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コラム

コラム:アルカイダ広報誌の「意外」な中身

[3日 ロイター] - 国際武装組織アルカイダは2010年、オンラインマガジン「インスパイア」を英語で創刊した。筆者はその最新号を読んでみた。大半は予想にたがわぬ内容だったが、なかには意外なことも書かれていた。

 9月3日、国際武装組織アルカイダのオンラインマガジン「インスパイア」最新号は、大半は予想にたがわぬ内容だったが、なかには意外なことも書かれていた。 写真はリオデジャネイロの衣装工場に並ぶビンラディンのマスク。2011年10月撮影(2014年 ロイター)

英米の若者を対象とする同誌は、グラフィックスを上手に使い、宗教的もしくは聖戦を鼓舞するような記事や爆弾の作り方などを掲載。半定期的にこれまで12回発行されている。

爆弾の作り方は最も論議を呼びそうなトピックだろう。よくある材料を使っての爆弾作りについて、写真付きで懇切丁寧に解説してある。さらには、人混みの多い場所でその爆弾を使用することを奨励している。

「インスパイア」の発行者は、米バージニア州のイスラム教聖職者で、のちに急進化した米国籍のアンワル・アルアウラキ師とみられていた。アルアウラキ師と彼の10代の息子は2011年、イエメンで米国の無人機により殺害されたが、同誌の発行は続いている。アルアウラキ師の思想は死後も同誌に掲載され続け、今でも影響力がある。テロとの戦いに失敗したことについて簡単に言えば、大方はこれで説明がつく。

「インスパイア」を読んだり所有したりすることは英国とオーストラリアでは違法となりかねず、また、米国では同誌を閲覧することで監視対象とされる可能性もあるので、筆者が代わりにその内容の一部を伝えよう。

最新号は次のような尋常でない編集注記から始まっている。

「米国政府はリュックサックに入った圧力鍋爆弾から市民を守ることができなかった。果たして自動車爆弾を阻止する準備はできているのだろうか。故に、イスラム共同体への、特に米イスラム社会に対する責任として、『インスパイア・マガジン』は自動車爆弾の簡単な作り方を謹んでお教えしよう。何といっても、台所で準備できる手軽さなのだ」

公平を期すなら、台所でできるといっても、圧力計やタイヤバルブのステムといった普通なら台所にはないものをそろえる必要はある。ただ、そうしたものはすぐに手に入れることもできるだろう。

また同誌には、時事問題に関する著名人や一般人のコメントも掲載されているが、その大半は米外交政策に対する批判で占められている。

つたない英語で書かれた血なまぐさい聖戦的な内容が多いとはいえ、そればかりでもない。真面目だが期せずしてユーモラスな面ものぞかせるこうした方法が、不満を抱く若者に語りかけるのに実際には有効ではないのではないかと、疑問に思う人もいるだろう。

先ほど約束したにもかかわらず、実は筆者は「ニューヨーク、ワシントン、ペンシルベニアの聖戦から12年が過ぎた」から始まる記事を一字一句読んだわけではない。執筆者が「オバマの飼い犬のボーが、税金で1億人の米国民よりいい食べ物を食べていても悲しくないのか」と尋ねたとき、最後まで読まなくても何を言おうとしているのか分かってしまった。「インスパイア」誌に掲載されている記事の大半がそのような感じで、物思いや理解不能なとりとめのない文章、コーランからの引用、反ユダヤ的内容などが至る所にちりばめられている。

だが、話題が自動車爆弾作りになると、話は至って大真面目になる。同誌によると、「聖戦に備える」意欲的な戦士に自宅で簡単に爆弾を作る方法を「オープンソース」で公開している。筆者は化学者ではないが、写真付きの1つ1つ懇切丁寧に教える説明で分かりやすいように見えた。爆発燃焼の仕組みや圧力の計り方、爆弾の種類(時限か手動か)による点火スイッチの違いなど、理論は実践的に解説される。

不気味さを感じる点は何もないといって「インスパイア」誌のページを閉じるのはフェアではないかもしれない。結局、笑いで始まり、大真面目に終わる。同誌に関して過大もしくは過小評価し、誇張して捉える記事が大半だろう。だが、同誌が達成しつつある功績を考えてみてほしい。それは、心から恐れを抱かせることだ。それは良いプロパガンダの成し得ることであり、頭から離れない。「インスパイア」誌は良いプロパガンダと言える。

*筆者は米国務省に24年間勤務。著書に「We Meant Well: How I Helped Lose the Battle for the Hearts and Minds of the Iraqi People」「Ghosts of Tom Joad: A Story of the #99 Percent」がある。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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