[ワシントン 21日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国が貿易面で抱える問題は、トランプ米大統領がいなくなったとしてもずっと先まで続いていく。
現在の米中貿易協議でトランプ政権が求める厳しい条件を受け入れたとしても、トランプ氏が来年の選挙で敗れれば、一切なかったことにできるのではないか、と中国側は算盤をはじいている。ところが野党・民主党の大統領候補指名が有力視される人物、例えばシェロッド・ブラウン上院議員やバーニー・サンダース上院議員らもまた、対中強硬派なのだ。
中国はこれまで長らく、トランプ氏がちらつかせる関税のおどしから目をそらしてきた。当初、中国指導部はトランプ氏の関税への執着は単なる演技だと思っていただけに、2018年に実際に発動されたことでショックを受けた。そして米中が21日、知的財産権保護や技術移転強要などの問題での合意を目指した協議を再開する中で、中国はたとえ不利な条件で合意しても来年の選挙で別の米大統領が誕生すれば、そうした条件の撤回は可能だと期待するようになっている、と関係者はBREAKINGVIEWSに打ち明けた。
ただ、米民主党の多くの急進派は、トランプ氏の強腰を支持しており、対中貿易問題は与野党の足並みが揃うめずらしい分野であることを示している。ブラウン氏もサンダース氏も、トランプ氏による中国製品への関税適用に賛成した。やはり民主党の大統領候補指名争いで一目置かれているエリザベス・ウォーレン上院議員は、これらの関税は米国の通商政策改善に必要な取り組みの一部だと発言。ブラウン氏に至っては、トランプ氏の関税発動権限を制限しようとする共和党の一部議員の動きを阻止したほどだ。
こうした急進派は、民主党を左傾化させつつある。比較的穏健派だったカマラ・ハリス上院議員でさえ、大統領選出馬を表明して以降、国民皆保険制導入などよりリベラル色の強い政策を掲げるようになった。ハリス氏をはじめとする中道路線の候補は今後、指名争いを勝ち抜くために貿易問題でも強硬姿勢にならざるを得なくなるだろう。2016年にヒラリー・クリントン氏が、サンダースの挑戦に対抗する上で自由貿易協定への支持撤回を迫られたのと同じように。
中国が直面している問題は、米国に限った話ではない。欧州と日本も知的財産を盗まれたり、技術移転を強要されることに不満を募らせている。そのため米国と協調し、中国により厳しく対処する方法を含める形で世界貿易機関(WTO)の改革を進めているところだ。中国としては、どちらを向いても困難な貿易環境から逃れる道は見出せない。
●背景となるニュース
・中国の劉鶴副首相が率いる代表団は21日、3月1日までの合意を目指して米国側との閣僚級貿易協議を再開した。期限内に合意に達しなければ、米国は2000億ドル相当の中国製品向け関税率を引き上げる。
・米中両国は協議において、知的財産権保護や技術移転強要、サイバー攻撃による情報窃取、サービス、為替、農業、非関税障壁を対象とする覚書の作成に取り組んでいる、とロイターが伝えた。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」