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焦点:トランプ訪日、安倍外交に高い評価 通商交渉は予断許さず

[東京 28日 ロイター] - 令和初の国賓として来日したトランプ米大統領に対し、最大限の「おもてなし」で対応した安倍晋三首相の「作戦」は成功したのか──。日米外交に詳しい学識経験者からは、短期的な観点からは「成功した」との評価が相次いでる。ただ、通商問題では決着を先送りした色彩が濃く、牛肉など農業と自動車分野でどのように交渉が決着するのか、予断を許さない。

 5月28日、令和初の国賓として来日したトランプ米大統領に対し、最大限の「おもてなし」で対応した安倍晋三首相の「作戦」は成功したのか──。日米外交に詳しい学識経験者からは、短期的な観点からは「成功した」との評価が相次いでる。写真は都内で27日撮影(2019年 ロイター)

今回の「安倍外交」に対し、専門家の評価は概して高い。木村福成・慶應義塾大学・経済学部教授は「外交全体からみて成功だ。日本は何も譲歩した部分がない。『何も決めない訪日』にできたこと自体が奏功した」と述べる。

Wilson Center Japan Fellowの中山俊宏氏も「全体的にセレモニーとして成功だった。これ以上、期待できるだろうか」と評価している。

特に緊密さを印象付けたのは、外交・軍事分野での連携。トランプ大統領は27日の会見で、緊迫するイラン情勢に対し、日本の働きかけに期待感を示した。日本政府関係者によると、6月の安倍首相のイラン訪問の実現に向け、今後調整を本格化させるとみられている。

また、安倍首相が意欲を示す拉致問題解決に向けては、トランプ大統領が「全面的に支持する」と強調。日米が連携して北朝鮮問題に取り組む考えを示した。

トランプ大統領は、天皇陛下との会見で「過去の戦争などの歴史を乗り越え、日米は『素晴らしい関係』が構築されていると思う」と述べ、友好関係が今回の訪日で一層強化されたことを強調した。

ただ、通商問題では、日本側の意表を突く発言が相次いだ。「8月に大きな発表ができる」とのトランプ大統領の発言を受け、日本政府は火消しに躍起となった。

ある政府関係者は、首脳会談で「8月に妥結することで一致したわけではない」と説明し、通商交渉を担当する茂木敏充経済再生担当相は28日の会見で「(日米)双方にとって利益につながるよう、迅速な協議を行う『期待感の表れ』と理解している」と語った。

専門家からも「あくまで『8月に何かしら発表できる』という言い回しで、『合意できる』とは言っていない。米国向けのアピールの必要性から出た言葉で、実際の貿易交渉とは何らリンクしていない」(木村福成・慶大教授)との声が出ている。

また、環太平洋連携協定(TPP)に米国は「縛られない」と発言したトランプ大統領の真意に関しては、日本政府側に神経質なムードが台頭した。ある政府関係者は「交渉中なので何も話せない」と米国側の要求内容に触れることを拒否。別の政府関係者も、交渉内容に関する情報漏れがないよう、政府全体の管理体制が強化されていると話す。

そうした中で、ある政府・与党関係者は、トランプ大統領がツイッターなどで牛肉問題に言及しており、牛肉を含めた農業分野での米国の「攻勢」が強かったのではないかと述べた。

一方、もう1つの焦点である自動車問題でも、日本側は神経を尖らせている。先行して最終合意した米韓の通商交渉では、安全保障を理由に韓国の譲歩を引き出した。米政権は日米首脳会談に先立つ17日、翌日に迫っていた自動車への追加関税に関する判断を最大180日先延ばししており、「次のヤマ場は11月中旬ごろでは」(別の日本政府関係者)との観測もくすぶる。

安倍首相は、今回のトランプ大統領の来日で何を得たのか――。「トランプ大統領が参院選後に、実際に日本への圧力をかけに動き出すまでは、安倍首相が何を得たのか知ることはできない」と、コロンビア大学のジェラルド・カーティス名誉教授はロイターの取材に答えた。

山口貴也、Linda Sieg、中川泉、竹本能文、編集:田巻一彦

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