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焦点:見直し迫られるバイデン氏のコロナ戦略、デルタ株と接種拒否で

[ワシントン 29日 ロイター] - バイデン米大統領は1月の就任時に、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)との戦いで国内のワクチン接種に注力するのが新政権の方針だと言明した。しかし感染力の強いデルタ株が猛威を振るい、多くの国民がワクチン接種を拒否していることから、戦略の見直しを迫られている。

バイデン米大統領は1月の就任時に、新型コロナウイルスのパンデミックとの戦いで国内のワクチン接種に注力するのが新政権の方針だと言明した。しかし感染力の強いデルタ株が猛威を振るい、多くの国民がワクチン接種を拒否していることから、戦略の見直しを迫られている。写真はデラウェア州ウィルミントンで昨年12月撮影(2021年 ロイター/Jonathan Ernst)

バイデン氏が大統領に就いた1月20日時点で米国の新型コロナによる死者数は累計40万人に上り、日々数千人が死亡していた。ワクチンは接種が可能になったばかりだった。

バイデン氏のコロナ対策チームは、薬局4万2000店舗、数十カ所の集団接種会場、配車サービス会社、ビールメーカーと連携し、さらには5100人の現役兵士まで動員して大規模な接種キャンペーンを展開。政権幹部が全国を行脚し、「ワクチンを接種すれば普通の生活に戻れる」と説いて回った。

多くの地域でこうした取り組みが奏功。接種を受ける人の行列ができ、接種率が全国的に高まるにつれて1日当たりの感染、入院、死亡の人数は減少した。

しかしワクチンを重視するあまり、検査数が減ったり、マスク着用に関するメッセージが混乱したりするなどの弊害を招いた。ワクチンへの強い抵抗感や偽情報、ウイルスの変異能力などを見誤ったと批判する声もある。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校の感染症専門家、ピーター・チンホン教授は、「新型コロナから国を守るには複数の戦略が不可欠だ」と指摘。「われわれは他の重要な戦略を犠牲にしてワクチン一色になり、大騒ぎしてしまった」と苦言を呈した。

米疾病対策センター(CDC)によると、感染者数は国内の約90%の行政区で増加し、接種率の低い地域では急拡大している。

米景気は本格的に回復していたが、新規感染者数の急増がそれに暗雲を投げかけている。失業給付や家賃支払い猶予など支援策の期限が切れ、消費者が支出に慎重になれば、特にリスクが高まる恐れがある。

ホワイトハウスで新型コロナ検査を担当するキャロル・ジョンソン調整官は「ワクチン接種は依然として、ウイルスまん延を防ぐために打てる最重要の対策であり、接種を支援するためにあらゆる手段を講じるべきだ」と述べた。

ホワイトハウス当局者によると、バイデン氏が打ち出した1兆9000億ドル(約210兆円)の新型コロナ追加経済対策は、学校や保険未加入者を対象とした検査に数十億ドルを投じている。

<反ワクチンを過小評価>

バイデン政権は、重症化や死亡から身を守り、無料で簡単に利用できるワクチンを受けようとしない国民がいることに困惑している。

ワクチンはデルタ株への感染や、デルタ株を人にうつすのをおおむね防ぐが、ワクチンを2回接種した人が感染したり、人にうつしたりすることもまれにはある。

バイデン氏は、パンデミックが接種拒否によるものだとの発言を強めている。

感染症専門家のアンソニー・ファウチ氏は、不幸にも感染力が非常に強い変異株の発生とワクチン拒否という2つ要因が重なったと指摘。政府は遅れている接種ペースを上げるために、学校や企業における接種の義務化がある程度必要になるとの見方を示した。

CDCによると、国内のワクチン完全接種率は49.2%。この数週間でやや上昇し、検査も増えている。

専門家の多くは接種率が70%を超えると、感染後に免疫を獲得した人々も合わせて、集団免疫の状態になると示唆していた。

しかし新型コロナウイルスはすぐに変異し、感染力の高い新しい株を生み出すことができるため、集団免疫が達成できるか疑問視されている。

ロイターの分析によると、27日現在、米国の接種率が70%に達する時期は12月16日となる見通しで、多くの先進国よりもペースがはるかに遅い。

その原因の1つが政治にある。

共和党の一部議員は接種の有無を明らかにせず、バイデン氏の接種拡大策に反対している。

反ワクチンの動きは突然生まれたわけではない。ロイター/イプソスの調査によると、すでに2020年から21年初頭にかけて接種に消極的な世論が熟しつつあった。

ベイラー医科大学国立熱帯医学大学院のピーター・ホーテツ学長は、バイデン政権が反ワクチン運動による「ひどい影響」を認めたことは重要だが、政府にはもっとできることがあると言う。「反科学が米国民を死に追いやる要因の1つであるのは間違いない。それにもかかわらず、反科学は世界的なテロリズムや核の拡散、サイバー攻撃と同じようには扱われていない」と訴えた。

<マスク着用で混乱も>

バイデン政権は、CDCが春に行ったガイダンス改定に沿ってマスク着用義務の解除を強調することで、党派を超えて人々のワクチン接種に弾みをつけようとした。バイデン氏は5月13日の演説で、「完全に予防接種を受けた人は、もうマスクをする必要はない」と述べた。

しかしCDCは7月27日、デルタ株が急速に広がっている地域では、ワクチンを接種した市民も屋内の公共の場でマスクを着用すべきだと方針を変更。マスク着用に関する当局の政策のぶれが混乱を招いたと批判されている。

エモリー大学のカルロス・デル・リオ教授は「率直に言って、歯磨き粉をチューブに戻すようなものだろう」と述べ、今更人々にもう一度マスク着用を呼びかけても効果は期待できないとの立場だ。

一方、デルタ株の感染が拡大する中で検査数は不十分で、無症状者の追跡は難しくなっている。

スクリプス研究所のエリック・トポル所長は、迅速に検査できれば、接種済みの人が旅行やレストランでの食事の前に感染の有無をチェックするのに役立つのに、こうした取り組みが不足していると指摘した。

米当局は昨年、低コストで迅速な抗原検査を含む数十種類の新型コロナ検査を認可し、年末までに全国の検査能力を月に2億件程度に引き上げるとの目標を掲げた。

しかしワクチン接種率の上昇に伴って検査の需要は低下。アボット・ラボラトリーズは今月、需要の落ち込みに対応して2カ所の検査薬製造施設で400人を解雇すると発表した。

(Jeff Mason記者 Julie Steenhuysen記者)

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