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アングル:欧州観光名所の民泊ビジネス、パンデミックで後退

[リスボン 8日 ロイター] - 新型コロナウイルスによるパンデミックは、欧州各地の都市が失敗を重ねてきた試みを成功させてしまった。都市中心部から膨大な数の民泊施設を一掃し、地元住民の家賃コストを、場所によっては実に15%も引き下げたのである。

 新型コロナウイルスによるパンデミックは、欧州各地の都市が失敗を重ねてきた試みを成功させてしまった。都市中心部から膨大な数の民泊施設を一掃し、地元住民の家賃コストを、場所によっては実に15%も引き下げたのである。写真はリスボンで昨年3月撮影(2021年 ロイター/Rafael Marchante)

欧州の各都市は長年にわたり観光客を歓迎していた。だが近年では、民泊仲介サイトのエアビーアンドビーに登録される物件が急増したせいで多くの住民が地元の住宅市場から締め出され、歴史ある街区が暮らす人のいない空間へと変わってしまったという批判が生じていた。

リスボン、バルセロナ、プラハ、ベニスなどの都市でロイターの取材に応じた不動産管理会社や物件オーナーによれば、パンデミックによる観光客の急減を受けて、民泊施設の一部では、観光客の代わりに中長期の入居者を受け入れる、自身の居住用とする、あるいは物件そのものを手放してしまうといった動きが生じている。

バケーションレンタル市場を分析しているエアDNAのデータによれば、エアビーのサイトで、欧州の50大都市で2月中に利用可能だった登録物件数は、前年同月比で21.9%減少した。

エアビーでは、人々は大都市にある観光名所よりも小規模な街や都市に向かうようになっており、そうした旅行パターンの変化への対応を進めたという。同社広報担当者のアンドルー・カステラノ氏はロイターの取材に対し、「フランス、ドイツ、ポルトガル、スペイン、チェコ共和国の登録物件数を合計すると、2019年末よりも2020年末の方が増加している」と語った。

観光の行き先となる欧州主要都市の民泊ホストの一部は、観光客が戻ってくればエアビーへの登録を再開することを予定しているが、民泊ビジネスから完全に手を引く動きもある。

「観光がもっと早く復活していれば、こうした判断はしなかっただろう。だが、いつ収入が入ってくるか不透明なままでもう1年過ごすことはできない」と語るのは、リスボン市内グラサ地区のマンション4戸をエアビーなどの民泊仲介サイトで賃貸していたバネッサ・ロラさん(40)。観光客が来ないため彼女自身の家賃を払うことができず、契約終了の手続を進めている。

エアDNAのデータによれば、ベニスでは1月、エアビー及び競合するバーボ(Vrbo)の予約件数合計は前年比で67%減少した。住民運動団体は、この機会を活かして、民泊賃貸日数に上限を設ける、空き家を低価格住宅に転用するといった地元住民救済策を講じるよう政府に求めている。

住民の権利擁護団体「グルッポ25アプリル」のマルコ・ガスパリネッティ氏はロイターに対し、「パンデミック前、ベニスの家賃は普通の人には手が出ないほど上昇していた」と語り、原因は民泊用の短期賃貸にあるとした。人口わずか6万人のベニスには、例年であれば年間2000万人もの観光客が訪れる。

「毎日3万人が市外から通勤してくるが、市内に住むような余裕はない。今ならその状況を変え、単なる観光客向けの野外テーマパークでないベニスを実現できるかもしれない」

<急減する登録物件>

エアビーは先月、株式公会以来初となる収益報告のなかで、予約件数が予想を上回ったことを明らかにした。地方のリゾート地の好調や北米での需要回復に支えられた。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)によるロックダウン(都市封鎖)や渡航制限の中で、最も事業が低迷したのは欧州、中東、アフリカ地域だった。

欧州各都市の首長らはここ数年、都市中心部でのバケーションレンタル物件の増加に歯止めをかけようと苦慮してきたが、賃貸日数や1棟のなかで民泊に使える戸数を制限しようにも、必要なデータが不足していた。

