July 11, 2016 / 3:17 AM / in 3 years

「安定政権」の期待と不安、アベノミクスの拡大効果に疑問も

[東京 11日 ロイター] - 第24回参院選で自民党が大勝したが、市場では期待と不安が交錯している。大規模な経済対策を実施しやすくなったものの、円安基調が反転し景気や物価が足踏みするなか、今のアベノミクス政策の拡大版が、持続的な経済成長に資するとの見方は少ない。政治的資本が経済政策から憲法改正に流れるとの懸念も高まっており、「全員参加型」の相場にはなりにくいとみられている。

 7月11日、第24回参院選で自民党が大勝したが、市場では期待と不安が交錯している。写真は都内で10日撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

<変調する日本経済>

日銀が公表している指標に「刈込平均値CPI」がある。価格変動の大きい上下10%の品目を除いて(刈り込んで)算出する消費者物価指数だ。原油価格の乱高下などに惑わされない基調的な物価変動に近いデータとして、エコノミストだけでなく、内外の中銀幹部もその有用性を認めている。

その「刈込CPI」は2013年6月まで約1年半マイナスが続いた後、3年以上、プラス圏を維持している。しかし、今年に入りプラス幅は徐々に低下。5月は13年8月以来となる0.2%まで縮小し、再びデフレが視野に入ってきている。

変調しているのは物価だけではない。景気の好循環メカニズムの起点とされる企業収益は、今年度減益の可能性が高まってきている。賃金鈍化への警戒感が強まるなかで、個人消費が低迷。インバウンド需要もやや陰りをみせている。雇用は依然として高水準だが「企業業績が悪化すれば影響は免れない」(日本総研・調査部長の山田久氏)という。

こうした経済変調の起点となっているのが円高だ。アベノミクス政策の象徴ともいえる日銀のマネタリーベースが400兆円を突破するなど、政策規模はさらに拡大しているにもかかわらず、ドル/円JPY=EBSは125円から100円に下落。米国の利上げ観測後退という事情もあるが、マイナス金利を導入しても、円高基調はむしろ加速している。

<民主党時代の「反動」>

安倍首相は選挙テーマとして「アベノミクスの信任」を掲げたが、政策効果は疑わしくなっている。参院選で自民党は大勝したものの、市場では「(野党の)対案がないことで消去法的に選ばれてしまった印象が強く、アベノミクスが信任されたわけではない」(UBS証券・シニアエコノミストの青木大樹氏)との声も少なくない。

では、何故、自民党が大勝したのか。りそな銀行チーフ・エコノミストの黒瀬浩一氏は、民主党(現民進党)への政権交代の反動が続いていると指摘する。「世界的にポピュリズム的な政策を掲げた政党や政治家が躍進しているが、日本では民主党への政権交代が、その時だった。今はその反動期であり、積極的にアベノミクスや自民党を支持しているわけではない」と話す。

今回、改憲勢力は衆院に続き、参院でも総議席数の3分の2を突破した。政権の安定はマーケットにとってプラスだが、それが政策軸のシフトにつながれば話は別だ。「市場では、政権が改憲重視に転換し、経済が二の次になるのではないか、との思惑がくすぶり続ける」(ニッセイ基礎研究所・シニアエコノミストの上野剛志氏)という。

11日午前の市場で、日経平均.N225は経済対策への期待感から500円を超える上昇となったが、ドル/円は6月米雇用統計が強かったにもかかわらず、100円台と上値が重いまま。「欧米政治が大きく揺れ動くなか、『安定政権』をベースにした円買いが発生する」(外資系証券アナリスト)との見方もある。円高が止まらなければ、株高の勢いは強まりにくい。

<「ゼロサム相場」入りか>

自民党・与党は安定政権を手に入れ、大規模な経済政策を打ち出しやすくなった。しかし、日本経済が変調し、アベノミクス政策への信頼感が低下するなかでは、今の政策の拡大バージョンを打ち出しても期待感は高まらない。

日銀が供給する資金量と物価や景気は、必ずしも連動しないことがこの3年間で証明されてしまった。マネタリーベースを400兆円からさらに増やしても、そのこと自体での期待は膨らみにくい。マイナス金利政策は、いまだ評価が分かれている。

財政政策は「ヘリコプターマネー」に衣を変えたとしても、お金を使う政策である以上、潜在成長力を押し上げるような有望な使い道がないという今の財政が抱える問題を克服できない。極端な例でいえば、日銀が自動車を500万台買えば景気は良くなるが、それは本当の景気回復ではないし、悪いインフレも起きかねない。

昨年までは、株式も債券も同時に上がる流動性相場だった。しかし、最近は、債券価格が上昇する一方で、株価は下落している。逆相関という本来の姿に戻ったともいえるが、その背景には政策効果への期待感の低下がある。日銀が大量に買う国債は、マイナスにまで金利が低下しても、景気や物価の持続的上昇期待にはつながっていないのが現状だ。

「これまで無理を続けてきた結果、政策は、何かを犠牲にしないと何かを得られないトレードオフの段階に入っている。市場も同じで、何でも上がった流動性相場は終わり、何かが上がれば、何かが下がるゼロサム相場になりそうだ」とJPモルガン・アセット・マネジメントのストラテジスト、重見吉徳氏は予想している。

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