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コラム

コラム:事実上の自民勝利、経済対策に岸田カラー発揮できるか 問われる手腕

[東京 1日 ロイター] - 自民党は衆院選で261議席を獲得し、単独で衆院の絶対安定多数を確保した。公示前の276議席は下回ったものの事実上の勝利と言っていいのではないか。岸田文雄首相は政治的指導力を強化し、「岸田カラー」を発揮できる地歩を固めた。ここからの課題は、成長力を失いつつある日本経済の活力をどう取り戻すかだ。

 自民党は衆院選で261議席を獲得し、単独で衆院の絶対安定多数を確保した。公示前の276議席は下回ったものの事実上の勝利と言っていいのではないか。写真は岸田文雄首相、10月31日に自民党本部で代表撮影(2021年 ロイター/Behrouz Mehri)

近く編成される2021年度補正予算案で、経済活性化のためにどのような目玉政策を盛り込むのか、早速、岸田首相の手腕が問われることになる。早くも与党内からは、「真水」が10兆円を大幅に上回る経済対策を求める声が出ているが、規模拡大が先行し、成長に直結する政策が不在であれば「水漏れ」の経済対策になりかねない。また、大規模な赤字国債発行が不可避な中で、日本の長期金利がどのように反応するのかという点も注目だ。

<甘利幹事長の後任、政権の性格決める>

今回の衆院選を総括すれば、261議席を獲得した自民党が事実上の勝者だ。自民党単独で衆院の常任委員長を出し、常任委員会の委員の過半数を確保できる「絶対安定多数」を確保したからだ。

自民・公明連立政権への不満の受け皿になったのが、公示前の11議席から41議席へと大躍進した日本維新の会と言える。立憲民主党は公示前の109議席を下回る96議席にとどまり「負け組」の筆頭になった。

岸田首相にとって、小選挙区で落選し比例代表で復活当選した甘利明幹事長の処遇が選挙後に対応する最初の課題になる。自民党の幹事長が小選挙区で落選したのは初めてで、幹事長の交代は確実とみられる。

自民党総裁選後の党・内閣人事では、甘利氏に近い山際大司郎・経済再生相、小林鷹之経済安保相が起用され、甘利氏の影響力が強い体制だった。このため後任に誰を起用するかで、衆院選後の岸田政権の「性格」が決まると言っていいだろう。

与党の一部には、苦戦観測もある来年7月の参院選をにらみ、国民的に人気のある河野太郎・同党広報本部長の起用を求める声もあるようだが、異論も噴出しそうで、岸田首相の手腕が早くも問われる局面になりそうだ。

<経済対策、脱炭素・DX投資支援を目玉に>

11月上旬に召集される特別国会では、まず、首相指名選挙が行われ、第2次岸田内閣が発足する見通し。岸田首相は衆院選開票中のテレビ番組で「補正予算は12月のできるだけ早い時期に成立させる」と述べており、特別国会の会期を1カ月以上確保し、そこで審議・成立を図ると見られている。

ただ、その規模や中心となる「目玉政策」については、衆院選の期間中も明確にはなっていなかった。選挙前から与党内では、足元で生じているGDPギャップ22兆円を埋める規模の経済対策と補正予算が必要だとの声があった。衆院選開票の段階で、与党内では国内総生産(GDP)の付加価値を直接増やす効果のあるいわゆる「真水」を30兆円規模にするべきとの見方が出ていた。

しかし、規模先行の発想では、数兆円単位の使い残しが発生した20年度補正予算の「轍」を踏むことになりかねない。そのような事態を回避するためには、1)新型コロナウイルス感染で経済的な被害を受けた企業、事業者、個人への経済的支援、2)成長力が衰えた日本経済を立て直すための政策対応──に分けて、ニーズにマッチした支出を行うべきだ。

特に国際競争力が低下した日本経済を復活させるための「ワイズスペンディング」が不可欠だ。日本の輸出額は2007年に83兆9300億円を記録して以来、1回もこの水準を上回ったことがない。日本企業が海外展開を積極化させた影響も大きいが、日本からの輸出が増大しないことには、日本で生活する人々の雇用や所得の増加につながらない。

そこで企業の研究・開発への大胆な支援策が必要になると強調したい。脱炭素への取り組みは世界的な競争になっており、遅れているDX(デジタルトランスフォーメンション)対応とともに、この分野での設備投資を活発化させる「呼び水」になる政策を目玉に据えるべきだ。

また、菅義偉前首相の時代に検討が進めれた大学の先端的な技術などの研究に運用益を充てる「大学ファンド」は、早急に実現させるべき項目に挙げたい。

<赤字国債発行、長期金利は日銀が抑制>

さて、ここで問題になるのが財源だが、全額が赤字国債の発行になるのは避けられない。仮に20兆円の国債発行増があると仮定して、日本の長期金利は跳ね上がるのだろうか──。

筆者は、日銀がイールドカーブコントロール(YCC)政策の下で国債購入量を増加させるので、急上昇はないと予想している。また、日銀が現実に購入量を増加させる前の段階でも、購入増加が予想されるため、金利が跳ね上がるリスクも小さいだろう。

ただ、米連邦準備理事会(FRB)が年内にもテーパリング(量的緩和の段階的縮小)を決めるとみられる中で、日銀が長期金利をゼロ%付近に抑え込むことが内外に鮮明となり、円安が進みやすくなるかもしれない。黒田東彦日銀総裁は10月28日の会見で、円安は日本にとってプラスと明言しており、政府・日銀から円安けん制が出てくることもないだろう。

他方、原油価格が上昇する中での円安は、企業にとってコスト増、消費者にとって輸入関連品目の値上げとなって跳ね返ってくる。日本経済がどうなるかは、大規模な経済対策の効果と輸入コスト増大との綱引きになりそうだ。

●背景となるニュース

・ UPDATE 7-自民単独で絶対安定多数、年内の補正成立に意欲 野党共闘実らず

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(編集 橋本浩)

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