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焦点:アフガン撤退の大混乱、米政府内で責任の押し付け合い

[ワシントン 1日 ロイター] - アフガニスタンに駐留していた米軍は、首都カブールから米国民やアフガン人協力者らを退避させる作戦を始めてから1週間経過した時点で、非常に思い切った措置を講じざるを得なくなった。

9月1日、 アフガニスタンに駐留していた米軍は、首都カブールから米国民やアフガン人協力者らを退避させる作戦を始めてから1週間経過した時点で、非常に思い切った措置を講じざるを得なくなった。写真は8月、アフガニスタンでの状況ついてスピーチするバイデン米大統領。後ろにオースティン国防長官、ハリス副大統領、ブリンケン国務長官、サリバン大統領補佐官が並んだ。ホワイトハウスで撮影(2021年 ロイター/Ken Cedeno)

避難者の行くあてがどこにもなく、カブール国際空港から離陸する全ての航空便を7時間にわたって止めたのだ。

米軍当局者はそれまでの数カ月間、国務省に対してイスラム主義勢力タリバンの報復を受ける恐れがあるアフガン人を受け入れてくれるよう他国を説得してほしいと要請してきた。

ところが、国務省はほとんどの国からそうした合意を取り付けられず、あわてて米政府が避難者の落ち着き先を探す羽目になった。

そうしたバイデン政権のドタバタぶりは、まさにアフガン撤退政策を巡る不手際の象徴で、その最たる例が「付け焼き刃」で策定された輸送機による避難計画だった。

結局、この計画で数千人のアフガン人協力者が取り残され、空港付近で起きたイスラム過激派組織による自爆攻撃で米兵13人と多数のアフガン市民が死亡して、輸送が中断する場面もあった。

アフガンでの混乱は、就任から7カ月のバイデン大統領にとって最大の政治危機をもたらし、政権内では責任のなすり合いや、誰が責めを負うべきなのかを問う声が渦巻いている。

もっともロイターが現職や元の政府高官、議員などを取材したところ、バイデン氏は、アフガン撤退政策にかかわった何人かの助言役トップを解任、もしくは降格させようとする気持ちはほとんど持っていない。むしろバイデン氏は、これまで政権の行動が妥当だったと強く主張してきた。

一方、国防総省内では、不満や怒りを抱く複数の当局者が、国務省と国土安全保障省に緊迫感がなかったことが、あわただしい空輸作戦につながったと非公式の場で非難している。

その国務省と国土安全保障省は、ホワイトハウスの意思決定の遅さをやり玉に挙げるという構図だ。

シンクタンクのアトランティック・カウンシルに籍を置く元外交官のダン・フリード氏は「責任を押しつけ合うのは、ワシントンの醜い風習だ。今回の場合、あらゆる方面に矛先が向かってもおかしくないし、恐らくそれぞれに正当性がある。この種の失敗は集団性があり、関係者の誰もがしくじったと言える」と述べた。

事情に詳しい関係者の1人は、退避作戦を擁護するとともに、国務省は国防総省から事態が切迫しているとの認識がないと心配されていることに気づいていなかったと明かした。

ホワイトハウスの複数の当局者は、ロイターの取材に対し、関係者の更迭は今のところ議論されてないと言い切った。だが、議会がアフガン撤退に伴う混乱について積極的な調査に乗り出すというのが、政権の見立てだと付け加えた。

あるバイデン政権の高官は、誰かを解任すれば、大統領がアフガン撤退で間違いを犯したと暗に認めたとみなされてしまうと解説した。

バイデン氏は8月31日に行った演説で、米軍撤退決定の最終的な責任は取るとした上で「一部にはもっと早く大規模な退避を始めていれば、より秩序ある退避ができたのではないかとの声がある。私は同意しない」と述べ、自らの判断は妥当だと強調した。

<政治判断>

上下両院で僅差ながら多数派となっている与党・民主党の関係者は、アフガン問題を党として調査し、公聴会を開くが、野党・共和党にバイデン氏攻撃の材料は与えたくないと話す。

議会の各委員会の民主党トップも、アフガンで起きた事態の検証を約束しつつも、20年間にわたる戦争全体に目を向ける方針を明確にしている。戦争は共和党のジョージ・W・ブッシュ政権を皮切りに、4つの政権下で展開してきた。

ホワイトハウスのサキ報道官は8月31日、政権側が議会に公開および非公開の状況説明を行っていると明らかにするとともに「20年間にわたる戦争である以上、掘り起こすべき問題が多々あるのは間違いない」と発言した。

民主党としては、バイデン政権が掲げる社会保障プログラム拡充やインフラ整備の財源確保、選挙権保護といった国内問題を優先的に推進したいし、国家安全保障の観点からは1月6日にトランプ前大統領支持者らが起こした議会議事堂襲撃事件の調査をアピールすることを望んでいる。

最終的に議会がアフガン問題にどう対応するかは、有権者の関心次第になりそうだ。8月30日公表のロイター/イプソス調査では、米軍のアフガン撤退を巡るバイデン氏の対応について、肯定的な見方をした国民は4割弱にとどまった。

サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は先月、アフガン政策において、何が間違っていたのかの事後的な検証をバイデン政権が行って、結果を公表すると表明している。

<誰が悪いのか>

アフガンから米軍が完全撤退するまでの最後の1カ月間は、情報から軍事作戦、外交、移民問題まで実に失敗の連続だった。その中でも重大な1つは、タリバンの進攻とアフガン政府軍の瓦解が、あれほどの短期間で起きるとは予見できなかったことだ。

米政府高官の1人は「ある意味で全員に責任がある」と打ち明けた。

何人かの共和党議員は、サリバン氏とブリンケン国務長官が退避作戦の混乱を招いた責任が最も大きいと指摘し、彼らの辞任を要求。トランプ前政権の下で昨年、タリバンとの停戦合意をまとめたザルメイ・ハリルザド特使についても、共和党がバイデン氏に解任するよう迫っている。

複数の国防総省当局者はロイターに、国務省がアフガニスタンの現状に疎かったとみられ、民主政府に過度の信頼を置いていたと語った。

確かにブリンケン長官は6月の議会公聴会で、身の危険があるアフガン人を国外に退避させることをさまざまなシナリオの1つとして政府が検討しているかと質問されると「治安情勢が著しく悪化すれば、それは十分あり得ると、以前にわれわれは議論した。(しかし)、金曜から月曜(のような短い間)にそんな事態が発生するとは思っていない」と断言した。

タリバンがアフガンの3大都市のうち2つを手にしたのが8月13日の金曜で、首都カブールを制したのはその2日後だった。

(Idrees Ali記者、Patricia Zengerle記者、Arshad Mohammed記者)

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