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焦点:米バイデン政権の対コロナ戦略に穴、医療専門家が批判

[20日 ロイター] - クリスマスと新年を控えて米国で新型コロナウイルスの感染が再燃し、バイデン大統領の対策が医療専門家から批判を浴びている。もっと危機感を持って検査やマスク着用、世界全体へのワクチン配布を進めるべきだとの声が上がる。

 12月20日、クリスマスと新年を控えて米国で新型コロナウイルスの感染が再燃し、バイデン大統領の対策が医療専門家から批判を浴びている。ホワイトハウスで16日撮影(2021年 ロイター/Evelyn Hockstein)

1月に就任したバイデン氏は新型コロナ感染の抑制を約束し、大規模なワクチン接種計画を進めて経済対策も打ち出した。新型コロナの深刻さを過小評価し、さまざまな予防措置を無視して医療専門家に耳を傾けなかったトランプ前大統領とは対照的だ。

しかし現在、米国の新型コロナ死者数は累計80万人を記録し、人口1人当たりの数としては先進7カ国(G7)で最悪となった。うち30万人はバイデン政権下での死者だ。オミクロン変異株の登場と、休暇シーズン到来で人々が集まる機会が増えたことにより、一部地域では新型コロナの入院患者数が過去最多を記録している。

米疾病対策センター(CDC)によると、米国のワクチン接種適格者のうち、2回接種を終えた割合は65.2%。共和党主導の反対運動が原因で50%に満たない州もある。3回目のブースター接種を終えた割合は全体の30%に届かない。

医療専門家に聞くと、政権は(1)マスク着用を推進する(2)企業に圧力をかけて検査コストを下げる(3)ワクチン技術を世界と共有する(4)大々的なコロナ抑制策のための予算を増やす──などの対策が必要だ。多くの専門家は、政権はワクチン接種に集中するあまり、こうした措置をないがしろにしてきたと言う。

エール大学の疫学准教授、グレッグ・ゴンサルベス氏は「緊急時に国民に犠牲を呼びかけるリーダーシップはどこに行ったのか。(バイデン氏は)今晩にもテレビに出て『マスクを着用してほしい』と語るべきだ」と述べた。

政権は、学校や企業を閉鎖せずにオミクロン株と闘う手段はあると繰り返し訴えてきた。そして無料検査の拡大とブースター接種の普及を約束している。

しかしブロードウェイの劇場や大学、プロスポーツリーグの試合などでは既に中止や延期が決まり、感染再燃の現実を見せつけている。

<政治的問題>

バイデン氏の新型コロナとの闘いで、最も大きな壁は政治的なものだ。

無料で安全なワクチンは潤沢だが、ソーシャルメディアでの誤情報拡散と接種への抵抗運動がバイデン氏の接種呼びかけを妨害する。こうした動きの先頭に立つのは主に共和党政治家や保守派メディアだ。

政権は早くから、ワクチン関連の誤情報を広めた企業への取り締まりを約束しているが、誤情報の拡散は絶えない。

ベイラー医科大学・国立熱帯医学校のピーター・ホッテズ学長は「反ワクチン運動は何よりまず政治運動であるという事実を、政権は過小評価しているようだ」と指摘。米国の若年層と中年層を死に至らしめている一番の要因は「極右による科学に対する敵意だ」と言う。

政権はこの問題から政治色を排除しようと、保守派のフォックス・ニュースにも医療専門家を送ってきた。フォックスのコメンテーターがワクチンとマスク着用への懐疑心を視聴者に植え付けたにもかかわらずだ。

バイデン政権とフォックスの見解は時に大きく異なるが、政権はオミクロン株戦略を含め、公衆衛生情報を広めるメディアとしてフォックスを重視していると政権高官は言う。

バイデン氏は共和党州知事らと言い争ってきたが、最近では政治的な物言いを後退させ、人々に直接ワクチン接種を呼びかけることに専念している。16日には、ワクチン未接種者にとって「重症と死」の厳しい冬が訪れるだろう、と警鐘を鳴らした。

<検査とマスクの供給不足>

バイデン氏は今月、民間の医療保険会社に対し、店頭で新型コロナ検査キットを買って自宅で検査する顧客1億5000万人にコストを還付すよう命じると述べた。保険未加入者のために5000万回分のテストを無料提供することも表明した。

しかし、これでは不十分だとの批判もある。

サスカチュワン大学(カナダ)・ワクチン・感染症機構のウイルス学者、アンジェラ・ラスムーセン氏は「保険未加入の米国人はもっと大勢いる。それに、われわれが迅速検査を1回受けるだけ、という想定はどうなのか。こんな政策ではまったくもって不十分だ」と言う。

職場に復帰する従業員の検査需要が急増したことで、秋には全米で迅速検査キットが不足して地方自治体の検査プログラムのコストが上がった。

最近は感染急拡大により、国中で検査に長い行列ができるようになった。薬局やオンラインでの検査キット入手も困難になっている。

政府は、全国に数万カ所の無料検査所があり、在宅検査キットの供給は4倍に増え、新たに十数種類の迅速検査キットが承認されて市場に出回っている、と説明している。

元CDCディレクターのトム・フリードマン氏は、政府はマスク着用をもっと積極的に推進する必要があると言う。マスク料金の補助、あるいはマスクの配布も役に立つかもしれないとしている。

「今のところ、マスクとワクチンは政府が介入すべき最も重要な問題だ。人々は購入するマスクの品質を確かめることも、手ごろな価格でマスクを買うことも未だに極めて難しい」とフリードマン氏は語った。

一方、発展途上国では大半の人々がまだワクチンを接種しておらず、今後も新たな変異株が出てくる余地は残る。専門家は、バイデン政権は諸外国の人々と米国民を守るため、世界にワクチンを普及させる努力が足りないと指摘している。

(Jeff Mason記者)

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