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コラム:北朝鮮で墓穴掘るトランプ氏、イラン恫喝の副作用
2017年10月24日 / 05:12 / 23日後

コラム:北朝鮮で墓穴掘るトランプ氏、イラン恫喝の副作用

[19日 ロイター] - トランプ米大統領がイラン核合意を台無しにしてしまったことで、北朝鮮のミサイル・核開発問題に対する米国の選択肢が狭まっている。

 10月19日、トランプ米大統領(写真)がイラン核合意を台無しにしてしまったことで、北朝鮮のミサイル・核開発問題に対する米国の選択肢が狭まっている。ホワイトハウスで23日撮影(2017年 ロイター/Joshua Roberts)

イラン政府による核合意の順守をトランプ大統領が認めなかったことについては、北朝鮮政府も十分に注意を払っているだろう。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に、米国との交渉を拒否するための、もっともらしい口実を与えたことになる。

米国と北朝鮮の対立はさらに緊迫化しており、両国が互いに圧力を強めるなかで、対話の可能性が遠ざかっている。緊張が続くなかで、どちらかが破滅的な誤算を犯すリスクがある。トランプ大統領がイラン合意について判断を下す前から、話し合いの見込みは低下しつつあった。

第1に、対立が人格攻撃になってしまっている。9月19日の国連総会における煽動的な演説のなかで、トランプ大統領は正恩氏を「ロケットマン」と呼び、北朝鮮を「完全に破壊する」と脅した。対する正恩氏は平壌の主要紙に発表した本人名義の書簡で、何よりもまず、トランプ大統領を「老いぼれ(dotard)」と呼んだ。

米国政治では誹謗中傷が当たり前のようになっているが、選挙遊説で効果があっても、北朝鮮に対しては有効ではない。

北朝鮮では指導者の権威とイメージはほぼ神聖不可侵であり、これを中傷することは逆効果だ。北朝鮮のエリート政治においては、最高指導者に対する忠誠を競い合うことが、かなりのウェートを占めている。最上層部で議論が行われていても、正恩氏が立場を明らかにした段階で議論は終了し、それに矛盾することは決してない。

北朝鮮の内部に、より柔軟な路線を促す声があったとしても、正恩氏が受けた個人攻撃と、また同氏による強引で大袈裟な反撃によってかき消されてしまうだろう。

第2に、国連の安全保障理事会が8月から9月にかけて、北朝鮮政府に対する制裁を強化した。これによって、繊維製品や海産物、石炭など北朝鮮の主要産品の輸出や、外国企業との合弁事業、北朝鮮国民を労働者として新規雇用する契約がすべて禁止された。

これらの措置に対して中国が同意したことが鍵となり、ある程度は執行されているように思われる。

こうした制裁強化によって、北朝鮮政府はいっそう態度を硬化させている。北朝鮮政府が米国との「ゼロサムゲーム」だと考えていた状況は、今やこうした制裁を支持するという中国の「裏切り」によって複雑化している。

北朝鮮は、自国が存亡を賭けた戦いに臨んでおり、21世紀における最も困難な戦略的瞬間において怯んではならないと感じている。同時に、市民に対する極端なまでに厳しい国家統制を考えれば、北朝鮮は逆境に耐え、経済の深刻な縮小を許容し得る立場にある。

ここで思い出されるのがイランだ。

イランの政治体制は部分的に民主化されており、政権内での妥協的な声を強めるうえで、制裁は確かに効果を発揮した。それが交渉につながり、ついに2015年の包括的共同作業計画(JCPOA)、いわゆるイラン核合意に至ったのである。

合意は完璧なものではない。だが何年にも及ぶ交渉を経て、欧州・米国の交渉担当者たちは、これが最善の成果だと考えた。この合意によって、イランによる核兵器開発はきわめて困難になった。

イランのウラン備蓄は95%、遠心分離機は60%以上削減され、ウラン濃縮能力は核兵器に使える品質を大幅に下回る水準に抑えられてしまった。これについては供給・生産チェーンのあらゆる部分で査察による検証が行われている。