欧州連合統計局(ユーロスタット)によれば、エアビー、エクスペディア、トリップアドバイザー、ブッキングドットコムは昨年3月、予約を受け付けた宿泊日数・人数に関するデータの提供に同意しており、2020年の数値は今年下半期には得られる見込みだという。

昨年9月、22都市の首長はマルガレーテ・ベステアー欧州委員(競争政策担当)に共同書簡を送り、「市内地域での居住可能性を確保」できるようにするため、都市行政当局とのデータ共有を拡大するよう促した。

共同書簡に署名した都市の1つであるポルトの市会議員リカルド・バレンテ氏は、ロイターに対し「観光が復活したら、持続可能なものにしなければならない。バケーションレンタルが全部ダメというのではなく、この街を、観光地であると同時に生活や労働も可能な場所にしていけるよう制限を設けるようなモデルを生み出さなければ」と語った。

だが少なくとも当面は、COVID-19を理由としたロックダウンと渡航制限が、一部の都市当局の仕事を肩代わりしている。

リスボンでは、歴史ある市街中心部でエアビーの登録物件が大きく増加していたが、ウェブサイト「インサイドAirbnb」によれば、パンデミックが始まって以来、市内で約2万5000件登録されていた物件のうち、約5000件が消えたという。

不動産データベースの「コンフィデンシャル・イモビリアリオ」のデータでは、2020年3月から12月にかけて家賃は15%低下している。主として、これまでバケーションレンタルに回っていた数千件の物件が急に出回り始めたことが原因だという。

「インサイドAirbnb」によれば、プラハではエアビーの登録物件数が1万4500件強から8000件以下に急減した。不動産デベロッパーのトリジェマの報告では、家賃は約8%下落している。

プラハで家主業を営んでいるオンドレイさんは、エアビーで貸し出していた2部屋の持ち家と、サブリースするために借りていた3部屋を手放した。「月2万ドル(約220万円)ほどの赤字になっていたうえ、規制によって状況が困難になっていた」とオンドレイさんは語る。

「エアビーのブームは終わりだ」

これに対し、エアビー側は需要動向が変化しても事業は十分に対応できることが判明した、としている。同社広報担当のカステラノ氏は「宿泊客は大都市の物件を離れているが、(他の地域で)一軒家を契約している」と指摘。「エアビーの事業は本来的に、顧客の需要がどこにあっても適応する」と語り、同社のビジネスモデルが顧客の希望に柔軟に応じることができる点を強調した。

<減少は恒久的か>

都市中心部の物件オーナーの誰もが民泊を諦めたわけではない。ポルトガルのデータを見ると、エアビーの登録物件は数千件も減少したが、民泊ライセンスを放棄したオーナーは114人だけだ。2019年に地元議会が新規発行を禁じたため、民泊ライセンスは市内の歴史的市街では稀少な資産になっている。

税制上の優遇措置や最低5年の契約期間を保証することで、民泊物件のオーナーを福祉用住宅市場に誘導する制度もあるが、今のところ反応は鈍い。それぞれの市議会によれば、リスボンでは34戸、ポルトでは12戸しか転用されていないという。

むしろ一部の物件オーナーは、地元の賃貸仲介サイトや独自の契約チャネルを使って長期の入居者を見つけている。

エアビーは先月、「民泊ホストによって可能になったこと」と題する3本の動画を発表した。同サイトを利用しなくなった物件オーナーを呼び戻す試みであるという見方が一般的だ。

だが、観光の再開を待つ余裕のない人もいる。エアDNAのデータを見ると、ローマ、リスボン、ブダペストの先行予約件数は、3月末時点での昨年の水準より85─90%低い。対照的に、米国の民泊仲介サイト全体で見ると、昨年をわずかに2%下回るだけだ。

ポルトガルで民泊を推進する協会のトップを務めるエデュアルド・ミランダ氏は、観光が再開されても、エアビーを利用していた物件オーナーの約15%は二度とリスボンの市場に戻らないだろうと予想する。

「受難の年がさらに1年続く」とミランダ氏は言う。「この夏のかき入れ時は失われてしまうだろう。もし夏がダメなら、その年はダメだということだ。民泊ビジネスに残るのは、本当にやる気のある人だけになる」

(Victoria Waldersee記者)

(翻訳:エァクレーレン)

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