September 8, 2018 / 12:55 AM / 9 days ago

焦点:アマゾンが狙うチリの星空、天文データを通販に応用も

[サンティアゴ 4日 ロイター] - ネット通販最大手の米アマゾン・ドット・コム(AMZN.O)が、南米チリの巨大望遠鏡が収集する膨大な量のデータの利用・保管に向けて、同国と協議を行っていると、チリ当局者らがロイターに明らかにした。アマゾンにとって、新たな人工知能(AI)ツールを開発するための豊かな土壌となる可能性がある。

 9月4日、ネット通販最大手の米アマゾン・ドット・コムが、南米チリの巨大望遠鏡が収集する膨大な量のデータの利用・保管に向けて、同国と協議を行っていると、チリ当局者らがロイターに明らかにした。写真は銀河系。チリのプジェウエ国立公園で2008年5月撮影(2018年 ロイター/Ivan Alvarado)

中南米地域において、クラウドコンピューティング事業の成長を加速させ、データ処理能力を向上させるのがアマゾンの狙いとみられる。

3250億ドル(約36兆円)規模のチリ経済を、銅生産への依存から脱却させたい中道右派のピニェラ政権は先週、具体的なスケジュールは示さずに、自国の望遠鏡から得られたデータをクラウド上の仮想観測所に保管する計画を発表。天文データ革命の可能性について触れたが、詳細は明らかにしなかった。

クラウド上で天文データを管理する企業について、政府はコメントしなかった。

データセンターを設立して情報を保管するためのインフラをチリの企業と政府に提供し、クラウド上にデータを保管する構想について、アマゾン幹部がチリ政府と2年間協議していると、政府の投資誘致機関インベスト・チリの当局者はロイターに語った。

その協議には、同社のクラウドサービスであるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が天文データを管理する可能性も含まれている。天文学者クリス・スミス氏は、AWSとチリの経済・振興・観光省当局者がこの半年に交わした電子メールのやりとりに基づきこう明らかにした。同氏は当時、米連邦政府が資金提供するチリ望遠鏡プロジェクトのうち3つを管理する米天文学研究大学連合(AURA)派遣団の責任者を務めていた。

AWSで中南米、カリブ海、カナダの公共部門を担当するゼネラルマネジャー、ジェフリー・クラッツ氏は、ピニェラ大統領との協議のためチリを訪れている。クラッツ氏は自社が天文データに関心を寄せていることを確認したが、現時点で発表することは何もないと話した。

「チリはAWSにとって非常に重要な国だ」とクラッツ氏はロイターに電子メールで語った。「天文学と望遠鏡の素晴らしい成果に脱帽している。イノベーションとテクノロジーにおける協調のたまものだ」

「クラウドを使えば、チリの望遠鏡はIT管理という重荷からの解放という恩恵を受けることができる」と同氏は付け加えた。

AWSは、アマゾン全体のビジネスの中でも急成長している分野だ。7月に発表した第2・四半期決算において、AWSの売上高は前年同期比49%増の61億ドルで、全体の売上高の12%を占めていると明らかにした。

<天体観測から万引き犯追跡まで>

地球上でもっとも乾いた北部アタカマ砂漠上空の澄み切った空のおかげで、世界の天文分野への投資の7割がチリに集まっている。前出のスミス氏によると、チリには5年以内に世界で4基ある次世代望遠鏡のうち3基が置かれることになる。

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天文データのクラウド管理を主導する同氏と経済省当局者は、同データを地上の問題にも活用できないか検討している。

天文データのクラウド管理プロジェクト用に開発されたツールの中には、万引きや公共交通機関の不正乗車、絶滅危惧種の動物の追跡といったさまざまな目的に応用できる可能性のあるものがあると、当局者のフリオ・ペルトゥゼ氏は、クラウド上に仮想観測所を構築することを発表するイベントでロイターに語った。

また、同様のテクノロジーを医療や金融といった分野に適用し、膨大なデータの中から異常を見つけ出すことも可能だと、スミス氏は付け加えた。

最高経営責任者(CEO)のジェフ・ベゾス氏が宇宙に高い関心を持っていることで知られるアマゾンは、すでにハッブル宇宙望遠鏡のデータやオーストラリアの国際電波天文学研究センターにクラウドプラットフォームを提供している。

一方、競合会社である米アルファベット傘下のグーグル(GOOGL.O)は、すでにチリの大型シノプティック・サーベイ望遠鏡(LSST)に関わっている。パチョン山で建設されている同望遠鏡は2022年に完全運用される予定。グーグルはほかにも同国にデータセンターを構える。

<巨大データベース>

チリが「アストロインフォマティクス・イニシアチブ」と呼ぶ、天文データの可能性を探るためのプロジェクトにより、AWSは、LSSTのようなプロジェクトで天文学者が行っている研究にアクセスすることが可能になると、スミス氏は指摘する。

「われわれは、天文学者が求める3つの星を探すために、膨大な星のデータベースを調べなければならなくなる」と同氏は述べたが、それはターゲット広告のために適切な対象を膨大なデータベースから探し出すのとあまり変わらないと付け加えた。

「したがって、LSSTや天文界で開発され得るツールは、アマゾンが身を置く通販の世界で応用できる可能性がある」

ロイターの取材を受けてから、スミス氏はAURAを率いる職を離れ、現在は米国立科学財団(NSF)で新たな仕事に就いている。

天文データを巡るプロジェクトで役割を担うことで、アマゾンは、浸透を目指している市場で足場を築く切符を手にすることになる。クラウドコンピューティング・ビジネスでマイクロソフト(MSFT.O)やグーグルを上回り、世界シェアの3分の1近くを占めるアマゾンだが、中南米では研究施設を含む公的機関の浸透に苦戦している。

AWSは、中南米事業の規模について一切の情報提供を拒否した。

バレンテ経済相は先週の発表イベントで、「きれいなチリの天空は、宇宙観測だけでなく、そのような観測から生み出されるデータの面でも多大な可能性を秘めている」と語った。

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

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