 10月19日、トランプ米大統領(写真)がイラン核合意を台無しにしてしまったことで、北朝鮮のミサイル・核開発問題に対する米国の選択肢が狭まっている。写真はホワイトハウスで13日、イラン核合意について語るトランプ大統領(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)

この合意における限界の1つとしては、こうした制約に失効期限が設けられている点がある。また、イラン政府によるミサイル開発計画には制約が設けられていない。だがトランプ大統領が今月、イランによる合意遵守を否認したのは、もっぱら、中東地域でイランが見せている他の動き、つまりシリアのアサド政権やレバノンのヒズボラに対する支援が理由だったように思われる。

トランプ氏が13日に行った演説によって、イラン核合意が葬り去られたわけではない。少なくとも今のところは。だが、これによって主導権は米国議会に委ねられた。今度は議会が、核合意から脱退するか、残留するかを決めなければならない。米国がどう対応するかは不明だが、合意前の制裁復活、あるいは新たな制裁導入を決定すれば、合意は危機にひんする。

重要なのは、国際原子力機関(IAEA)の査察官と、米国以外の全てのイラン核合意当事国、つまり欧州連合、ドイツ、国連安全保障理事会メンバーである中国、フランス、ロシア、英国が、「イランは合意を遵守しており、合意を継続すべき」と主張している点だ。

さまざまな声明において、こうした当事国は、合意は今後も引き続き遵守されるべきであると述べている。

トランプ大統領は同盟諸国に対して、核合意を見直し、同時に中東地域におけるイランの核開発以外の行動を、より積極的に封じ込めるための幅広い政策を提示している。だが、イラン核合意を破棄することは、国際舞台において米国の孤立をさらに深めるだけだ。

 10月19日、トランプ米大統領(写真)がイラン核合意を台無しにしてしまったことで、北朝鮮のミサイル・核開発問題に対する米国の選択肢が狭まっている。ホワイトハウスで23日撮影(2017年 ロイター/Joshua Roberts)

北朝鮮との緊張関係において、より有利な立場を確保するという点でも、このことは重大だ。

国際社会の多くの国々、特に中国は、北朝鮮を交渉に復帰させようと説得するべく努めてきたが、一貫して拒絶されてきた。北朝鮮の当局者は、同国には核兵器を保有する権利があり、昔からの敵対国に対する抑止力として核兵器が必要であると主張している。

そして何よりも、いまや北朝鮮の当局者はこう言えるようになってしまった。「見ただろう。たとえ交渉に復帰して米国と合意に達したとしても、どうして彼らを信頼できるのか。なぜ、この国と合意を結ぶために、核兵器を諦めなければならないのか」と。

公平を期すならば、現状でも金正恩体制は彼ら独自の理由で米国を信頼していない。だが、いまや彼らは、その不信感を国際社会に対して正当化できるようになり、米国の同盟国がそれに反論することが難しくなってしまった。

さらに、米国自身が、交渉で成立した複雑な解決策を遵守することにひどく消極的な姿勢を見せてしまった今、中国とロシアは今後も国連安保理による対北朝鮮決議に賛同してくれるのだろうか。

トランプ政権が、建設的な解決策を見出す努力よりも、懲罰的措置としての圧力にのみ注力していると、中国とロシアが考えるとすれば、両国は、国連による制裁を辛抱強く実施しようという気持ちも失ってしまいかねない。

北朝鮮危機に対する交渉による解決策は、今のところ、まったく見通しが立っていないように見える。トランプ大統領がイラン核合意を台無しにすることで、その可能性はさらに遠ざかってしまうだろう。それが視野に入ってくるまでは、この緊迫期に米朝双方が力を誇示しようと競うなか、どちらも間違いを犯さないことを皆で祈る必要がある。

*筆者は、韓国の済州平和研究院とカリフォルニア大学バークレー校の韓国研究センターの客員研究員。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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