備に見えるということだ。

アルジェリアの治安筋によると、同国での人質事件でこれまでに死亡した武装勢力の中にはエジプト、チュニジア、リビア出身者のほか、フランス人とマリ人も1人ずついたという。

マリ北部を制圧した武装勢力はその数カ月間で、アルカイダ系が少なかったサハラ以南のアフリカ諸国などから多くの兵士を集めたと、西アフリカの治安筋は明かす。

イスラム国ではあるが宗教的に寛容な隣国セネガルでは、ヌディアエ外相が今週、アルカイダが潜伏組織を編成したと発言。マリに500人の部隊を派遣する同国のサル大統領は全国民に向けて、外国人イスラム教徒の疑わしい活動を報告するよう呼び掛けた。

また、マリ西部と国境を接するモーリタニアでは、非宗教政党とイスラム政党がそろってマリ情勢から距離を置くよう訴えている。イスラム武装勢力がマリ北部を制圧する以前、モーリタニアはアルカイダの活動がこの地域で最も盛んな国だった。同国は、国内の軍施設や欧米関連施設への攻撃を受けて、マリ国境周辺にある武装勢力の拠点で急襲作戦を行っている。

与党幹部は、モーリタニアが「長年にわたる対テロ組織活動で既に高過ぎる対価を払ってきた」とし、一連の紛争に関与するつもりはないと明言。他方では、宗教学者らでつくるグループがマリからのイスラム過激派を保護せよと訴えている。

ガーナに拠点を置くコフィ・アナン国際平和維持訓練センターの専門家、クウェジ・アニング氏は「フランスは(マリから)過激派を追い出したい。しかし、どこへ追いやろうとしてるのか。モーリタニアやニジェールがトラブルになるかもしれない。ブルキナファソも脅威に直面するだろう」と予想する。

<危機迫るナイジェリア>

しかし、最も懸念されるのはナイジェリアだ。同地域で最大の石油埋蔵量と経済を持つ同国では、治安部隊が北部のボコ・ハラムとの戦闘で泥沼にはまり込んでいる。

ナイジェリア政府は、マリ介入で軍の関与を拡大させたくないという考えと、派遣によって自国と海外の武装勢力との関係を根絶できるのではという期待で揺れていたが、ジョナサン大統領は今週、1200人の部隊の第一陣を派遣した。

「彼らはイスラム勢力の問題を根本から断ち切りたいのだ」と言うのは、同国ラゴスのコンサルタント会社ファイナンシャル・デリバティブズのビスマルク・ルウェイン最高経営責任者(CEO)。同氏は「その問題は今炎上しかねないだけでなく、長期的には、不平等や統治力の弱さに関連するボコ・ハラムの問題も解決できなくなる」とも語る。

マリを含む西アフリカの多くの市民は総じてフランスの軍事介入を支持し、その一方で周辺諸国がマリ政府の支援に赴かなかったことを失策と考えている。

しかし、世界の最貧国とされるこうした国々では、日常生活を改善するための民主主義がうまく機能せず、それによりイスラム組織がより大きな役割を持つことにつながっている。湾岸地域出身の説教師らが広げた超保守的な宗派であるワッハーブ派も、この地域に入り込みつつある。

前出のアニング氏は、今回の軍事介入によって周辺地域が大幅に脆弱化するとの見方を示した上で、「マリから戦線が拡大することになるだろう」と警告した。

(ロイター日本語サービス 原文:David Lewis、翻訳:橋本俊樹、編集:梅川崇)

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