November 28, 2014 / 7:27 AM / 4 years ago

インタビュー:増税で振り出し、日本経済再起動が必要=片岡剛士氏

[東京 28日 ロイター] - 三菱UFJリサーチ&コンサルティング・主任研究員の片岡剛士氏は、アベノミクスが本格スタートした2013年の日本経済はほぼシナリオ通りに推移したが、今年4月の消費増税で効果が打ち消され、振り出しに戻してしまったと指摘。この2年間の総合評価は「40─50点」と採点した。

 11月28日、三菱UFJリサーチ&コンサルティング・主任研究員の片岡剛士氏は、アベノミクスが本格スタートした2013年の日本経済はほぼシナリオ通りに推移したが、今年4月の消費増税で効果が打ち消され、振り出しに戻してしまったと指摘。この2年間の総合評価は「40─50点」と採点した。写真は、東京・銀座、16日撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

しかし、デフレ脱却に向けては、この道を進むしかなく、財政政策を強化して再スタートを切るべきだと述べた。

また、アベノミクスの3本の矢のうち、第1の矢「大胆な金融政策」と第2の矢「機動的な財政政策」の組み合わせは実質的な財政ファイナンスではあるものの、デフレから完全に脱却できていない段階では政府が積極的に経済対策を実行するためのマネーが必要であり、この時期の大胆な財政支出と金融緩和は肯定されるとの見解を示した。

片岡氏はこの11月に「日本経済はなぜ浮上しないのか──アベノミクス第2ステージへの論点」を出版した。「アベノミクスを評価しているようかのようにとられているが、評価しているのは金融政策だけ。財政政策は消費増税で方向感を失っており、成長戦略も期待していない」(片岡氏)という。

インタビューの主な内容は以下の通り。

──アベノミクスの総合評価は。

「金融政策は80点、財政政策は50点、成長戦略は10点。平均すると40─50点になる。金融政策を評価しているとしながら80点となったのは、追加緩和が遅過ぎたからだ。今はデフレからマイルドな2%の物価安定目標を目指している状況なので、金融緩和は、よりアグレッシブに行う必要がある。予想インフレ率や市場のマインドが落ち込みつつあったところで手が打たれたが、ぎりぎりのタイミングだった」

「2013年の日本経済はアベノミクスの当初のシナリオ通り、おおむね景気回復基調となった。物価上昇率は持ち上がり、失業率は改善。株価も大幅に上昇した。ただ、14年に入ると、予算規模が縮小され、財政政策が拡張から緊縮の方向に向かった。消費増税も相まって、持ち上がった日本経済が方向感を失った状況になった。財政政策は半分くらいしか評価できない」

「アベノミクスは3本の矢で経済をとにかく拡張させてデフレから脱却し、最終的に成長軌道に戻すというのが本義。ところが、消費増税という方向性の違う政策を景気浮揚の途上で混在させ、それまでの効果をほぼ全て打ち消してしまった」

──デフレ脱却に他の道はないのか。

「この道しかない。野党がアベノミクスを否定するのは難しいと思う。経済学的に、景気を持ち上げるためにすべきことは、金融政策と財政政策とされている。金融緩和をし過ぎることは問題だが、不況下では問題ないということは教科書にも書いている。それを愚直にやろうとしている現政権を批判するのは困難だ」

「財政政策については、手段として公共投資に偏重している今の在り方は変えないといけない。特に新規投資については、建設業の供給制約が深刻化する中で、予定通りの効果をもたらさない可能性が高い。景気刺激策という意味では定額給付金、所得税減税などで家計の実質所得の低下を抑制する必要がある」

「安倍晋三政権は、合わせて社会保障制度の改革に本腰を入れる必要がある。10%への消費税率引き上げはとりあえず延期されたが、今後、拡大する社会保障費の財源として消費増税が使われていくとすれば、増税のたびに景気対策と財政支出の拡大に直面し、財政赤字が膨らんでいく可能性がある」

──成長戦略については。

「具体的な成果を出すこと。法人税減税や環太平洋連携協定(TPP)といったところで、改革は進んでいるんだということをどこまでアピールできるかだ。TPPはぜひ前に進めてもらいたい。現局面で、農業を含むセンシティブ品目にこだわっている理屈はないと思う。むしろ、そこは捨ててでも関税撤廃や自由化といった話を受け入れることによって、日本経済が変わっていくことに働きかけなければならない」

「他方、民間向けの成長戦略については、どれほど潜在成長率が持ち上がるのか未知数の部分が大きく、私自身、あまり期待していない。そもそも、政府が何か旗を振り、民間について来いといっても無理な話。アイデアはあるが金はないという人たちの金回りをよくしてあげることが、政府の最大の役割なのではないか」

──第1の矢と第2の矢の組み合わせは、マネタイゼ―ションだとの指摘がある。

「これはマネタイゼ―ション、実質的には財政ファイナンスだ。ただ、今はデフレギャップが拡大し、2%の物価安定目標を達成できていない状況なので、やることができる。日本は将来、人手不足による供給能力の低下などから、インフレになりやすい構造になるとみている。今は政府がお金をたくさん使って、やるべきことを整備しないといけない時期と捉えている。そういう意味で、財政ファイナンスはしなければいけない」

「財政ファイナンスを批判しても仕方がなく、むしろ、それで何をするかが大事だ。日本の成長力がつけば、将来の徴税余力は増すので、財政ファイナンスしたものは確実に税収というかたちで返ってくる」

「日本の対外純資産残高は世界一で、今も拡大が続いている、消費増税をしないと財政は破綻するという人もいるが、国債の金利は0.5%をはるかに割り込み、0.4%台の攻防に移っている。これは市場がもっと国債を欲している状況。逆にいうと、日銀が買い取る以上に国債を出せるということだ」

──円安は日本にとってプラスかマイナスか。

「日本経済全体でみると明らかにプラスだ。(ドル)120円程度の円安はまったく問題ではない。輸入価格が上がって困るという話になるが、問題は輸入価格の上昇分をきちんと売価に転嫁できない日本経済の仕組みだ」

「円安について輸出企業のメリットが目立つが、他方、同じ製品で国内製と海外製が競争している場合、国内では国内製の方に競争力が出てくるので、そういった製品を作っている産業はメリットを受ける可能性がある。日本経済全体としてみた時、円安デメリットを過度に強調するのはミスリードという感じがする」

*このインタビューは11月27日に行いました。

杉山健太郎:編集 田巻一彦

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