[香港 4日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 話がうますぎると感じたなら、その勘はたいてい当たっているものだ。中国の電子商取引(EC)最大手、アリババ・グループ・ホールディングが4日発表した4─6月期決算は売上高が前年比横ばいとなり、減収を想定していた市場の予想を上回った。新型コロナウイルス感染抑止のためのロックダウン(都市封鎖)が緩和された今、個人消費は増えるとの期待が広がっているが、よく見ると赤信号も灯っている。
今回の決算は、中国の「ゼロコロナ」政策による打撃を浮き彫りにした。全国各地が封鎖された結果、「4月と5月は比較的低調だった」とダニエル・チャン最高経営責任者(CEO)は述べたが、低調どころではない。売上高全体の35%を占める最大部門、国内ECの歩合・広告収入は4―6月期、前年同期で10%も落ち込んだ。この部門が足かせとなり、全体の営業利益は約20%減の37億ドルとなった。
同社は業績不振の原因として、ショッピングサイトの取り扱い件数が減少したことと、物流のボトルネックにより注文キャンセルが急増したことを挙げた。しかし現在は上海や北京などの大都市で封鎖が解除されたため、回復の兆しが見えるとの楽観的なトーンを打ち出した。
ロックダウンの解除を受け、政府の6月の消費者信頼感指数はわずかに上昇したものの、相変わらず過去最低水準に近い。民間セクターも財布のひもを締めている。チャイナ・ベージュブック・インターナショナル(CBBI)が先月、企業1000社以上を対象に実施した調査では、幅広い業界で投資、採用、借り入れ活動の低下が示された。
景気減速時に企業が真っ先に削る支出の1つがマーケティング費だ。アリババは売上高の明確な内訳を示していないが、同社の中心的な顧客であるオンライン広告主は既に予算を縮小しており、減速は長引くとみられる。
こうした現象は既に世界で起きている。広告事業の巨大企業、米メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)は、第2・四半期の売上高が1%減少したと発表した。テンセント・ホールディングス(騰訊控股) や動画アプリ「快手」など、中国のインターネット関連企業も広告収入が減少すると警告している。リフィニティブによると、テンセントの広告収入は4―6月期に20%減少する見通しだ。アリババの実態は、中国経済の苦境がまだしばらく続くことを告げているようだ。
●背景となるニュース
*アリババが4日発表した4─6月期決算は、売上高が2060億元(307億ドル)と、前年同期からほぼ横ばいだった。リフィニティブがまとめたアナリストの予想平均2032億元は上回った。調整後利益は30%減の303億元。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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