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焦点:生体認証データ、タリバンに渡るか 収集を巡る議論再燃

[20日 トムソン・ロイター財団] - タリバンがアフガニスタンの実権を握り、扱いに注意を要するデータを手中に収めるのではないかとの懸念が生じている。これを受けて、プライバシー専門家の間では、支援機関や多国間機構によるデータ収集に必要な倫理規範をめぐる議論が再燃した。

 8月20日、タリバンがアフガニスタンの実権を握り、扱いに注意を要するデータを手中に収めるのではないかとの懸念が生じている。写真は2014年12月、アフガニスタン東部ラグマーン州の前方作戦基地付近で、地元住民の生体認証データを採取するコントラクター(2021年 ロイター/Lucas Jackson)

タリバンが首都カブールを制圧したことで、住民は、支援機関や治安部隊が維持してきた生体認証情報データベースが、自分たちの追跡に利用されるのではないかと不安を募らせている。

プライバシー専門家は以前から、国連や開発機関による生体認証情報の収集、デジタル身分証明書の義務付けが、難民その他脆弱な立場にあるグループにとってのリスクを高めていると警告してきた。

「多国間の開発支援機構は、現地の状況を理解するための配慮を十分に払っていない。誰がそのデータを使う可能性があるか、格差や差別を助長する方向で使われる可能性はないか、といった点だ」と語るのは、デジタル人権擁護団体「アクセス・ナウ」のラマン・ジット・シン・チマ氏。

アフガニスタン周辺地域における政策担当ディレクターを務めるチマ氏は、「アフガニスタンの事例では、特にショックが大きい。支援機関はこの国のトラブルに満ちた歴史を知っていたのだから、ミャンマーその他で学んだ教訓をもとに、最悪のシナリオに備えておくべきだった」と語る。

米ニュースサイト「インターセプト」は、虹彩スキャンや指紋などのデータを含む米軍の生体認証情報デバイスをタリバンが押収し、こうした情報が「多国籍軍に協力した」アフガニスタン人を特定するために利用されかねない、と報じた。

アフガニスタンでは世界銀行が2018年以降、「タズキラ」と呼ばれるデジタル身分証明書システムを推進し、公共サービスや就職、投票に必要とされてきたが、チマ氏はトムソン・ロイター財団の取材に対し、このデータも脆弱な民族グループのリスクを増す可能性があると語った。

世界銀行はこのIDシステムについて、「人口のかなりの部分が公式には『存在しない』状況では、開発の進展を望むべくもない。したがって、すべての人に法的な身分証明を提供することは開発の必須条件だ」と擁護してきた。

<人道的意図が逆効果に>

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)も生体認証情報テクノロジーを早くから支持しており、2002年にはパキスタンの都市ペシャワールで、アフガニスタン難民の虹彩認証システムについて最初の実験を行っている。

このシステムは、通常、網膜スキャンと指紋に基づくもので、他の複数の国でも展開されており、シリア難民危機へのUNHCRの対応でも活用されている。

UNHCRでは、生体認証情報の登録によって難民の人数の把握と本人確認を正確に行えるようになり、効率的な登録と支援提供が確保され、不正行為を予防できると述べている。

だが、システムへの接続の不安定さや顔認証の不一致といった技術的課題が指摘されているほか、治安上の理由でアクセスを要求する難民受け入れ国や、権限のないユーザーによって、生体認証情報登録システムが不正利用される可能性があるとの批判もある。

コペンハーゲン大学でセキュリティー問題を研究するカーチャ・リンズコフ・ヤコブセン氏によれば、「センシティブな難民の生体認証データが、人道的目的の推進とは別の形で支援国によって共有・利用される」リスクがあるという。

ヤコブセン氏は、本来は善意によるものだろうが、人道的な難民対応において生体認証テクノロジーを使うことで、難民たち自身にとって本人の知らぬ間に、同意もなしにデータがアクセス可能になることでさまざまなリスクが生じる可能性があると語る。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の6月の発表によれば、UNHCRがロヒンギャ難民の情報を本人の同意なしに受け入れ国であるバングラデシュに提供、バングラデシュは本国送還の可能性に向けた確認のために、難民が逃れてきた国であるミャンマーとこの情報を共有したという。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、UNHCRによるデータ収集業務について、「UNHCR自身の方針に反し、難民をさらなるリスクに晒してしまった」と評している。

これに対し、UNHCRは声明の中で、データの共有に際しては「潜在的リスクを緩和するために特別な措置を講じ」、難民には「各自のデータを(バングラデシュ、ミャンマー両国政府と)共有することに同意するか、はっきりと確認している」としている。

<不釣り合いなリスク>

またプライバシー専門家は以前から、国連安全保障理事会が義務付けている、ソマリアからパレスチナに至る「テロ対策プログラム」における生体認証データの収集による影響を疑問視している。

プライバシー・インターナショナルは5月、米国がイラクとアフガニスタンにおいて、市民と反体制勢力を区別するために、「人権に対する影響を事前に評価することなく、また濫用を防ぐために必要なセーフガードを設けることなく」生体認証システムを導入していたと述べた。

今週、パニックに陥ったカブール住民が国外逃亡を試みる中、タリバンは、元兵士・政府職員、また多国籍軍のために働いた下請け事業者や通訳者に対する報復を行わないと述べている。

だがチマ氏によれば、そうは言っても、支援機関や政府当局は、身分証明システムやデータベースを注意深く監視し、ただちにデータを隠すかアクセスを制限しなければならない、という。

タリバンがこうしたデータを使って活動家や前政権関係者を標的とする懸念が生じたことで、テロ対策や国境管理における生体認証テクノロジーの利用の是非をめぐって緊急の議論が必要であることが浮き彫りになった、と人権活動家は指摘する。

欧州非営利法制センター(ECNL)のマルレーナ・ウィズニアック氏は、「社会的弱者や脆弱な立場にあるグループは、不釣り合いなリスクを負っている。特に、民族的・宗教的マイノリティー、難民・移民、紛争地帯の住民の場合はそれが顕著だ」と語る。

ECNLで上級法務顧問を務めるウィズニアック氏は、「残念ながら、こうしたネガティブな影響はまだ十分に認識されていないし、対処も進んでいない」と言う。

(翻訳:エァクレーレン)

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