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焦点:自由はどうなる――未来を憂うアフガニスタンの「Z世代」

[30日 ロイター] - 先週、サルギーさん(20)はの喜びの絶頂にあった。今年アフガニスタンの大学入学資格試験を受験した約20万人の学生の中で、トップの成績だったことが分かったのだ。

 8月30日、 サルギーさん(写真)は先週、喜びの絶頂にあった。今年アフガニスタンの大学入学資格試験を受験した約20万人の学生の中で、トップの成績だったことが分かったのだ。カブールで26日撮影。提供写真(2021年 ロイター)

サルギーさんは何カ月も首都カブールの自室にこもって勉強に励み、時には食事をとるのも忘れるほどだった。家族は太陽光発電で動くテレビの周りに集まり、結果発表を見守った。そうして、彼女の努力は報われたのだ。

「その瞬間、誰かが私に世界全部をプレゼントしてくれたような気がした。母は嬉しさのあまり泣きだし、私も一緒に泣いた」とサルギーさんはロイターに語った。この国の多くの人と同じく、サルギーさんの名前は1つで、氏・名の区別はない。

だが喜びもつかの間、ここ数週間の出来事を思い起こして、サルギーさんは暗い気持ちになっている。

アフガニスタンに残っていた米軍の大部分が撤退した後、タリバンはめざましい速度で国内を支配下に収め、8月15日には首都カブールを制圧した。

「私たちの未来はとても不確かだ。次は何が起こるのかと考えてしまう」とサルギーさんはロイターに語った。「自分は最も幸運で、最も不運な人間だと思う」

アフガニスタン国民のほぼ3分の2は25才以下だ。世代によっては、1996年から西側諸国に支援された軍閥によって打倒される2001年までアフガニスタンを支配したタリバンのことなど全く記憶にない。

当時のタリバン政権は厳格に解釈したイスラム法を執行し、女子生徒が学校に通うことや女性の労働を禁止し、公開処刑を行った。2001年以降もタリバン武装勢力は反政府闘争を続け、数千人のアフガニスタン国民が命を落とした。

カブールを制圧して以来、タリバンは学生たちを安心させようと、彼らの教育が中断されることはないと表明した。また、女性の権利も尊重するとして、有能な専門家たちに国を離れないよう呼びかけた。

だがアフガニスタンの「Z世代」、つまり、2000年の前後10年ほどに生まれた世代は、携帯電話やポップミュージックに馴染み、ジェンダーの壁もないことに慣れている。アフガニスタンの学生や若手専門家6人に取材したところ、Z世代の間では、自由の一部が奪われるのではないかとの不安が高まっているという。

「壮大な計画を立てていた。10年先まで、自分自身にあれこれと高い目標を課していた」と語るのは、大学院生のソサン・ナビさん(21)。

「人生への希望、変化への希望があった。だがほんの1週間でタリバンは国を掌握し、24時間で私たちの希望や夢は目の前で奪い去られてしまった。すべて無駄になった」

この記事のためにタリバンの広報官に質問を送ったが、今のところ回答は得られていない。

<得難い自由>

カブールにタリバン勢力が接近した8月15日の朝、ジャビドさん(26)は、卒業後に勤務していた母校の大学から急いで帰宅した。報復が怖いという理由で、フルネームは教えてもらえなかった。

ジャビドさんは、外国、特に米国の機関や政府と交わしたメールやソーシャルメディアのメッセージをすべて消去した。

米国出資による開発プログラムから取得した証明書のハードコピーは、自宅の裏庭に運んで焼却した。その仕事で授与されたガラス製のトロフィーも床に叩きつけて割った。

外国機関のために働いていたアフガニスタン国民の多くが、この2週間で国外への脱出を試みた。

タリバンについて親から聞かされる話以外に手がかりもないまま、若い世代の中には、現場での状況が実際はどうであれ、恐怖を感じるという声もある。

若い世代の多くにとって、タリバンの構成員を目にしたのは、カブール制圧後に街路を巡回する姿が初めてだった。

ロイターが取材した若者たちは、身体・生命の安全はさておき、やっとのことで勝ち取った他の自由が奪われるのではないかと心配している、と言う。

世界銀行によれば、2001年には12%だった中等教育の就学率は、2018年には55%に上昇した。

1局だけの国営ラジオ放送がもっぱら礼拝の呼びかけや宗教教育番組を放送していた時代とは打って変わって、今日のアフガニスタンには推定170カ所のラジオ局と100紙の新聞、数十局のテレビ局が存在する。

タリバン支配下の時代には存在しなかったスマートフォンとインターネットについては言うまでもない。大学入学資格試験に合格したばかりのエラハ・タミムさん(18)によれば、それによって若い世代がアフガニスタン国外での出来事に触れられるようになった、という。

「スマホとネットはいつも使っている」と彼女は言う。「リラックスしたいときはエンターテイメントを求めるし、世界の他の場所で何が起きているかを発見する手段でもある。これを失いたくない」

<危ぶまれる女性の権利>

タリバンが勝利を収めたことで特に懸念を深めているのが、一部の若い女性たちだ。

世界銀行によれば、小学校に通う女子生徒は、タリバン時代は実質的にゼロだったのが、80%以上に増えた。

タリバンは今回、女子生徒が学校に通う権利を尊重すると述べているが、ジャビドさんによれば、彼の大学の女子学生の多くは恐怖心から講義に出席しなくなっているという。

「自由で、学校に通うことができ、気ままに外出できる環境で育ってきた」とタミムさんは言う。「母は(タリバン支配下の)辛かった時代の経験を話してくれる。震え上がるような話だ」

ドーハに置かれたタリバンの連絡事務所に属するアマル・ヤシル氏は、大学入学資格試験で成績首位となったサルギーさんに対し、その優秀な結果と医学部への入学を実現したことについて、ツイッター上で祝意を表した。

サルギーさんは医師になるという夢を実現したいと願っているが、不安はつきまとう。

「女子学生が高等教育を受けることをタリバンが認め、女子学生に対する障壁を設けないのであればいい。さもなければ、私がこれまでずっとめざしてきた目標が危うくなってしまう」と彼女は言う。

ロイターが取材した中には、何とかして国を出たいという人もいる。ただし、その方法が分からない。

「私がここに残ることで、ポジティブな変化への希望が生まれるとすれば、他の大勢の若者たちと同じように、自分の命でも捧げる覚悟はある」とナビさんは言う。「でも、現実はそうではないことを誰もが知っている」

(翻訳:エァクレーレン)

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