November 21, 2014 / 8:12 AM / 5 years ago

インタビュー:アベノミクス極めて順調、構造改革断行を=浜田参与

[東京 21日 ロイター] - 21日の衆院解散で、アベノミクスの成果を主な争点とした総選挙が事実上スタートした。第2次安倍晋三政権の発足後、為替は118円台まで円安が進み、日経平均.N225は1万7000円台に上昇。政府・与党は政策の効果だと強調する。

 11月21日、内閣官房参与の浜田宏一・イエール大学名誉教授はアベノミクスは極めて順調と述べ、金融緩和と財政出動の2本の矢が需要促進に大きな成果を上げたと語った。写真は2013年3月撮影(2014年 ロイター/Toru Hanai)

一方、直近の国内総生産(GDP)は2期連続のマイナスとなり、安倍政権は消費税率再引き上げ延期を決断した。

アベノミクスは日本経済に何をもたらしたのか。そして、選挙後のマクロ政策には何が必要になるのか、初回は安倍晋三首相の経済ブレーンで内閣官房参与の浜田宏一・イエール大学名誉教授に聞いた。

浜田教授は、アベノミクスは極めて順調と述べ、金融緩和と財政出動の2本の矢が需要促進に大きな成果を上げたと語った。しかし、今年4月の消費税率引き上げの景気への影響が「予想以上に深刻だった」と分析。安倍首相による消費税再増税の延期判断を「自然なこと」と評価した。

今後のアベノミクスの課題は、第3の矢である成長戦略の実行で供給力を強化することが重要とし、特に現行35%程度となっている法人実効税率の大胆な引き下げが不可欠と強調。政府は法人税を2015年度から数年で20%台に引き下げる方針を示しているが、浜田氏は「20%前半に引き下げ」を主張した。

日銀による10月31日の追加金融緩和などを受け、外国為替市場では円安が進行しているが、1ドル=120円程度の円安は、日本経済全体ではプラスとの認識を示した。足元で原油価格が下落し、労働市場を中心に需給環境がひっ迫する中、インフレ目標については「1.5%程度でいいのではないか」と語った。

衆院選は21日の解散で事実上スタートしたが、これまでのアベノミクスの評価を争点とすることに「それなりに意味がある」との見解を示した。

主なやりとりは以下の通り。

──アベノミクスの評価。2期連続のマイナス成長を受け、失敗との声もある。

「今年4月の消費税率8%への引き上げで、景気に陰りが出てきているのは確かだ。消費増税の景気への影響が当初の予想より深刻で、余計なおもりを付けてロケットを発射してしまったということ。しかし、アベノミクスの第1の矢である金融政策と第2の矢である財政政策という需要促進策は、極めて順調。アベノミクスに逆方向の消費増税のマイナスの影響が少し強く、来年10月の消費税再増税を見送り、大事をとったのは自然だ」

──アベノミクスが順調な中での衆院解散・総選挙をどうみるか。

「前回の選挙時は、アベノミクスを国民が体験していない。確かに消費増税で足元の経済は少し揺らいでいるが、アベノミクスについて国民が体験した上で評価することは重要。それを問うことは、それなりに意味がある」

──安倍首相は、2017年4月には消費再増税を行うと断言した。

「景気条項を撤廃して消費税を上げると言ったことの意味は大きい。決して安倍政権は国民に甘いことを言うために延期しているわけではない、という意志表示になる。その時に(景気の)波風が大変であれば、第3のバズーカ砲を日銀に発してもらえばいい」

──アベノミクスの今後の課題は。

「第1の矢と第2の矢がうまく働き過ぎたがために、労働市場などを中心に供給余力が少なくなっている。供給を増やさないと生産も雇用も増えない。これからは供給力を強化する政策が不可欠だ」

「構造改革には官僚などから確実に抵抗が出てくるが、安倍首相と菅義偉官房長官は構造改革の重要性を絶えず訴えている。内閣の中枢が構造改革に前向きというシグナルは常に発信されており、衆院選で自民党が国民のサポートを得られれば、構造改革は進展する」

──成長戦略では法人実効税率(現行35%程度)の引き下げを訴えている。

「日本経済の強い成長には生産基盤が重要で、投資家にとって投資しやすい国にする必要がある。そのためには、ほぼ世界で一番高い法人税を引き下げることが必要だ。それによって日本に外国の企業を呼び込むとともに、日本企業が外国に投資することを回避することができ、地方経済を救う政策にもつながる」

「日本と競争関係にある国の税率を踏まえると、思い切って20%前半に引き下げ、租税競争のプレーヤーになることが重要だ」

──日銀は10月31日に電撃的な追加金融緩和に踏み切った。

「やり方がとてもうまかった。サプライズな政策を打って効果を発揮した」

──成長率が高まらない中で、インフレだけが進行してしまう懸念はないか。

「金利やインフレよりも国民生活の方が重要だ。あくまで物価目標は2次的なものであり、絶対目標と考えるのは誤り。石油価格が下がっているのであれば、相対的に低いインフレ率でも完全雇用は達成できる」

「無理して2%達成を目指す必要はなく、インフレ目標はおおらかに考えればいい。現在の石油価格や雇用情勢を踏まえれば、1.5%程度でいいのではないか」

──日銀が国債を買い増し、政府が増税を先送り。財政ファイナンスといえないか。

「今回の追加緩和は経済成長率が下がり、どちらかといえば不況の方向に揺れがきている中での当然の対抗措置。マネタイゼーションをやってデフレを克服しなければ、ならない時もあるが、最も困るのはインフレ進行による大衆課税。それが起き始めれば止めるべきだが、起こる前に止めろ、という意見には反対だ。自分で金融政策が止められないような中央銀行は中央銀行とはいえない。やり過ぎればインフレになるので、その時は、ちゃんと止めればいい」

──追加緩和・増税先送りで円安が進行している。日本経済への影響は。

「過去に70円台など円高局面が長く続き、日本経済は疲弊し、電機産業を中心に輸出産業が苦しんだ。それがアベノミクスによる円安で、輸出企業は一息つくことができた」

「一方で、輸入産業が経済的に難しくなっていることだと思うが、産業レベルで比較する限り、輸出産業の利益の方が、輸入産業の不利益よりも大きい」

──120円に円安が進んでも経済全体にプラスということか。

「そうだと思う」

「ただ、円安による輸入コストの上昇や、消費税率引き上げで最も困るのは低所得者。そうした人たちに対して、給付金や税制などによって、円安の悪影響を取り除くための政策は十分に考えられる」

*一部フォーマットを修正して再送します。

伊藤純夫 金子かおり 編集:田巻一彦

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